まず結論から
- 中国が1位。2025年は548万人、2026年上半期は321万人で、全体の約30%。日本・台湾・アメリカがそれに続く。
- ただし順位よりも回復スピードの差が興味深い。中国はまだ2019年の90%水準なのに対し、台湾は+50%、アメリカは+42%と、すでにパンデミック前を軽々と超えている。
- 2025年の訪韓客は1,894万人で過去最高。2026年は上半期だけで1,071万人が訪れた —— ソウル市の全人口を上回る数字だ。
韓国に一番多く来る国はどこか?
中国である。2025年、548万人が韓国を訪れた。これは訪韓客全体1,894万人の約29%にあたる。2位の日本(365万)と3位の台湾(189万)を足して、ようやく中国を超える計算だ。
韓国観光公社の集計による2025年年間ランキングは以下のとおり。
📊 2025年 年間・訪韓外国人観光客 国別ランキング(韓国観光公社)
| # | 国 | 2025年 訪韓客数 | 2019年比 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 548万人 | 約90%(未回復) | 約29% |
| 2 | 日本 | 365万人 | +11.7% | 約19% |
| 3 | 台湾 | 189万人 | +50.1% | 約10% |
| 4 | アメリカ | 148万人 | +42.1% | 約8% |
| 5 | 香港 | 62万人 | 回復途上 | 約3% |
上位4カ国で全体の3分の2を占める。つまり、ソウルの Myeongdong(明洞・ミョンドン)や Hongdae(弘大・ホンデ)ですれ違う外国人は、3人に2人が中国・日本・台湾・アメリカの出身ということになる。
ランキング表が語らないもの —— 回復率
順位だけ見れば2019年と変わらない。中国・日本・台湾・アメリカ。5年を経ても、その座は動いていない。
だが、差の構造はまったく別物になった。2019年、中国は2位の日本のほぼ2倍だった。いまは1.5倍だ。台湾はパンデミック前より5割増え、アメリカは4割以上伸びた。中国だけが、いまだ元の位置に戻りきれていない。
2026年上半期、勢力図はさらに動いた
2026年1〜6月の訪韓外国人客は1,071万人(前年同期比+21.3%)。上半期の半年間だけで、ソウル市の人口(約933万人)を上回った。
📊 2026年上半期(1〜6月)国籍別 訪韓客数 —— 上位5市場
| # | 国 | 訪韓客数 | 前年同期比 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 321万1,791人 | +27.1% | 30.0% |
| 2 | 日本 | 194万9,774人 | +20.4% | 18.2% |
| 3 | 台湾 | 115万446人 | +33.4% | 10.7% |
| 4 | アメリカ | 81万1,974人 | +11.1% | 7.6% |
| 5 | 香港 | 34万651人 | +17.2% | 3.2% |
中国と日本の2カ国で48.2%。ここに台湾・香港を加えた東北アジア4市場で665万人、実に62.1%にのぼる。5人に3人は東北アジアから来ている計算だ。
上位10市場すべてが成長したこと、そして成長率トップが台湾(+33.4%)だったことが、この半期の要点である。
中国は1位なのに、なぜまだ「回復途上」なのか?
数字だけ見れば圧倒的1位だ。それでも業界は中国市場をいまだ「回復段階」と位置づける。基準点が違うからだ。
中国からの訪韓客、本当のピークは2019年ではない
2016年、THAAD(サード)問題が表面化する直前、訪韓中国人は806万8,000人だった。2017年の「限韓令」で市場は半減し、2019年時点でも完全には戻りきらないままパンデミックに突入した。韓国文化観光研究院は2026年の訪韓中国人を671万9,000人と予測している。これは2019年比+11.6%だが、2016年の83%水準にすぎない。
つまり中国市場は二度の衝撃(限韓令・パンデミック)を受け、いまは最初の衝撃以前の水準へと戻る途上にある。2025年12月時点の回復率は、2019年同月比77.4%だった。
台湾はどうやって3位の座を固めたのか?
台湾は、このゲームにおける最も鮮明な勝者である。2025年は189万人(2019年比+50.1%)、2026年上半期は115万人(同+33.4%)。
最も頻繁に挙げられる理由は為替だ。韓国文化観光研究院の分析によれば、2024年1月比・2026年5月平均基準で、ウォン・台湾ドルレートは11.5%、ウォン・ドルは12.6%、ウォン・ユーロは20.5%上昇した。ウォンが弱くなるほど、台湾・アメリカ・ヨーロッパの旅行者にとって韓国は割安になる。
為替効果は消費データでも確認できる
Visa Koreaが2025年に公開した訪韓外国人客の決済データ分析では、台湾と香港の総決済額が前年同期比でそれぞれ54%、50%増加した。人数の伸び率よりも、決済額の伸び率のほうが急だった。
中・日対立という変数
2025年11月に始まった中国・日本の外交摩擦は、東アジアの観光地図を揺るがした。中国政府が自国民に日本旅行の自粛を促したことで、同年12月の訪日中国人は前年比45.3%急減し、33万人に落ち込んだ。
その需要はすぐさま韓国へ向かったわけではない。航空券や宿を切り替えるにはタイムラグがあるからだ。ただし、方向性ははっきりしていた。
📈 訪韓中国人 増加率の推移(2025年、前年比)
| 期間 | 増加率 |
|---|---|
| 1〜10月 平均 | +17.6% |
| 11月 | +26.9% |
| 12月 | +28.4% |
5位以下にはどんな国が並ぶのか?
年間集計では上位5カ国しか公表されないことが多いが、月次統計を見ればその下の序列が浮かび上がる。2026年4月の1カ月間、国別の訪韓客数は以下のとおり。
📊 2026年4月(1カ月)国籍別 訪韓客数(韓国観光公社)
| # | 国 | 4月 訪韓客数 |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 57万4,283人 |
| 2 | 日本 | 30万4,053人 |
| 3 | 台湾 | 19万2,854人 |
| 4 | アメリカ | 17万3,457人 |
| 5 | フィリピン | 7万6,963人 |
| 6 | 香港 | 7万802人 |
| 7 | ベトナム | 6万2,279人 |
| 8 | タイ | 5万1,362人 |
| 9 | シンガポール | 4万4,794人 |
| 10 | インドネシア | 4万2,400人 |
| 11 | マレーシア | 3万5,850人 |
| 12 | ロシア | 2万8,086人 |
5位のフィリピンから、規模はぐっと小さくなる。4位アメリカ(17.3万人)と5位フィリピン(7.7万人)の間には2倍以上の開きがある。
東南アジア市場がとりわけ鈍い理由 —— K-ETA
韓国文化観光研究院は、電子旅行許可制度(K-ETA)の適用有無が東南アジア市場の回復スピードを左右する変数だと診断している。2026年予測値でも、タイは2019年比 -35.8%、マレーシアは -7.1%と、いまだパンデミック前を下回る。2024年4月にタイへK-ETAが再導入された後、入国拒否の事例が増えたことが需要の下押し要因と指摘されている。
人は増えた、なのにお金はそれほど増えなかった理由
2025年の観光収入は218億9,000万ドルで、2019年より5.5%増えた。ところが1人あたり支出は1,155.8ドルで、2019年(1,185.2ドル)に届かなかった。人は8.2%増えたのに、財布のひもは細ったのである。
理由は3つにまとめられる。
- 免税店モデルの終焉。 団体観光客の「バルク買い」に依存してきた収益構造が崩れた。外国人免税店の利用者数(1,092万人)も、1人あたり売上高(600ドル)も、2019年より大幅に減っている。
- クルーズ観光客の急増。 5倍以上に増えたが、下船後半日しか滞在しないケースが多く、平均支出を押し下げている。
- 消費のシフト。 その代わりにK-メディカルが新たなエンジンとして浮上した。外国人医療支出は2019年の3,940億ウォンから2025年には2兆796億ウォンへと5.3倍に跳ね上がり、2024年の外国人患者数は年間117万人を突破した。半数以上が皮膚科である。
結果として、2025年の観光収支は-107億6,000万ドル。3年連続で100億ドル台の赤字だ。訪問者数の記録だけでは解消できない構造的問題が残っていることを意味する。
2026年、何人訪れるのか?
上半期1,071万人というペースなら、史上初の2,000万人突破は射程圏内だ。予測値は機関によって異なる。
| 機関 | 2026年 予測 |
|---|---|
| 韓国文化観光研究院 | 約2,200万人 |
| ヤノルジャリサーチ | 2,036万人(中・日対立の反射利益を見込めば2,100万人) |
| 政府公式目標 | 2,000万人 |
政府は2030年に3,000万人という中長期目標を掲げている。もっとも、下半期の季節的減速、中国市場の未完了の回復、1人あたり支出の減少という三つの変数が立ちはだかる。
では、いまソウルで出会う人々は
数字を旅行者の目線に翻訳すれば、こうなる。
- Myeongdong(明洞)、Hongdae(弘大)、Seongsu(聖水)で耳に飛び込む外国語の半分近くが中国語と日本語だ(2026年上半期48.2%)。
- 台湾・香港まで含めれば、5人に3人が中華圏または日本から来ている。
- 英語圏の旅行者は思ったより少ない。アメリカが7.6%で4位。ヨーロッパ全体を合わせても2025年は132万人 —— 台湾1カ国(189万人)より少ない。
- ただし米州・オセアニアの伸び率(それぞれ+45.8%、+44.5%)はアジアの10倍以上。この構成比は今後数年で、より速いペースで変化していく可能性が高い。
データと出典
- 韓国観光公社 韓国観光データラボ — 国別訪韓旅行(訪韓客 国籍別 原統計)
- ヤノルジャリサーチ BRIEF Vol.12 — 2025年 韓国インバウンド・アウトバウンド観光実績分析(2026.02.23)
- トラベルタイムズ — 上半期の外国人観光客1,000万人突破(2026.07.27)
- アジュ経済 — 2025年 訪韓客1,894万人、過去最高記録(2026.01.30)
- Korea Business Review — 2026年上半期 訪韓観光の現在地(2026.06.11)
- 韓国文化観光研究院 2026年訪韓市場予測、韓国保健産業振興院 2024年外国人患者誘致実績統計分析報告書
※ 基準:韓国観光公社 韓国観光統計(外国人観光客 入国基準)。年間は2025年確定値、2026年は1〜6月累計。