2012年、韓国化粧品の貿易収支が初めて黒字になった。金額は9千万ドル。統計表の一行を埋める程度の数字だった。
13年後の2025年、その数字は101億ドルになった。112倍だ。そして同じ年、韓国はフランスに次ぐ世界2位の化粧品輸出国になった。
まず結論から
- 2025年、韓国化粧品輸出 114億ドル(+12.3%)、貿易黒字 101億ドルで史上初の100億ドル超え。世界順位は アメリカを抜いて2位。
- 本当のニュースは総額ではなく、アメリカが中国を抜いて初の1位輸入国になったこと。アメリカ22億・中国20億ドル。
- 輸出国は 172カ国→202カ国。アメリカ・中国の2カ国依存度は2023年46.9%から2025年 36.7% に低下。一つの市場に振り回される産業ではなくなったということだ。
まず数字から — 2025年に何が起きたのか?
食品医薬品安全処(食薬処)が韓国貿易統計振興院の資料で集計した2025年化粧品輸出実績(12月末基準・速報値)は以下の通り。輸出114億ドル、前年比12.3%増、過去最高。2年連続100億ドルを超えた。
月別に見ると、2025年は12カ月すべてが該当月基準の過去最高を記録した年だった。特に9月には月間輸出額が史上初めて11億ドルを超え、11億5千万ドル(+26%)に達した。
📈 半期別 化粧品輸出額の推移 — 4半期連続上昇
| 期間 | 輸出額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2024年上半期 | 48億ドル | コロナ後回復局面 |
| 2024年下半期 | 54億ドル | 年間初の100億ドル達成 |
| 2025年上半期 | 55億ドル | アメリカが中国を初めて上回った時点 |
| 2025年下半期 | 59億ドル | 半期基準過去最大(+9.3%) |
| 2026年上半期 | 70億ドル | 上半期基準過去最大(+27.3%) |
最後の行に目が止まる。2026年上半期の輸出は70億ドルで、前年同期比**27.3%**増。2025年の年間増加率(12.3%)の2倍を超えるペースだ。第2四半期だけで39億ドルと、第1四半期(31億ドル)より25.8%多かった。
中国が1位を明け渡したことの意味
この記事の核心はここだ。2025年の国別輸出額でアメリカ22億ドルが中国20億ドルを上回った。K-ビューティー輸出統計が作成されて以来、中国が1位でなかった年は一度もなかった。
🌍 2025年 国別化粧品輸出 TOP 3 とその後の急成長国
| 順位 | 国 | 2025年輸出額 | 流れ |
|---|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 22億ドル | 2021年2位→2023年10億ドル突破→2025年1位 |
| 2 | 中国 | 20億ドル | 最大市場の座を初めて明け渡す |
| 3 | 日本 | 11億ドル | 5千万ドル増、2年連続10億ドル突破 |
| 8 | UAE | 2億9千万ドル | 2023年12位→2024年9位→2025年8位(+69.7%) |
| 9 | ポーランド | 2億8千万ドル | 2023年23位→2024年14位→2025年9位(+111.7%) |
アメリカの台頭は突然の出来事ではない。2021年に2位に浮上した後、2023年に10億ドルを超え、4年かけて着実に上がってきて最後の階段を踏んだ。一方、中国向け輸出は2024年比で減少した。片方が速くなったことと、もう片方が鈍ったことが同じ年に重なった結果だ。
しかし本当の変化は3位以下で起きていた
米中交代よりも静かだが、より根本的な変化はそれ以外の国々のシェアが拡大したことだ。
📊 アメリカ+中国 vs その他諸国の輸出シェア推移
| 年 | アメリカ+中国 | その他諸国 |
|---|---|---|
| 2023年 | 46.9% | 53.1% |
| 2024年 | 43.1% | 56.9% |
| 2025年 | 36.7% | 63.3% |
輸出国が172カ国から202カ国へ30カ国増えたことも同じ話だ。新たに開かれた市場の成長率を見れば、規模は小さくても方向性は明らかである。
🚀 2025年 新興市場向け輸出増加率(金額・前年比)
| 地域 | 国 | 輸出額 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 欧州 | イギリス | 2億3千万ドル | +54.7% |
| 欧州 | フランス | 1億3千万ドル | +73.6% |
| 欧州 | オランダ | 1億4千万ドル | +42.7% |
| 欧州 | ドイツ | 9千万ドル | +43.3% |
| 中東 | イスラエル | 3千万ドル | +109.8% |
| 南西アジア | インド | 9千万ドル | +22.2% |
| 中南米 | メキシコ | 6千万ドル | +149.9% |
| 中南米 | ブラジル | 6千万ドル | +115.1% |
表で目を引くのはフランスの行だ。世界1位の化粧品輸出国が韓国コスメを前年比73.6%も多く買ったのである。
何が売れているのか — スキンケア一品目で4分の3
🧴 2025年 タイプ別輸出額
| タイプ | 輸出額 | 増加率 | シェア |
|---|---|---|---|
| 基礎化粧品(スキンケア) | 85億4千万ドル | +11.6% | 約75% |
| メイクアップ | 15億1千万ドル | +12.0% | 約13% |
| ボディウォッシュ | 5億9千万ドル | +27.3% | 約5% |
| フレグランス(香水等) | 約6千万ドル | +46.2% | 約0.5% |
スキンケア偏重が強みであり弱みである理由
スキンケアはリピート率が高く、在庫回転も早いため輸出規模を伸ばしやすい。反面、単価が低い。フランスが1位を守る力は香水とラグジュアリーブランドから来ており、フランス化粧品輸出の約36%が香水(約80億ユーロ)だ。韓国のフレグランス輸出は6千万ドル — 伸び率は最も高いが、金額ではフランスの香水輸出の1%にも満たない。
アメリカ市場内での品目別の動きを見ると、この偏りがより鮮明になる。2025年の対米輸出で、スキンケアは14億→15億7千万ドル(+12.1%)、メイクアップは2億6千万→3億1千万ドル(+19.2%)、ボディウォッシュは9千万→1億2千万ドル(+33.3%)と、ほぼすべてのタイプが伸びた。2026年上半期には対米スキンケアが**48.6%**も跳ね上がった。
この成長は大手企業が作ったものではない
アモーレパシフィックとLG生活健康という二つの名前でK-ビューティーを説明する時代は、統計上すでに終わっている。
構造はこう機能する。ブランドを立ち上げたい小規模事業者が、コスマックス・韓国コルマーのようなODM企業に処方と生産を委託し、自身は企画とSNSマーケティングに集中する。工場なしでも6カ月以内に製品が出て、AmazonやQoo10、TikTok Shopを通じて流通業者を介さず海外消費者に直接届く。
この仕組みが生み出したブランド群を韓国ではインディブランドと呼ぶ。2026年、米Amazonビューティーカテゴリーの上位に韓国の消費者にも馴染みのない名前が頻繁に見られる理由だ。
旅行者にとって実質的に意味すること
- 自国ですでに有名なK-ビューティーブランドは、韓国でも似たような価格か、むしろ高い場合がある。輸出用にすでに価格が調整されているからだ。
- 価格差が大きく出るのはまだ輸出されていない新製品や国内専用ライン。オリーブヤングの売り場最前列にある新作コーナーを見るほうが得策だ。
- スキンケアは韓国の品揃えが圧倒的に豊富。逆に香水は、わざわざ韓国で買う理由が薄い。
ソウルではこの数字がどう見えるのか?
輸出統計はソウルの街でそのまま目に見える。明洞がその証拠だ。
オリーブヤングによると、2025年の訪韓外国人の購入額は初めて1兆ウォンを突破し、189カ国・地域から942万件の決済が行われた。2025年上半期、オフライン店舗の外国人売上比率は26.4%で初めて25%を超えた。明洞店舗の2023〜2025年の年平均成長率は109%だった。
フランスとの差はどれだけ残っているのか?
🌐 2025年 世界化粧品輸出 TOP 3
| 順位 | 国 | 輸出額 | 2025年の流れ |
|---|---|---|---|
| 1 | フランス | 243億ドル | 前年比0.1%減 — 2008年金融危機以降初のマイナス成長 |
| 2 | 韓国 | 114億ドル | +12.3%、アメリカを抜いて2位に浮上 |
| 3 | アメリカ | 108億ドル | 2位の座を韓国に明け渡す |
差は129億ドル、倍率では2.1倍だ。ただし、両国の方向性が逆だということがこの表の本当の情報である。フランスの化粧品輸出は2025年に0.1%減少し、2008年以来初めてマイナス成長となった。アメリカの関税措置が直接的な原因とされている。同じ年、韓国は12.3%伸び、2026年上半期には27.3%まで加速した。
単純計算では、韓国が現在の二桁成長を維持しフランスが停滞すれば、2020年代後半に差は縮まる。もちろん、計算と現実は別物だ。三つのハードルがある。
2位と1位の間にある三つの課題
- 客単価。フランスの1位は香水とラグジュアリーから来ている。韓国はボリュームで追いかける構造で、香水輸出はまだ6千万ドルだ。
- 関税。アメリカが最大市場になったということは、アメリカの通商政策にさらされたということでもある。フランスをマイナス成長に追い込んだのと同じ変数だ。
- 規制。米国・中国・EUが相次いで安全性評価制度を強化している。食薬処はこれに合わせて安全性評価制度を段階的に実施し、国内GMPを国際標準(ISO 22716)と相互承認する方向を進めている。インディブランドにとっては、規制対応コストがそのまま参入障壁になる。
では、今K-ビューティーはどんな状態なのか?
2025年の統計を一文にまとめるとこうなる。K-ビューティーは中国に売る産業から、世界に売る産業へと移行した。
重要なのは114億ドルという総額ではない。その総額を構成する国が202カ国に及ぶこと、上位2カ国の依存度が10年で最も低いこと、そしてその大部分を工場を持たない中小ブランドが作り出したこと — この三つが、今回の統計が過去の記録更新と決定的に異なる理由だ。
明洞のオリーブヤングで外国人が手にする買い物カゴは、その統計の実物だ。ただし今では、その買い物カゴがソウルに来なくても満たせるようになったという点が、ここ数年の最大の変化である。
データと出典
- 食品医薬品安全処「2025年化粧品生産・輸出実績」(韓国貿易統計振興院資料、2026.01発表・速報)
- 食品医薬品安全処「2026年上半期化粧品輸出実績」(2026.07発表・速報)
- コスモニング — 食薬処が分析した2025年大韓民国化粧品輸出実績
- The Korea Herald — K-beauty exports cross $11b milestone in 2025
- ヘルスキョンヒャン — 上半期K-ビューティー輸出70億ドル 過去最大
- CosmeticsDesign-Europe — US tariffs push French cosmetics exports into rare 2025 decline
- CJオリーブヤング — 訪韓外国人購入額1兆ウォン突破
- 中小ベンチャー企業部 中小企業輸出統計(2024年 化粧品68億ドル、中小企業輸出1位品目)