午前2時40分。江南駅11番出口のビルの4階に灯りがついています。エレベーターを降りると、ガラス戸の横にキオスクが1台置かれていて、人の姿はありません。ドアの向こうに見える30数席のうち、20席ほどが埋まっています。誰も口をきかず、聞こえるのはエアコンの音と、ごくかすかなホワイトノイズだけです。

同じ時刻、聖水洞(ソンスドン)の路地裏にあるカフェの2階では、5人がそれぞれノートPCを広げていて、そのうち2人は通話中、1人はラテを注文したまま眠っています。

どちらもソウルではごく普通の深夜の風景です。そしてこの二つの空間は、見た目こそ似ていますが、売っているものがまったく違います。

まず結論から

  • ソウルで24時間営業しているカフェは860軒以上。夜に行く場所がないから生まれた業態ではなく、夜も働く人が多いから生まれた業態です。
  • スタディカフェは飲み物ではなく時間を売ります。1時間1,500〜3,000ウォン、当日券10,000ウォン前後、深夜券6,000ウォン前後。
  • 今や主な利用者は受験生ではなく会社員です。プレミアムブランド基準で成人顧客比率87%。

ソウルになぜ夜通し開いているカフェがこんなに多いのか

夜に開いている空間が多い都市はいくつもありますが、その空間の半分がである都市は珍しいものです。

韓国でカフェは、最初からコーヒーだけを売る場所ではありませんでした。家は狭く家族がいて、会社は気を遣い、図書館は夜に閉まります。残る選択肢がカフェでした。そしてカフェで何時間も勉強したり仕事をしたりする人たちには、ちゃんと名前がつきました——カゴン族(カゴンゾク)。カフェで勉強する人々という意味です。

背景 —— なぜカフェだったのか

2000年代後半にフランチャイズコーヒーチェーンが爆発的に増えたことで、ソウルには「飲み物を1杯頼めば長く座っていても構わない」空間が初めて大量供給されました。タムアンドタムス(Tom N Toms)が24時間営業を最初に始め、2014年頃にはハリス(Hollys)やエンジェリナス(Angel-in-us)の一部店舗が追随しました。その頃からカフェは、夜間の自習室兼無料オフィスの役割を兼ねるようになったのです。

ところが、カフェにとってこれは割に合う商売ではありません。4,500ウォンのアメリカーノ1杯で6時間も座られては、回転率が崩壊します。この緊張が爆発した事件が2025年8月に起きました。スターバックスコリアが国内店舗限定で、個人用のデスクトップPC・プリンター・電源タップ・パーティションの持ち込みを禁止したのです。グローバル方針ではなく、韓国店舗だけに適用された措置でした。

この措置はカゴン族を消し去ることはできませんでした。代わりに移動させたのです。行き場を失った需要を吸収したのが、無人スタディカフェでした。

860軒+
ソウルで24時間営業するカフェ(ダイニングコード集計)
62
スタディカフェ加盟店の増加倍率(2015年112店 → 2024年10月6,944店)
約12,000
全国スタディカフェ推定店舗数
87%
プレミアムスタディカフェ新規店舗の成人顧客比率(2025年)

スタディカフェは独書室(トクソシル)と何が違うのか

韓国にはもともと独書室(トクソシル)という業種がありました。月単位で自分の席を割り当てられる有料自習室です。スタディカフェはそれを代替した新種ですが、決定的な違いは内装ではなく法律です。

独書室は学院法の適用を受け、教育庁に登録しなければならず、管理者が常駐しなければならず、深夜営業に制限がかかります。一方、スタディカフェは空間賃貸業、つまり自由業に分類されます。登録も常駐スタッフも不要です。だから24時間無人運営が可能で、だから10年で62倍になりました。

📋 独書室・スタディカフェ・24時間カフェ —— 何が違うのか

項目独書室スタディカフェ24時間カフェ
法的地位学院法適用、教育庁登録自由業(空間賃貸業)一般飲食店
売るもの固定座席(月単位)時間飲み物
決済単位時間・当日・深夜・定期
夜間運営深夜制限あり24時間無人自由店舗により異なる
管理者常駐必須なし(キオスク)スタッフあり
会話禁止禁止(スタディルームは例外)自由
飲み物持ち込み基本無料コーヒー・茶提供有料、注文必須
青少年深夜出入り制限別途制限なし別途制限なし

最後の行は韓国で議論の的になっています。PCバン(ネットカフェ)とノレバン(カラオケ)は夜10時以降の青少年出入りが禁止されますが、スタディカフェは自由業のためその規制が適用されません。市民団体が「独書室のように規制しろ」と求めてきた理由です。


スタディカフェの料金はいくらか

1時間1,500〜3,000ウォンです。ソウル都心のプレミアムブランドが上の価格帯、住宅街の店舗が下の価格帯とみれば、だいたい合っています。

料金プランは4種類に分かれていて、どの券種を買うかを見れば、その人がなぜ来たのかも見当がつきます。

💳 スタディカフェ料金プラン(2026年基準の一般的な価格帯)

券種価格帯使い方主な購入者
時間券1時間1,500〜3,000ウォン(通常2時間から)チャージして使った分だけ減算2〜3時間作業しに来たフリーランサー
当日券10,000ウォン前後午前入室〜深夜0時頃まで一日中使うリモートワーカー
深夜券6,000ウォン前後夜10時〜翌朝締切直前の人、徹夜勉強
定期券月10万〜20万ウォン台期間内無制限受験生・公務員試験生・資格試験準備生

計算してみると

ソウルのカフェのアメリカーノ1杯はおおよそ4,500〜5,000ウォンです。スタディカフェの深夜券6,000ウォンなら、夜10時から朝まで8時間以上を静かな個人席で過ごせます。コーヒー2杯分なら、カフェで追い出されない程度に粘るのがせいぜいですが、同じ金額でスタディカフェなら一晩まるごと手に入ります。韓国の人々が移っていった理由は、情緒ではなく算数です。


スタディカフェの中には何があるのか

ドアを開けると、たいていこんな構成です。ブランドごとに名称は少しずつ違いますが、骨格はほぼ同じです。

🪑
1人ブース席
三方が仕切られた個人デスク。座席ごとに個別照明とコンセント。スタディカフェの基本にして一番人気の席。
💻
オープン席 / ノートPC席
パーティションが低いか無い広めのデスク。キーボードの打鍵音が許容されるエリアとして別に指定されていることが多い。
🛋️
ラウンジ席
ソファと低めのテーブル。読書やちょっとした休憩用。最近プレミアム店が最も力を入れている空間。
🚪
スタディルーム
ドア付きの会議室。唯一話してもいい場所。時間単位の別料金か、人数で計算。
無料ドリンクバー
カプセルコーヒー・茶・ウォーターサーバー。料金に含まれている場合がほとんどで、ここで原価が回収されると思えばいい。
🔒
ロッカー・プリンター
月単位のロッカー貸出、枚数課金の白黒プリンター。定期券利用者をつなぎとめる仕掛け。

プレミアムブランドはここからさらにもう一段踏み込みます。集中のためのホワイトノイズ設計、長時間座っても疲れにくい椅子(ソウル大学図書館の椅子をそのまま導入したブランドもあります)、座席ごとのカスタム照明が基本で、ここにスタイラー(衣類管理機)・マッサージチェア・タンブラー洗浄機といった設備まで加わります。

このリストが語っていること:スタイラー(衣類管理機)とマッサージチェアは、受験生のためのものではありません。スーツで来た人肩が凝っている人のためのものです。設備リストだけを見ても、この業種の客が誰に変わったかが見えてきます。

実際に誰が座っているのか

最もよくある誤解が「スタディカフェ=受験生」です。2026年のソウルでは、それは間違った絵です。

プレミアムブランド「チャクシムスタディカフェ」が2025年に公開した新規店舗資料を見ると、成人顧客比率が平均87%でした。店舗別では、新村スッキル(シンチョン・スッキル)店92%、建大入口駅(コンデイック)店85%以上、江南駅(カンナム駅)店85%。新村と建大は大学街なのにこの数字です。江南駅店は会社員の需要が集中し、満席で30人以上の待機が出たといいます。

👥 時間帯によって座っている人が変わる

時間帯主な利用者何をしているか
午前9時〜12時フリーランサー、リモートワーカー会社の代わりに出勤。ノートPC、ビデオ会議はスタディルームで
午後12時〜18時公務員試験生・資格試験準備生、大学院生定期券利用者の本陣。ほぼ固定席状態
午後18時〜22時退勤した会社員、高校生資格・語学・転職の準備。塾帰りの学生も混ざる
夜22時〜明け方締切直前の会社員、試験直前の受験生深夜券の時間帯。冬の修能(スヌン)シーズンと公開採用シーズンに満席

24時間カフェの客層は少し異なります。ここは静かさを買えない代わりに、話せる、誰かと一緒にいられる場所です。深夜のカフェには、夜勤を終えて来た人、始発を待つ人、グループ課題をする大学生、そして時差で眠れない旅行者が混ざっています。


ソウルで実際に行く価値のある場所はどこか

24時間カフェとスタディカフェに分けて見ていきます。営業時間や料金は店舗の事情で変わるため、出かける前にNaverマップで当日の営業状況をもう一度確認するのが安全です。

24時間カフェ —— 話してもいい選択肢

🌙
ブルブル(松坡ナル駅)
24時間年中無休。3階建てで、地下1階はスタディゾーンの雰囲気、1・2階はラウンジ。カフェ前に無料駐車7台分。
🐕
ノンオフ(木洞)
陽川区国会大路沿い。24時間ブランチ・ベーカリーカフェ。屋外席は愛犬同伴可。
🏭
タムアンドタムス聖水1号店
24時間年中無休。聖水洞のど真ん中で、深夜まで作業するデザイナー・開発者の比率が高め。
📖
タムアンドタムス誠信女子大店
24時間営業。大学街の特性上、試験期間中は徹夜で課題をこなす学生で席がない。

📍 ブルブル Naverマップで開く

📍 ノンオフ Naverマップで開く

📍 タムアンドタムス聖水1号店 Naverマップで開く

📍 タムアンドタムス誠信女子大店 Naverマップで開く

スタディカフェ —— 静かな選択肢

チャクシムスタディカフェは、2016年に1号店を出したプレミアムスタディカフェブランドで、24時間無人運営を前提にシステムが設計されています。以下の3店舗は、2025年の資料で成人顧客比率が具体的に公開されたところです。

🏢 成人顧客比率が公開されたチャクシムスタディカフェのソウル店舗

店舗成人顧客比率特徴
新村スッキル店92%正式オープン前の事前予約500名突破
江南駅店85%会社員の需要集中、満席時30名以上待機
建大入口駅店85%以上大学街の立地にもかかわらず会社員利用率が高い

📍 チャクシム新村スッキル店 Naverマップで開く

📍 チャクシム江南駅店 Naverマップで開く

📍 チャクシム建大入口駅店 Naverマップで開く


外国人がスタディカフェを使えるのか

使えます。ただしキオスクの前で一度つまずきます。

無人スタディカフェは入り口にキオスクがあり、初回利用時に会員登録を求められます。その手続きに韓国の携帯電話番号によるSMS認証またはカカオトーク認証が入るところがほとんどです。韓国の番号を持っていなければ、ここで先に進めません。

実際の対処法

  • 韓国のUSIM・eSIMをすでに購入していれば、その番号で認証すればOKです。ほとんどの場合通ります。
  • 番号がない場合は、非会員決済ボタンがキオスクの最初の画面にあるか確認します。対応している店舗もあります。
  • それでもダメなら、24時間の一般カフェに行きます。注文さえすれば認証は不要です。
  • スタディルーム(会議室)はスペースクラウド(SpaceCloud)のような予約プラットフォームで事前に押さえられるので、キオスクをスキップできます。

知っておくと便利なこと

キオスクは座席番号と出入り口の暗証番号を一緒に発行します。この番号をなくすと、トイレに行ったきり戻れなくなります。画面を写真に撮っておきましょう。そして退室処理をしないと時間が減り続ける方式が多いので、出るときはキオスクで退室ボタンを押す必要があります。


守るべきマナーは何か

スタディカフェのルールは壁に貼ってありますが、実際に人々が腹を立てるポイントは別にあります。

スターバックスが2025年8月に国内店舗に掲示した案内文には、個人デスクトップPC・プリンター・電源タップ・パーティションの持ち込み禁止とともに、「複数名で使うテーブルでは、他のお客様に譲っていただくようお願いします」という一文が入りました。何が問題だったのかがそのまま透けて見える一文です。

結局どこに行けばいいのか

基準はひとつで十分です。話す必要があるかどうか。

話す用事があるなら(チーム作業、通話、友だちと一緒)24時間カフェです。飲み物代だけで済み、認証もありません。話す用事がなく、長く座る必要があるならスタディカフェです。1時間2,000ウォン前後で、個人照明つきのパーティションデスクと無料コーヒーが出てきて、誰も話しかけてきません。

ソウルで夜を明かさなければならない事情ができたら——時差でも締切でも始発便でも——この街はすでにそういう人たちのためのインフラを整えています。午前3時に席が埋まっているのは、そういう理由からです。

データと出典

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