まず結論から

  • 韓国食品医薬品安全処が現在公開中の化粧品リコールはわずか30件(2023.8.11~2026.6.16)。同じリストの医薬品は951件にのぼる。
  • 1位の品目は日焼け止めでもシートマスクでもなかった。ウェットティッシュが8件(27%)。その8件すべてが同一メーカー1社から出ている。シートマスクは0件、日焼け止めは1件。
  • 確認はブランド名ではなく製造番号で行う。容器底面のロット番号と公告の番号が一致してはじめてリコール対象となる。

オリーブヤングで3つ、ダイソーで5つ、免税店で2つ。スーツケースに韓国コスメをぎっしり詰めて帰国したあと、ふとこんな考えが頭をよぎる。このなかに問題のある製品はないだろうか?

韓国にはこれを確認できる公開データがある。韓国食品医薬品安全処(食薬処、MFDS)は、回収・販売停止命令を下した製品を、製品名・企業名・製造番号・回収理由まで添えて公開しており、その公開は約3年間維持される。問題は、そのリストが韓国語のみで、旅行者がわざわざ調べることはまずないという点だ。

そこで、現在公開中の化粧品リコール30件をすべて徹底的に調べてみた。 結果は予想とかなり違っていた。


食薬処はリコールされた化粧品を3年間公開する

食薬処の回収・廃棄公告(医薬品安全ナラ)は、医薬品・医薬部外品・化粧品をひとつのリストにまとめている。2026年8月3日時点で全公告は981件、そのうち化粧品は30件だ。

30
現在公開中の化粧品リコール(2023.8~2026.6)
981
同リストの全公告(医薬品等951件を含む)
3
公開維持期間(回収命令日+3年)
0
3年間にリコールされたシートマスク

公告ごとに公開終了日が記されており、その日付は回収命令日からちょうど3年後だ。2026年6月16日に回収命令が出た石鹸は2029年6月23日まで公開される。逆に言えば、3年を経過したリコールはリストから静かに消える。 現在照会できる最も古い案件が2023年8月である理由がこれだ。

このデータの性質

このリストは食薬処が回収を命令した案件の公告だ。メーカーが自主的に回収する「自主回収」のうち公告命令が付されなかったもの、そして回収なしに誇大広告などで行政処分のみを受けたものは、ここには含まれない。参考までに、化粧品の表示・広告違反による行政処分は別統計で年間400件台の規模がある。リコール30件は「問題が30件だけだった」ではなく「製品を回収せよと命令したのが30件」という意味だ。


1位は日焼け止めでもシートマスクでもなかった

韓国コスメといえば真っ先に思い浮かぶのはシートマスクと日焼け止め。ところがリコールリストの1位はウェットティッシュだった。

🧴 品目タイプ別リコール件数(2023.8~2026.6 公開30件)

順位品目タイプ件数割合主な理由
1ウェットティッシュ(人体洗浄用)826.7%内容物の一部変敗
2ボディ・バス製品620.0%微生物限度超過、表示偽造・変造
3ヘアカラー(染毛料)413.3%p-アミノフェノール基準超過、禁止色素
3ヘア(シャンプー・トニック・パーマ)413.3%表示偽造・変造、主要有効成分含量不足
5石鹸26.7%品質不適合、食品誤認のおそれ
5リップ製品26.7%使用不可の色素検出
7日焼け止め13.3%紫外線防止主要有効成分含量不適合
7フェイスクリーム13.3%使用期限改ざん
7クレンザー13.3%表示偽造・変造
7ハンドクレンザー13.3%微生物限度超過
シートマスク00%

ウェットティッシュが化粧品統計に入る理由は分類のためだ。韓国は2015年7月から人体洗浄用ウェットティッシュを工業品ではなく化粧品に再分類した。乳幼児用ウェットティッシュの有害性論争がきっかけだった。それ以来、ウェットティッシュは化粧品原料基準・品質管理基準・副作用報告義務をそのまま適用されている。掃除用ウェットティッシュは依然として工業品のため、このリストには載っていない。

旅行者にとって意味のあるポイント:コンビニやダイソーで何気なく手に取るウェットティッシュが、韓国の規制上は顔に塗るクリームと同じ等級の管理対象だということ。そして実際にリコールもここから最も多く出ている。

リコール理由を分解すると、半分が「腐敗または菌が検出された」

理由を性質別にまとめると、構図はシンプルになる。

📊 リコール理由別分布(30件)

理由グループ件数割合具体的内容
微生物・変敗1343.3%内容物の一部変敗8件、微生物限度基準超過5件
表示・記載違反620.0%表示事項偽造・変造4件、使用期限改ざん1件、ラベル未貼付1件
使用禁止原料・基準超過620.0%禁止色素検出3件、p-アミノフェノール基準超過3件
品質不適合310.0%機能性主要有効成分含量不足2件、品質不適合のおそれ1件
食品誤認のおそれ26.7%チーズ石鹸、チョコバスパウダー
43%
微生物・変敗が原因
20%
ラベル・表示を改ざんしたケース
6
使用不可の原料が検出・使用された

注目すべきは2番目のグループだ。表示・記載違反の6件は、成分が悪いからではなく、ラベルを改ざんしたためにリコールされた。 使用期限を書き換えたり、製造番号表示を偽造・変造したり、ラベルを貼らずに流通させたりしたケースだ。消費者の立場では、成分問題よりもむしろ気づきにくい。

3番目のグループのp-アミノフェノールは、ヘアカラー(染毛料)の酸化染料成分だ。化粧品安全基準に配合限度が定められており、ブラウン系ヘアカラー3種がその限度を超え、2025年9月にリコールされた。低価格のセルフヘアカラーをお土産に買って帰るケースもあるが、リコール履歴が最も頻繁につくカテゴリーのひとつだ。


ブランドではなく工場が「爆発」する

30件を企業別に数え直すと、このデータの本当の構造が見えてくる。

🏭 企業別リコール件数 — 上位4社で全体の60%

企業件数品目理由
(株)クァンジンサンオプ8ウェットティッシュ6ブランド内容物の一部変敗
(株)KPT4ボディウォッシュ・クレンザー・シャンプー2種表示および記載事項偽造・変造
ディーアンドビー コリア3ヘアカラー3色p-アミノフェノール基準超過
キンダーパペッツ3乳幼児用バス製品・シャンプー微生物限度超過
残り12社12各1件個別理由

ウェットティッシュ8件はすべて(株)クァンジンサンオプ1社から出ている。ブランド名は6種類あり、それぞれ異なる。オールチャレンジ、スム、クリアベーシック、タムサ、テンキュー、ニューテンキュー。消費者から見ればまったく別の製品だが、製造元はひとつだ。2025年6月から7月までの2か月間に立て続けに回収命令が出た。

このデータが示す実践的な教訓:韓国の化粧品・生活用品市場はブランドではなくOEMメーカー単位で動いている。そのため、問題が起きるとひとつのブランドではなく同じ工場から出た複数のブランドが同時にリコールされる。製品裏面の「製造元」を一度見る習慣が、ブランドを見るより役に立つことがある。

旅行者がとくに見るべき3つのカテゴリー

30件全体を旅行者目線で並べ替えると、3つの塊が浮かび上がる。

👶
乳幼児・子ども用
30件中5件(17%)がベビー・キッズ表示の製品。乳幼児用バス製品・シャンプー・ハンドクレンザー・キッズリップバーム。理由は微生物限度超過と禁止色素。お土産として最も購入されるカテゴリーだ。
🎨
ヘアカラー・カラー製品
ヘアカラー4件、リップ製品2件。理由はすべて色素・染料関連。色を出す原料は配合限度が細かく定められており、違反が検出されやすい。
🧀
食品そっくりの化粧品
チーズ石鹸、チョコバスパウダー。成分ではなく「食品と誤認して摂取するおそれ」でリコールされた。かわいいお土産コーナーで最もよく売れるタイプだ。

3番目がとくに旅行者イシューだ。韓国化粧品法は、食品の形状・におい・色・サイズ・容器および包装を模倣して摂取のおそれがある化粧品をリコール対象とみなす。チーズスライスそっくりの石鹸(2023年10月)、チョコレートドリンクそっくりのバスパウダー(2023年8月)が実際にリコールされた。子どもへのお土産にぴったりの品なので、買うなら少なくとも子どもの手が届く場所には置かないほうがいい。


自分が買ったものがリコール対象か60秒で確認する方法

ポイントは製品名ではなく製造番号

リコールは通常特定の製造番号(ロット)のみが対象となる。同じ名前の製品でも、別の番号で製造されたものはリコール対象ではない。だから製品名がリストに出たからといってすぐに捨ててはいけないし、番号を照合しなければならない。逆に「流通可能な全製造番号」と記載されていれば、その製品全体が対象だ。

  1. 製品から製造番号を探す。韓国化粧品は容器の底面、チューブ先端の圧着部、または箱の側面に製造番号と使用期限(または開封後の使用期間)を表示している。英数字の組み合わせが多い(例:578B24CW21)。
  2. 医薬品安全ナラの回収・廃棄公告にアクセスする。 nedrug.mfds.go.kr/pbp/CCBAI01 — 上部検索窓の検索区分を「化粧品」に切り替える。全リストが30件だけなので、検索せずに目で追っても1分で終わる。
  3. 製品名(韓国語)で検索する。リストの製品名は韓国語表記だ。ブランドの英語名では引っかからない場合があるので、パッケージのハングル製品名をそのまま入力する。
  4. 製造番号を照合する。公告に製造番号[使用期限]形式で対象番号が記載されている。自分の製品の番号がそこになければリコール対象ではない。
  5. 食品はサイトが異なる。お菓子・海苔・紅参などの食品は食品安全ナラ 回収・販売停止で別途確認する。2026年8月3日時点で368件が公開中で、製品写真も一緒に掲載される。

韓国語が読めない場合は

  • 両サイトとも韓国語専用。ChromeやEdgeのページ翻訳をオンにすれば、リストは十分読める。
  • 製品名検索が難しければ企業名で検索する手もある。化粧品裏面の「製造元/化粧品責任販売業者」の社名をそのまま入力すればよい。
  • 食薬処のリコール通知サービス(国民秘書クッピ)は韓国の本人認証が必要で、短期滞在の旅行者は使いづらい。リストを直接確認するほうが早い。

リコール対象だった場合の対処法

状況方法
まだ韓国にいる購入した店舗に製品を持参する。リコール対象製品は販売停止・回収義務があるため、店舗が返品・返金に応じる。レシートがあればスムーズ。
すでに帰国した製品裏面の化粧品責任販売業者の社名と連絡先に直接連絡する。国内配送・返金のみ対応可能なケースが多く、実務的には使用を中止して廃棄する選択が一般的。
オンラインで購入した購入したプラットフォームの注文履歴から返品を申請する。リコール公告が出た案件は、通常プラットフォーム側が先に販売を停止する。
すでに使用して異常がある化粧品副作用は食薬処の化粧品安全性情報報告の対象。皮膚に異常があれば、病院の診療記録を残しておくのがよい。

この数字が語らないこと

解釈する際の注意点4つ

  • 3年ローリングだ。古い案件は公開終了により消えている。2023年上半期の案件が見えないのは、リコールがなかったからではなく、公開期間が終了したからだ。年ごとの増減をそのままトレンドとして読んではいけない。
  • リコール ≠ 違反のすべて。製品を回収せよと命令した案件だけがここに含まれる。誇大広告・営業者遵守事項違反などの行政処分は別リストで、規模ははるかに大きい。
  • リコール件数が少ないからといって安全が保証されるわけではない。シートマスク0件は「シートマスクに問題がない」ではなく「回収命令にまで至った案件がなかった」という意味だ。
  • 逆にリコールがあるのは監視が機能している証拠でもある。ウェットティッシュ8件は、2015年の化粧品再分類により規制の網の中に入った結果だ。規制の外だったら、そもそも集計すらされなかっただろう。

韓国コスメを買うたびにリコールリストをチェックする必要はない。3年で30件なら、一般消費者がリコール対象製品を手にする確率はごく低い。ただし、大量に買うとき、ベビー用品をプレゼントするとき、セルフヘアカラーのように事故の多いカテゴリーを買うときは、1分をかける価値がある。そして、リストが公開されているという事実そのものを知る人が多くないこともまた事実だ。

データと出典

集計は公告原文の回収理由・製品名を筆者がタイプ別に分類したものであり、食薬処の公式分類体系ではない。


付録 — 公開中の化粧品リコール30件 全リスト

📋 食薬処 回収・廃棄公告 化粧品全件(回収命令日基準 最新順、2026-08-03照会)

#製品名企業回収理由回収命令日
1ホワイトセリサイト美容石鹸ブルーベリー(株)コウェル品質不適合のおそれ2026-06-16
2ミルクバオバブ ベビー&キッズ カラーリップバーム レッドテナム生活健康(株)使用不可の原料(色素)検出2026-02-08
3サンパ アディクト フレンチリップオイル 04 ハイビスカス(株)トゥーアンドアップ使用不可の原料(色素)検出2026-02-08
4ボボリス ザ・ピーク グラニュール ボディウォッシュ(株)KPT表示および記載事項偽造・変造2026-01-21
5ボボリス ザ・ピーク グラニュール シェル フェイシャルウォッシュ(株)KPT表示および記載事項偽造・変造2026-01-21
6ボボリス ザ・ピーク グラニュール シャンプー ダメージヘア(株)KPT表示および記載事項偽造・変造2026-01-21
7ボボリス ザ・ピーク グラニュール シャンプー クーリング&炭酸(株)KPT表示および記載事項偽造・変造2026-01-21
8ナウアンドダン エナジャイジング ヘアトニック(株)ルエス品質不適合(機能性主要有効成分含量不足)2025-11-25
9ディーアンドビー ライトブラウンディーアンドビー コリアp-アミノフェノール基準超過2025-09-24
10ディーアンドビー ブラウンディーアンドビー コリアp-アミノフェノール基準超過2025-09-24
11ディーアンドビー ダークブラウンディーアンドビー コリアp-アミノフェノール基準超過2025-09-24
12オールチャレンジ 見えるウェットティッシュ ベージュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-07-23
13オールチャレンジ 見えるウェットティッシュ ピンク(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-07-23
14スム プレミアム ウェットティッシュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-07-07
15スム ウェットティッシュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-07-07
16レモンバジルオイル ボディスクラブ 250g(株)フリーコンマ微生物限度基準超過2025-06-26
17クリアベーシック ウェットティッシュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-06-19
18タムサ ウェットティッシュ キャップ型 100枚(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-06-11
19イーシーバイタルビタクリーム(株)ラキアコス使用期限改ざん2025-06-10
20ニューテンキュー オリジナル ウェットティッシュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-06-09
21テンキュー ウェットティッシュ(株)クァンジンサンオプ化粧品一部変敗2025-06-09
22モリンガ UV パーフェクト サンスクリーン(株)スキンダム品質不適合(機能性主要有効成分含量・確認)2025-04-30
23マジックブラックフィレコリア使用不可の原料(色素)使用2025-02-20
24キンダーパペッツ 泡バス アトグリーンキンダーパペッツ微生物限度基準超過2024-12-04
25キンダーパペッツ ベビー シャンプー&バスキンダーパペッツ微生物限度基準超過2024-11-28
26キンダーパペッツ 泡バス アトグリーンキンダーパペッツ微生物限度基準超過2024-11-28
27ドクターセニクル ベビー ハンドクレンザー(株)プラリト微生物限度基準超過2024-11-18
28アローズ セラマイドマックスパーム H(株)グルービーコスメティックラベル未貼付による製品名表示記載不一致2024-09-30
29チーズ石鹸オンド工房食品誤認・摂取のおそれがある化粧品2023-10-10
30ケピバブル バスパウダー チョコ湯(株)ゼロファウンダース食品誤認・摂取のおそれがある化粧品2023-08-11

各案件の対象製造番号と使用期限は、上記の公告原文で確認できる。製品名が同じでも、製造番号が異なればリコール対象ではない。

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