ソウルで「カフェ」と検索すると、たいてい聖水洞の倉庫リノベ系、延南洞のブランチ、弘大のネオン映えスポットがずらりと出てくる。どれも悪くない。でも、旅の連れが50代の親だったり、自分自身が静かに過ごしたい気分だったりしたら、その検索結果はちょっと違う。

ソウルの中高年は、カフェに求める基準が若い世代とは決定的に違う。腰の痛くならない椅子、耳を刺さない音量の音楽、そしてできれば、その空間に自分の若い頃と重なる「何か」があること。

以下は、ソウルの50〜60代が実際に足繁く通う10軒だ。老舗の茶房とパン屋、百年近い歳月をまとった韓屋の伝統茶房、そして山の稜線を窓いっぱいに望む郊外カフェ——三つのカテゴリーに分けて紹介する。各店にNaverマップのボタンを付けたので、訪れる前に保存してほしい。

ひとことで言うと

  • 中高年向けの人気カフェは三つに分かれる。①老舗の名店(大学路ハクリム茶房、奨忠洞テグクダン)、②韓屋の伝統茶房(スヨンサンバン、美しい茶博物館、チャマシヌントゥル、北村オソルロクティーハウス)、③山の景色+駐車場付きの郊外カフェ(富岩洞サンモトゥンイとクラブエスプレッソ、平倉洞サミル、恩平1인1잔)。
  • 老舗や路地裏の韓屋カフェは駐車場がほぼないので地下鉄かタクシーが無難。膝の悪い方には平坦な店を優先して。

なぜ50〜60代のカフェ地図は、20〜30代とまったく違うのか

二十代、三十代がカフェに求めるものは「新しさ」と「写真映え」かもしれない。でも五十代以上が重視するのは「慣れ親しんだ味」と「居心地」だ。大音量の音楽と硬いスツール、回転率を上げる窮屈なレイアウトより、二時間でも三時間でも気兼ねなく座っていられるソファと、膝腰にやさしい座席、耳に馴染んだクラシックや静かなジャズ、そしてできれば若かりし頃の記憶が染みついた空間——そういう場所を好む。

だからこのリストにTikTokのトレンド店は一軒もない。その代わりに並ぶのは、朝鮮戦争の頃からコーヒーを淹れ続けてきた茶房(다방)、靴を脱いでオンドルの座敷に上がり双和茶をすする韓屋、そして窓の外に北漢山の稜線が広がる山裾のカフェ——自然が生み出す眺望は、どんなデザイン照明より心に沁みる。しかもそのほとんどが、古宮や美術館、並木道の散歩圏内にある。中高年にとってカフェとは、たいてい単独の目的地ではなく、半日の小さな旅の中の、心地よい休憩地点なのだ。

2026年、ソウルの中高年がいま通うべきカフェ

このリストはSNSのハッシュタグから拾ったものではない。韓国人が実際に使うプラットフォーム——다이닝코드(ダイニングコード)、식신(シクシン)、ネイバープレイス——をもとに、歴史の厚み、実際の居心地の良さ、「もう一杯頼んで長居したくなる空気」を基準に重み付けして選んだ。

#店名エリアタイプシグネチャー営業時間(目安・要確認)
1ハクリム茶房大学路・恵化1956年創業の老舗茶房ウィンナーコーヒー10:00–23:00
2テグクダン奨忠洞1946年創業ソウル最古のパン屋モナカアイス、カステラ08:00–21:00
3スヨンサンバン城北洞小説家旧邸の韓屋茶房サンファ茶、ナツメ茶11:30–22:00
4美しい茶博物館仁寺洞韓屋の茶博物館&カフェ世界のお茶100種、緑茶ピンス11:30–20:00
5チャマシヌントゥル三清洞・北村築100年の韓屋伝統茶房サンファタン、ナツメタン11:00–21:00
6オソルロクティーハウス北村北村プレミアム韓国緑茶専門グリーンラテフロート、抹茶ロール11:00–20:00
7クラブエスプレッソ富岩洞1990年創業パイオニアロースターハンドドリップ、自家焙煎豆09:00–21:00
8サンモトゥンイ富岩洞仁王山・北岳山パノラマカフェコーヒー、展望テラス11:00–21:00
9サミル平倉洞北漢山麓ギャラリー型カフェコーヒー、山景、駐車場11:00–21:00
101인1잔恩平韓屋村北漢山一望の韓屋カフェアングムジョルピョン(餡入り餅)10:00–21:00

選定基準:ダイニングコード、シクシン、韓国観光公社、ネイバープレイスのデータをもとに、歴史性・空間の快適性・中高年リピーターの多さを重視して重み付け。

1. ハクリム茶房(학림다방)——大学路にクラシックが流れる1956年創業の老舗

1956年開業、ソウルに数軒しか残っていない昔ながらの「茶房(다방)」のひとつ。韓国で「茶房」といえば、現代のカフェブームより何十年も前から存在した、コーヒーと語らいの場。ハクリムはその原風景をそのまま残している。ぎしりと鳴る木の階段、セピア色の壁、絶えず流れるクラシック音楽——70年近く、ほとんど変わっていない。

詩人の金芝河(キム・ジハ)や千祥炳(チョン・サンビョン)、小説家の李清俊(イ・チョンジュン)が通った文化サロンとしても知られ、建物全体が2014年に「ソウル未来遺産」に指定された。看板メニューは、たっぷりのホイップクリームをのせたウィンナーコーヒー。凝ったことは何もしていない。それでいいのだ。

鐘路区 大学路119、2階 · 10:00–23:00(要確認) · 恵化駅3番出口すぐ 📍 Naverマップで開く

2. テグクダン(태극당)——1946年、ソウルで最も古いパン屋

テグクダンは独立直後の明洞で産声を上げ、1973年に今の奨忠洞へ移ってきた。ただのパン屋ではない。半世紀分のソウルの記憶が、バタークリームとカステラの中に閉じ込められている。レトロな看板、昔ながらの店内、包装紙の箱さえも、家族のアルバムから抜け出してきたようだ。

2階には小さなカフェスペースがあり、買ったパンをその場でいただける。名物は1947年初登場のモナカアイス(薄いウエハースで挟んだ分厚いアイスクリーム)、アップルジャムのロールケーキ、そしてレンガのような四角い形が名前の由来「古方(ゴバン)カステラ」。東大入口駅から徒歩3分、奨忠壇公園の散歩とセットでどうぞ。

中区 東湖路24ギル7(奨忠洞) · 08:00–21:00(要確認) · 東大入口駅 徒歩3分 📍 Naverマップで開く

3. スヨンサンバン(수연산방)——小説家の旧邸でいただく伝統茶

韓国近代文学を代表する小説家・李泰俊(イ・テジュン)が暮らした韓屋を、彼の姪孫(おいの孫)が茶房として営んでいる。私邸から茶房への移り変わりはとても自然で、まるでこの韓屋がもともと、湯気の立つ茶碗で客を迎えるために建てられたかのようだ。

縁側(トェンマル)から中庭を眺め、肌寒い季節にはオンドルの効いた座敷に上がる。お茶はどれも滋味深い。双和茶(サンファ茶——シナモンや生姜、薬材をじっくり煮出した韓方茶)、ナツメ茶、カリンと桔梗の茶。双和茶は一杯13,500ウォン前後。週末は混み合うので、できれば予約を。

城北区 城北路26ギル8 · 11:30–22:00(曜日により変動、要確認) · 漢城大入口駅からマウルバス 📍 Naverマップで開く

4. 美しい茶博物館(아름다운차박물관)——仁寺洞の韓屋で世界のお茶を

仁寺洞の路地にひっそりと佇む、博物館と茶房のあいのこ。韓国はもちろん、中国・日本・台湾など世界のお茶が100種類以上ずらりと並び、茶器や陶芸作品の展示もあって、席につく前からしばし見入ってしまう。

韓屋の中庭は小さくても静謐で、夏には緑茶ピンス(かき氷)が人気。入館は無料だが、カフェ利用はワンドリンク制なので、ゆっくり腰を据えるつもりで訪れたい。仁寺洞の画廊めぐりと三清洞への散策のあいだに挟むのにちょうどいい。

鐘路区 仁寺洞ギル19-11 · 11:30–20:00(要確認) · 安国駅・鐘閣駅から徒歩圏 📍 Naverマップで開く

5. チャマシヌントゥル(차마시는뜰)——築100年の韓屋で味わう三清洞の茶時間

「お茶を飲む庭」という名の通り、築100年の韓屋の中央に小さな中庭があり、どの席からもその緑が目に入る。北村の高台に位置しているため、奥の窓からは韓屋の瓦屋根が幾重にも折り重なって市街へと下っていく景色が広がる——この眺めだけでも一杯の茶に値する。

看板はサンファタン(双和湯)とナツメタン。くるみ菓子、シルトク(蒸し餅)、小豆粥、五味子ピンスといった伝統デザートを添えて。時間の流れがふっとゆるくなる空間で、安国駅から歩いてくる上り坂で少し息が上がるのも、またいいスパイスになる。

鐘路区 北村路11ナギル26 · 11:00–21:00(要確認) · 安国駅 徒歩10分(上り坂) 📍 Naverマップで開く

6. オソルロク ティーハウス北村(오설록 티하우스 북촌)——済州発・プレミアム韓国緑茶の一杯

済州島を本拠とする韓国最高峰の茶ブランド、オソルロクが北村に出したティーハウス。1960年代の洋館(양옥)を改装した3階建てで、1階は茶葉を選ぶアトリエ、2階以上でゆっくりお茶を楽しめる。ティーカクテルバーまで潜んでいる。

洗練された空間とサービスは、ちょっとした「格」を感じさせつつ気取らない。緑茶ラテフロートと抹茶ロールケーキが定番人気で、北村の通り沿いという好立地もあって、仁寺洞〜三清洞ウォークの自然な休憩地点になる。

鐘路区 北村路45 · 11:00–20:00(金〜日は21:00まで、要確認) · 安国駅 徒歩8分 📍 Naverマップで開く

7. クラブエスプレッソ(클럽에스프레소)——静かな富岩洞に移ったパイオニアロースター

1990年に大学路で産声を上げ、2001年に閑静な富岩洞へ移転。韓国におけるスペシャルティコーヒーの先駆者的存在で、「コーヒーは真摯に、価格は良心的に」というモットーを三十年以上守り続けている。

2階は温かみのある木の空間で、小さなテーブルが並ぶ。派手なギミックは一切なく、ただ自家焙煎の豆を丁寧にハンドドリップした一杯と、それをゆっくり楽しめる静けさがある。富岩洞のギャラリーやソウル城郭の散策路と組み合わせれば、充実した午後になる。

鐘路区 彰義門路132(富岩洞) · 09:00–21:00(要確認) · 景福宮駅からバス 📍 Naverマップで開く

8. サンモトゥンイ(산모퉁이)——仁王山と北岳山が一望の「山の角」カフェ

サンモトゥンイ、直訳すれば「山の角」。富岩洞の中腹に張り付くように建ち、仁王山と北岳山、そしてソウル城郭の稜線をテラスいっぱいに切り取る。ソウル市街にいながら、空気が一変する立地だ。

ドラマ『コーヒープリンス1号店』のロケ地として一躍有名になったが、そのドラマ効果を抜きにしても、この眺望は本物だ。よく晴れた日に屋上席を確保し、山風に吹かれる——コーヒーの味がどうこう言うより、まずその時間に浸る場所。階段と坂道があるので歩きやすい靴で。でも、その価値はある。

鐘路区 白石洞ギル153(富岩洞) · 11:00–21:00(要確認) · 景福宮駅からバス+徒歩 📍 Naverマップで開く

9. サミル(사미루)——平倉洞のギャラリーカフェ、駐車場あり・山景あり

平倉洞は北漢山のふもとに広がる、ソウルの中でもひときわ落ち着いたアートタウン。その一角に佇むサミルは、まるでギャラリーのような開放的なカフェで、大きな窓が北漢山のシルエットを額縁のように切り取る。

車で親を連れてソウルを巡るなら、サミルはまさに福音だ。駐車場は広く、店内はゆったり、席の取り合いとは無縁。しかも景色は四季折々に表情を変える(秋の紅葉は静かな圧巻)。隣接するガナアートセンターやソウル美術館と合わせて、半日のアート散歩が自然に組める。

鐘路区 平倉32ギル30 · 火〜日 11:00–21:00(月曜定休、要確認) · 駐車場あり 📍 Naverマップで開く

10. 1인1잔(イルインイルジャン)——北漢山が正面にそびえる恩平韓屋村の屋上カフェ

「ひとり一杯」——静かな主張のような店名を掲げて、恩平韓屋村の入口に立つ6階建て。村で一番高い建物で、上階とルーフトップからの眺めはため息ものだ。北漢山の稜線が視界いっぱいに広がり、手前には韓屋村の濃い灰色の瓦屋根が層をなす。

デザートは韓国らしさ全開。アングムジョルピョン(小豆餡を挟んだ搗き餅)をはじめ、餅スイーツがコーヒーや茶とよく合う。駐車場もあり、座席数も十分、都心のカフェよりずっとゆったりしている。地下鉄の旧把撥(クパバル)駅からは車かタクシーが必要だが、そのぶんの価値はある。

恩平区 延西路534 · 10:00–21:00(要確認) · 駐車場あり · 3号線 旧把撥駅から車で移動 📍 Naverマップで開く

この10軒をどう回るか——無理のない日帰りプラン

10軒すべてを制覇する必要はない。いや、むしろやめてほしい。誰と行くか、どう移動するかで、ゆるやかに三つのルートに分けて考えてほしい。

ノスタルジアルート(地下鉄で快適):大学路ハクリム茶房でクラシックとウィンナーコーヒーに浸り、地下鉄で一站、奨忠洞テグクダンでモナカアイスとカステラを。どちらも平坦で地下鉄アクセスが良く、昔のソウルの空気にどっぷり浸れる。

韓屋お茶めぐり(徒歩中心、一軒だけ例外):安国駅を起点に。北村オソルロクティーハウス → 三清洞チャマシヌントゥル → 仁寺洞の美しい茶博物館と歩いてつなぐ。もう一日あるなら、城北洞のスヨンサンバンまでタクシーですぐ。足を伸ばす価値は十分にある。

山景ドライブコース(車推奨):車のある人向け。富岩洞のクラブエスプレッソかサンモトゥンイで山の稜線を眺めながら一杯、平倉洞のサミルへ上がり、恩平韓屋村1인1잔で締める。三軒とも駐車場があり、三軒とも北漢山を正面に望み、三軒とも美術館や短い散策との相性がいい。

実用メモ:老舗茶房と路地裏の韓屋カフェには駐車場がほぼない。地下鉄かタクシーで。膝や腰の気になる方と一緒なら、坂の多いサンモトゥンイやチャマシヌントゥルは避け、テグクダン・サミル・1인1잔のような平坦なアプローチの店から選ぼう。そして、ソウルの人気店の常として、週末の午前より平日の午後がはるかに静かで心地よい。

Sources

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Klook.com

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