2013年、ある国際経済紙がグラフを一つ掲載した。人口あたりの整形施術件数の国別ランキングであり、韓国がトップに立っていた。そのグラフは以後13年間、世界中の記事・論文・YouTubeのサムネイルで引用され続けた。

ところが、そのグラフの元データは2011年調査だったのだ。

まず結論から

  • 最新の国際統計に韓国はランキング表自体が存在しない。ISAPS 2024年報告書は32地域の施術件数を個別公開しているが、韓国はその32地域に含まれていない。
  • 人口補正をすると1位はギリシャである。公開数値を人口で割ると、ギリシャ(10万人あたり5,091件)・UAE・台湾の順。米国は5位に後退する。
  • 韓国が明確に1位である指標は別にある。施術件数ではなく人口あたりの形成外科専門医密度(100万人あたり52.6名、米国の2.4倍)である。

「韓国が整形1位」という言説はどこから来たのか?

ほぼすべての引用の根源は一つだ。国際美容外科学会(ISAPS)の2011年調査、そしてそれを可視化した2013年のエコノミスト誌のチャートである。

当時のISAPS集計で、韓国は手術件数の絶対量では7位圏だったが、人口で割ると1位になった。ここから生まれた「人口1,000人あたり13.5件」あるいは「8.9件」といった数字が、現在も流通する数値の原型だ。二つの数字が同時に流布していること自体、すでに信号である——異なる年の異なる集計を同じ文の中で使っているということなのだから。

ISAPS統計とは何か

ISAPSは1970年設立の国際学会で、国別の美容施術統計を毎年集計する事実上唯一の機関である。ただし集計方式は政府統計ではなくアンケートだ。各国の専門医資格を持つ形成外科医に施術件数を尋ね、回答サンプルと当該国の専門医推定数を掛け合わせて全体を推定する。2024年調査には全世界2,975名が回答した。

最新統計で韓国は何位なのか?

直答しよう。順位は存在しない。

ISAPSが2025年6月に発表した2024年報告書を開くと、施術件数を個別ページで公開した地域は32である。順に並べると以下の通りだ。

🌍 ISAPS 2024年報告書が個別数値を公開した32の地域

地域国・地域
アメリカ米国 · ブラジル · メキシコ · コロンビア · アルゼンチン · チリ · パナマ
ヨーロッパイタリア · ドイツ · フランス · スペイン · ギリシャ · 英国 · チェコ · ノルウェー
アジア・太平洋日本 · インド · 台湾(報告書表記 Chinese Taipei) · ベトナム · タイ · マレーシア · フィリピン · シンガポール · オーストラリア · バングラデシュ
中東・アフリカトルコ · UAE · イラン · サウジアラビア · チュニジア · モロッコ · 南アフリカ共和国

韓国はない。バングラデシュとパナマはあるのに、韓国はないのだ。

報告書の方法論項目にはこうある。「個別数値は、結果が統計的に有効と判断できるだけの十分な回答が確保された地域に限ってのみ公開する」 2022年版ランキング表の脚注はさらに直接的だ。「順位は、十分なアンケート回答が確保されデータが代表性を持つと判断された国のみを対象とする」 韓国はこの基準を通過しなかった。

32地域
ISAPS 2024年報告書が個別施術件数を公開した地域 — 韓国は含まれず
2,975
全世界の回答形成外科専門医数(全世界推定58,500名の約5%)
3,795万件
2024年全世界の美容施術推定量(手術1,742万 + 非手術2,054万)
15
「韓国人口あたり1位」主張の根拠データの経年数(2011年調査)

人口で補正すると本当の1位はどの国か?

絶対件数の順位は人口順位とほぼ同じで、意味が薄い。そこでISAPS 2024年報告書に公開された各国の総施術件数を国連人口推計(2024年)で割り、人口10万人あたりの施術件数を独自に計算した。 施術量上位23地域が対象である。

📊 人口10万人あたり美容施術件数 — ISAPS 2024データ独自計算

#総施術件数人口10万人あたり
1ギリシャ529,4401,040万5,091件
2UAE482,7521,100万4,389件
3台湾658,3202,340万2,813件
4イタリア1,371,2205,890万2,328件
5米国6,165,1733億4,200万1,803件
6ドイツ1,303,5288,350万1,561件
7ブラジル3,123,7582億1,260万1,469件
8フランス912,9406,660万1,371件
9日本1,631,6001億2,380万1,318件
10トルコ1,110,3068,570万1,296件
11スペイン588,8594,880万1,207件
12メキシコ1,294,9461億3,090万989件
13アルゼンチン435,9364,580万952件
14チュニジア114,3761,230万930件
15コロンビア490,9445,290万928件
16オーストラリア177,5022,720万653件
17イラン420,3219,160万459件
18サウジアラビア154,3303,460万446件
19タイ197,5057,170万275件
20ベトナム262,6201億130万259件
21モロッコ99,6363,840万259件
22英国141,1346,940万203件
23インド1,288,84014億5,000万89件

絶対件数1位の米国は5位に、2位のブラジルは7位に後退する。そして上の表のどこにも韓国はない。比較対象ではなく欠損値なのである。

この表を引用する際の注意点

  • ISAPSが個別数値を公開した32地域のうち施術量上位23地域のみを掲載した。残り9地域(チェコ・ノルウェー・シンガポール・パナマなど)はいずれも10万件未満だが、人口が少ないため順位が入れ替わる余地はある。
  • 人口は国連世界人口推計2024年改訂基準であり、施術件数と基準時点が厳密には一致しない。
  • 何よりこれらの数字は形成外科専門医が施行した施術のみを集計した推定値だ。次章の説明がこの表を読む上で不可欠である。

なぜ韓国は統計から外れるのか?

韓国が統計にない理由は、施術が少ないからではない。ISAPSの集計方式と韓国の市場構造が噛み合わないからだ。理由は三層ある。

第一に、自発的アンケートであること。 ISAPSは各国の形成外科専門医にメールでアンケートを送り、回答を集める。回答率が低い国は統計的有効性の基準から脱落する。韓国医師のISAPSアンケート参加率が低ければ——韓国は施術件数の公開に敏感な市場である——施術がいくら多くても表に載らない。

第二に、「形成外科専門医」というフィルターがある。 ISAPS統計は専門医資格を持つ形成外科医が施行した施術のみを数える。韓国でボトックス・フィラー・レーザーといった非手術施術のかなりの部分は、皮膚科・家庭医学科・一般医のクリニックで行われる。このフィルターを通過しない施術量が多い国ほど、ISAPSの数字は実態より小さく出る。

第三に、推定倍率の問題だ。 ISAPSは回答者の平均施術件数にその国の専門医推定数を掛けて全体を算出する。回答者が少数の場合、この方式は誤差が大きくなる。報告書自体が「外れ値は調整した」と明記するほど、敏感な構造なのだ。

つまりISAPS統計は「韓国が1位ではない」を証明しない。同時に「韓国が1位だ」も証明しない。その問いに答えられるデータがそもそも収集されていない状態である。15年前の順位を現在形で使う文章は、存在すらしない最新順位をあるかのように語っていることになる。

では韓国が本当に1位である指標は何か?

ある。そしてそれはISAPSデータで確認できる。

ISAPSは施術件数とは別に国別の形成外科専門医推定数を集計しており、2022年報告書基準で韓国は2,718名、世界5位だった。絶対数では米国・ブラジル・日本・中国に次ぐ。ところがこの数字を人口で割ると順位がひっくり返る。

🏆 人口100万人あたり形成外科専門医数 — ISAPS 2022専門医集計独自計算

#専門医数100万人あたり
1韓国2,718名52.6名
2アルゼンチン2,200名48.0名
3ギリシャ400名38.5名
4オランダ600名33.0名
5台湾750名32.1名
6ブラジル6,200名29.2名
7日本3,050名24.6名
8コロンビア1,200名22.7名
9米国7,461名21.8名
10イタリア1,151名19.5名
11ドイツ1,550名18.6名
12フランス1,000名15.0名
13英国600名8.6名
14中国3,000名2.1名

韓国は1位である。米国の2.4倍、英国の6倍、中国の25倍だ。これは15年前のアンケートではなく、各国学会が報告した専門医数を人口で割った値であり、はるかに堅牢だ。

同じ構図が国内統計でも確認できる。健康保険審査評価院の集計によれば、国内の形成外科医院は2019年の991か所から2024年には1,195か所へと20.6%増加した。分布はさらに極端である。国会に提出された審査評価院資料(2020年基準)を見ると、全国1,008か所のうちソウルが530か所で52.6%、そのソウルの物量の74.3%にあたる400か所がカンナム区一か所に集中していた。ソチョ区まで加えると88%だ。カンナム区の中でもシンサ洞一つの町に204か所が密集していた。

韓国の特異性は「どれだけ多く施術するか」ではなく「どれだけ稠密に供給するか」にある。世界で最も高い専門医密度、世界で最も狭い地理的集積。カンナムの大通り一ブロックで20か所の看板を目にできる国は、実際のところ珍しい。

韓国人の何%が整形手術を受けたのか?

「国民の半分が」「女性の3人に1人が」といった表現も頻繁に引用される。国内で最も長く同一質問で追跡された調査は、韓国ギャラップの「外見と整形手術に関する認識」である。1994年から2020年まで4回、全国満19歳以上1,500名を対象とした対面インタビューだ。

📉 「整形手術を受けたことがある」回答率の推移(韓国ギャラップ)

調査年成人全体女性男性20代女性
1994年4%5%
2004年9%13%
2015年14%31%
2020年10%18%2%25%

2020年基準で成人10人のうち1人である。女性だけを見ても18%、最も高い集団である30代女性が31%だ。そして目を引くのは20代女性の経験率が2015年の31%から2020年に25%へと初めて下降した点である。同じ期間に「人生において外見が非常に重要だ」という回答も1994年の42%から2020年には20%へと半分以下になった。

この数値が低く出る理由

ギャラップ調査は回答者本人の判断に委ねた「手術」経験である。韓国では通常、切開しないボトックス・フィラー・レーザー・ほくろ除去を施術と呼び、切開するものだけを手術と呼ぶ。非手術施術まで含めれば経験率ははるかに上がる。ただしISAPS統計もこの二つを合算して数えるため、「国際統計の整形件数」と「ギャラップの整形手術経験率」はそもそも異なるものを測る物差しである。

ではカンナム整形クラスターは誇張なのか?

違う。ただしその規模を支えているのは、自国民の施術率ではなく輸出需要に近い。

保健福祉部の集計によれば、2024年に韓国を訪れた外国人患者は117万名で、前年(61万名)の約2倍だ。診療科別では皮膚科が70万5千名(56.6%)で圧倒的1位、形成外科が11.4%でそれに次ぐ。皮膚科の外国人患者は1年で194.9%増加した。

117万名
2024年の訪韓外国人患者 — 前年61万名比 +93.2%
56.6%
外国人患者に占める皮膚科の割合(70.5万名) — 形成外科は11.4%
1,195か所
国内の形成外科医院数(2024年) — 2019年991か所から +20.6%

この構造を知れば、カンナムの密度が違って見えてくる。ある国の国民が特別に多く施術を受けるから生まれた密度ではなく、国内需要+アジア圏需要が半径3kmの内側に重なり積み上がった密度である。そしてその需要の重心は、今や手術ではなく皮膚施術の方へと急速に移動している。


整理すると——何が事実で何が違うのか

✅ 通念対照表

よく言われること判定根拠
「韓国は人口あたり整形世界1位」⚠️ 確認不能最新ISAPS報告書に韓国はランキング表にない。根拠は2011年調査
「韓国は整形件数世界1位」事実ではない絶対件数1位は米国(616万件)、2位ブラジル
「人口補正すれば韓国が圧倒的」⚠️ 比較不能公開データ上1位はギリシャ(10万人あたり5,091件)。韓国数値は非公開
「韓国は形成外科医密度世界1位」事実人口100万人あたり52.6名、主要国中最高位
「韓国人のかなりの割合が整形手術経験者」⚠️ 誇張ギャラップ2020:成人10%、女性18%、最高値の30代女性でも31%
「カンナムに形成外科が集中している」事実全国の52.6%がソウル、ソウル物量の74.3%がカンナム区(審査評価院2020)

最も正確な文章はこうなるだろう。韓国は整形施術を世界で最も多く行う国であるという証拠はない。ただし整形医療を世界で最も密度高く供給する国であるという証拠はある。

そしてこの二つの文の違いこそが、過去13年間にわたり再引用されたグラフ一枚が生み出した誤差である。

データと出典

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