漢江の上からソウルを見る方法は、長いあいだ一つしかありませんでした。夕方に出発し、ビュッフェを食べて戻ってくる遊覧船。料金は万ウォン単位、コースは決まっていて、観光客の旅程表にしか入らない項目でした。
今は3,000ウォンの船が走っています。名前も遊覧船ではなく漢江バスです。交通カードをタッチして乗り、地下鉄から乗り継げば割引が効き、自転車を載せることができ、199人定員の船が1時間間隔で川を行き交います。観光商品ではなく、路線なのです。
もちろん、川を渡るのに船が地下鉄より速いわけがありません。汝矣島(ヨイド)から蚕室(チャムシル)まで船で80分、地下鉄で25分。ですから漢江バスを「通勤手段」として期待して乗るとがっかりしますが、「3,000ウォンの川の上の散歩」だと思って乗れば、これに勝るものはありません。この記事は後者のための案内です。
まず結論から
- 予約は不要です。船着き場で番号札を受け取り、交通カードをタッチして乗るだけ。片道大人3,000ウォン。
- 汝矣島(ヨイド)が乗り換え地点です。ルートが東部(汝矣島〜蚕室)・西部(汝矣島〜麻谷)に分かれているため、汝矣島で一度降りる必要があります。
- ベストな時間帯は日没の1時間前。西へ向かえば夕焼け、東へ向かえばロッテワールドタワーが灯る瞬間を船の上から眺められます。
漢江バスは遊覧船と何が違うのか?
最大の違いは切符の買い方です。遊覧船は時間を決めて予約し、座席を割り当てられます。漢江バスは地下鉄と同じように動きます。予約システムがそもそも存在せず、船着き場に行って乗り、着いたら降ります。
二つ目の違いは目的地があることです。遊覧船は出発した場所に戻ってきます。漢江バスは望遠(マンウォン)で乗って狎鴎亭(アックジョン)で降りられます。川の向こう側へ移動する手段でありながら、窓の外の風景が美しい、少し変わった交通手段です。
船が運行する区間
麻谷(マゴク)から蚕室(チャムシル)まで、漢江本流の約29km区間を行き来します。西の端・麻谷は金浦空港に近く、東の端・蚕室はロッテワールドタワーのふもとです。その間に望遠・汝矣島・狎鴎亭・玉水(オクス)・ソウル森(ソウルスプ)・トゥクソムの各船着き場があります。ソウルの漢江区間をほぼ丸ごとたどるわけです。
運賃はいくらで、どう支払う?
片道大人3,000ウォン。コーヒー一杯より安い。現金は使えません。
💳 漢江バス運賃(2026年8月基準、片道)
| 区分 | 運賃 | 備考 |
|---|---|---|
| 大人 | 3,000ウォン | 地下鉄・バス乗り継ぎ割引適用 |
| 青少年(13〜18歳) | 1,800ウォン | |
| 子供(6〜12歳) | 1,100ウォン | |
| シニア | 3,000ウォン | シニア優待割引なし |
支払い方法は2つ。交通カード機能つきのチェックカード・クレジットカードやT-money系カードを船着き場でタッチするのが基本で、カードがない場合は船着き場に設置された発券機で1回券を購入します。1回券もカード決済のみで、購入した船着き場でその日限り有効です。
ソウルに数日滞在するなら気候同行カード(キフドンへンカード)
ソウルの公共交通乗り放題定期券・気候同行カードのうち漢江バスが含まれるタイプを買えば、船も乗り放題です。タルンイ(ソウルのシェアサイクル)込みで月70,000ウォン、なしで67,000ウォン。既存タイプを使っている人も月5,000ウォンの追加で済みます。地下鉄・バス・タルンイ・漢江バスを一枚にまとめられるので、数日ソウルを回る計画ならすぐに元が取れます。
団体乗車券の販売はありません。人数が多くても各自タッチが必要です。
予約はどうすれば? —— しなくていいんです
漢江バスで最も誤解されている部分です。予約アプリもオンライン予約もありません。 運営会社が公式FAQではっきり明言しています。一般のバス・地下鉄と同じ公共交通機関なので、予約という概念自体がないとのこと。
代わりに船着き場には番号札があります。到着したらまず番号札を受け取り、番号順に乗船します。定員199人に達したら次の船を待つことになります。
番号札システム、こうなっています
- 番号札は直前の船が出た直後から次の船のものを配布します。朝のうちに一日分がなくなることはありません。
- 番号札を受け取ったら、出発時間まで近くで時間をつぶして戻ればOK。列に並び続ける必要はありません。
- 予想より空席が多い場合、予備番号札を持っている人も乗船できます。
- 前の船着き場で乗った乗客が途中で降りればその分だけ席が空き、乗務員が人数を数えて中間の船着き場で追加乗船させます。
週末の午後、特に夕暮れどきの汝矣島・蚕室の船着き場が最も混みます。確実に席を取りたいなら、始点に近い船着き場から乗るのが有利です。
ルートはどうなっている? —— 汝矣島で一度降ります
ここが初めて乗る人が最も混乱するところです。漢江バスは1隻で麻谷から蚕室まで通しで行きません。2026年3月からルートが汝矣島を軸に2つに分割されました。
- 東部ルート —— 汝矣島 ↔ 狎鴎亭 ↔ 玉水 ↔ ソウル森 ↔ トゥクソム ↔ 蚕室
- 西部ルート —— 汝矣島 ↔ 望遠 ↔ 麻谷
各路線が1日往復16便、合わせて32便。運航間隔は約1時間です。通勤時間帯には麻谷・汝矣島・蚕室のみ停車する急行がより短い間隔で運行されます。
⛴️ 区間別おおよその所要時間(全船着き場停車基準)
| 区間 | 所要時間 | 参考 |
|---|---|---|
| 汝矣島 → 蚕室 | 約80分 | 地下鉄では約25分 |
| 麻谷 → 蚕室(汝矣島乗り換え) | 約127分 | 船内だけで2時間超 |
| 麻谷 → 蚕室(急行) | 約82分 | 麻谷・汝矣島・蚕室のみ停車 |
運航時間は頻繁に変わります
基本の運航時間帯は平日午前7時から夜10時30分までですが、季節やイベントによって調整が頻繁です。2026年6月にはソウル森庭園博覧会に合わせてソウル森船着き場が新設され、午前の運航開始が11時に繰り下げられ、汝矣島基準で蚕室行き最終便が午後7時から8時に1時間延長されました。出発前に漢江バス公式サイトの運航時間案内を確認するのが確実です。
船着き場8カ所、どこから乗るのがいい?
船着き場は単なる乗り場ではありません。ほとんどが3階建ての建物で、1階にはコンビニ、2階にはラーメンコーナーとチキン店、3階にはカフェが入っています。船を待つ30分が退屈しない理由です。
🚇 船着き場別のアクセスと施設
| 船着き場 | 公共交通アクセス | 船着き場内施設 |
|---|---|---|
| 麻谷(マゴク) | ソウル植物園・ソウル水再生体験館方面、バス連携 | CU |
| 望遠(マンウォン) | 望遠漢江公園内、ソウル艦公園 徒歩2分 | CU · ラーメンゾーン · BBQチキン · ラウンジ |
| 汝矣島(ヨイド) | ヨイドナル駅 約300m | CU · グッズショップ · ラーメンゾーン · BBQチキン · スターバックス |
| 狎鴎亭(アックジョン) | トサン公園・カロスキル方面 バス連携 | CU · ラーメンゾーン · BBQチキン · シナボン |
| 玉水(オクス) | 3号線・京義中央線 玉水駅 約200m | CU |
| ソウル森(ソウルスプ) | ソウル森公園に隣接(2026年6月新設) | 待合スペース |
| トゥクソム | 7号線 チャヤン駅 約300m | CU · ラーメンゾーン · BBQチキン · バイニル |
| 蚕室(チャムシル) | 蚕室漢江公園内、蚕室駅方面 徒歩・バス | CU · ラーメンゾーン · BBQチキン · テラロッサ |
車は置いてきてください
船着き場まで車で来ると、結局その場所に戻らなければなりません。片道で乗って、降りた街を歩くのが漢江バスの醍醐味なのに、駐車した車が足かせになります。各船着き場にはタルンイ(シェアサイクル)が配置されているので(望遠・汝矣島・狎鴎亭・トゥクソム・蚕室に30台、玉水に20台、麻谷に15台)、船で行って自転車で戻る組み合わせが最も自由で快適です。通勤時間帯には主要拠点を結ぶ無料シャトルバスも運行しています。
船内はどんな感じ?
199席の船12隻が巡回しています。座席は3-3-3-3配列で、折りたたみテーブルが付いています。窓が大きい——これが核心です。遊覧船のようにデッキに出て風に当たる構造ではありませんが、座ったまま水面が目線の下を通り過ぎていく感覚は、地下鉄では絶対に味わえません。
- カフェテリア —— コーヒー、ベーグル、チュロスなど軽食を船内で販売しています。
- 自転車ラック —— 船首と船尾にあります。自転車を積んで乗り、降りた街から走り出せます。
- トイレ —— 男女トイレとバリアフリートイレが別にあります。80分の航海には欠かせない設備です。
- 船内飲酒禁止 —— お酒は持ち込みも販売も禁止です。漢江コンビニのあの雰囲気は、降りてから楽しんでください。
座る場所によって見える景色がまったく変わります。東へ向かうときは右側の窓に江南(カンナム)のスカイラインと狎鴎亭・清潭(チョンダム)のマンション群が、左側の窓に南山(ナムサン)と鷹峰山(ウンボンサン)が通り過ぎます。西へ向かうときは右側に栗島(パムソム)と麻浦(マポ)・望遠方面の低層の街並みが、左側に汝矣島の摩天楼が張り付きます。
いつ乗れば一番いい?
季節よりも時間帯がはるかに重要です。
🕐 時間帯別の印象
| 時間帯 | どんな感じ? | おすすめの方向 |
|---|---|---|
| 午前 | 空いていて水の色が澄んでいる。席を取るならいちばん簡単 | どちらでも |
| 昼 | 日差しが強く窓際は暑い | 家族でのお出かけ |
| 日没1時間前 | 最高の時間。川全体がオレンジ色に染まる | 西方面(麻谷・望遠) |
| 夜 | 橋のライトアップとロッテワールドタワーが輝く | 東方面(トゥクソム・蚕室) |
夕焼けを狙うなら西へ向かう船、夜景を狙うなら東へ向かう船です。夏は日が長いので夕方7〜8時の船が夕暮れどきと重なり、冬は午後5時の船に乗ればもう日が沈みます。船の時刻表は季節によって変わりますが、日没時刻は正直なので、まず日没時間を検索してその1時間前の船を選べば失敗はありません。
欠航 —— 漢江バス最大の変数
この部分を知らずに出かけて無駄足になる人が少なくありません。漢江バスは雨が降ったから止まるのではなく、川の水が増えたから止まります。
八堂ダム(パルダンダム)の放流量が基準です
上流の八堂ダムの放流量が増えると流速と水位が上がり、運航が中止されます。2026年7月だけでも放流量の増加により運休と再開が何度も繰り返され、水位が微妙に上がった日には潜水橋(チャムスギョ)を通過できず、狎鴎亭船着き場で引き返した便もありました。梅雨時期(6月末〜7月)と台風シーズン(8〜9月)は出発前の確認が事実上必須です。
確認先は2カ所 —— 公式サイトのお知らせと公式インスタグラム。運休・再開のお知らせが当日リアルタイムで上がります。
カヤック・パドルボードをする方へ
漢江バス運航中は船舶基準で前方・左右50m、後方100m以内への接近が制限され、違反時は罰金の対象です。運航時刻表は季節ごとに変わるため、「この時間には船がいない」という以前の記憶で判断せず、その日の時刻表を確認してから出かけてください。
正直なところ、乗る価値はある?
交通手段として見れば物足りません。汝矣島から蚕室まで80分は地下鉄の3倍以上で、1時間間隔の運航なので自分のスケジュールを時刻表に合わせなければなりません。正式運航開始時に「通勤用」を打ち出してメディアから厳しく批判された理由がここにあります。
最も良い使い方はこうです。午後遅くに蚕室か汝矣島で船に乗り、日が沈むあいだ川を下り、見知らぬ街で降りて夕食をとり、タルンイか地下鉄で戻ってくる。半日がまるごと埋まって、交通費は5,000ウォンを超えません。ソウルでこれだけのコスパを見つけるのは容易ではありません。