まず結論から

  • ソウルの皮膚科医院618軒・形成外科医院695軒、合わせて1,313軒(2026年第2四半期)。
  • このうち江南区ひとつに656軒。ソウル全体のちょうど半分である。
  • ソウル形成外科の89.6%が江南区・瑞草区のたった2区のなかにある。
  • 人口10万人あたりの密度は、江南区118.7軒に対し衿川区1.3軒——91倍の差。
  • ただし、これは看板に掲げた科目を数えた数字。実際に施術する医院はもっと多い(下記5番の項目を参照)。

韓国に皮膚施術を受けに来る外国人は、いまや年間131万人にのぼります(2025年、保健福祉部)。ところが「どこに行けば選択肢が多いのか」という問いへの答えは、ほとんどが広告か印象論ばかり。そこで、ただ数えてみました。健康保険審査評価院が四半期ごとに公開する標榜科目別医院現況は、全国すべての医院が法的に届け出たデータなので、広告の入り込む余地はありません。


ソウルに皮膚科・形成外科はいくつあるのか?

2026年第2四半期基準で皮膚科医院618軒、形成外科医院695軒です。 ソウル全体の医院10,634軒の12.3%にあたります。ここで言う医院とは、病床30床未満の町のクリニックのことで、大学病院や総合病院は含まれません。

1,313
ソウル 皮膚科+形成外科医院(2026年第2四半期)
656
江南区のみの合計 — ソウルの50.0%
89.6%
ソウル形成外科のうち江南・瑞草2区の割合
91
人口あたり密度 1位(江南)対 25位(衿川)

📊 ソウル25自治区 皮膚科・形成外科医院数(2026年第2四半期、人口10万人あたり順)

順位自治区皮膚科形成外科合計人口10万人あたり
1江南区191465656118.7
2瑞草区7015822855.0
3中区1732017.0
4麻浦区237308.4
5松坡区465517.8
6永登浦区236297.8
7鐘路区6396.6
8江東区274316.2
9西大門区153186.0
10龍山区93126.0
11城東区151165.8
12蘆原区207275.6
13陽川区194235.5
14広津区151164.8
15江西区233264.7
16銅雀区133164.3
17東大門区114154.3
18江北区75124.3
19恩平区153184.0
20中浪区150154.0
21九老区92112.9
22城北区84122.8
23冠岳区111122.5
24道峰区7072.3
25衿川区3031.3
ソウル全体6186951,31314.1

人口は2026年6月の住民登録人口基準です。この表を見ると、ソウルは事実上ふたつの都市であることがわかります。江南区と瑞草区がひとつ、残り23区がもうひとつです。


なぜ江南・瑞草にここまで集中しているのか?

形成外科は、ほぼひとつの街の産業だからです。 ソウルの形成外科医院695軒のうち623軒が江南区(465)と瑞草区(158)にあります。残り23区を全部合わせても72軒。道峰区・衿川区・中浪区には、標榜科目が形成外科の医院は1軒もありません。

全国に広げても構図は同じです。全国の形成外科医院1,227軒のうち、江南区ひとつに465軒(37.9%) が集中しています。大韓民国の形成外科医院、3軒に1軒以上がソウル江南区のなかにあるという計算です。

皮膚科は少し事情が異なります。ソウルの皮膚科618軒のうち江南・瑞草は261軒(42.2%)で、形成外科ほど極端ではありません。松坡(46)・江東(27)・麻浦(23)・江西(23)・永登浦(23)のように、生活圏単位である程度分散しています。皮膚科は地元住民の診療需要が半分ほど混ざっており、形成外科はほぼ純粋に美容マーケットを追いかけた結果と見られます。

意外な3位:人口10万人あたり密度の3位は、江南・瑞草に次いで中区(17.0軒)です。明洞のある区ですね。住民登録人口が11万人台とソウルで最も少ない一方、観光客を相手にする皮膚科が17軒も集まっているために生じた結果です。鐘路区(6.6軒)も同じ理由で、人口規模のわりに高くなっています。

この8年で勢力図はどう変わったか?

同じ統計の2018年第4四半期と比較すると、増えたことは確かですが、増えた場所は決まっています。

📈 2018年第4四半期 → 2026年第2四半期の変化(単位:軒)

区分2018年第4四半期2026年第2四半期増減率
ソウル皮膚科 全体483618+28.0%
ソウル形成外科 全体494695+40.7%
江南区 皮膚科138191+38.4%
江南区 形成外科375465+24.0%
瑞草区 皮膚科4570+55.6%
瑞草区 形成外科64158+146.9%

最も目を引く数字は瑞草区の形成外科 +146.9% です。8年で2.5倍になりました。江南区がすでに飽和状態のため、江南駅の南側・教大(キョデ)・瑞草一帯へと溢れ出した結果です。旅行者目線では「江南クラスター」の物理的範囲がその分広がったと読めばよいでしょう。


この数字を鵜呑みにしてはいけない理由

ここがこの記事で最も重要なポイントです。上の表は病院の実力ではなく看板を数えた数字であり、3つの限界があります。

統計を読むときの3つの注意点

  • 標榜科目 = 届け出た看板。審査評価院の統計は、医療機関が届け出た標榜科目基準です。施術件数でも、規模でも、専門医の数でもありません。医師1人の医院も、30人が勤務する大型クリニックも同じ「1軒」です。
  • 一般医の医院が統計の外にある。ソウルの医院10,634軒のうち2,991軒(28.1%)は標榜科目が一般医です。江南区では2,152軒中813軒(37.8%)が一般医で、このうち相当数が実際には皮膚・美容施術を行っています。つまり実際に施術可能な医院は656軒よりはるかに多いのです。
  • 人口あたり指標は住民登録人口基準。中区・鐘路区・江南区のように、昼間人口が夜間の数倍に膨れ上がる業務・商業地区は、人口あたり密度が実際の体感より高く出ます。逆に純粋な住宅地は低く出ます。

特に2番目の項目は実際のクリニック選びに直結します。韓国では「○○皮膚科医院」(科目が名称に入っている)と「○○医院+診療科目:皮膚科」(科目が名称の外に小さく付いている)が法的に異なる看板です。前者は皮膚科専門医が開設した医院、後者はそうではありません。上記統計の618軒は前者だけを数えた数字です。看板の見分け方については別記事で詳しく扱っています。


結局、旅行者はどこに行けばいいのか?

選択肢の幅だけで言えば江南クラスターが圧倒的、動線効率だけで言えば明洞です。 密度が高いということは診療の質が高いという意味ではなく、同じ施術をする医院が徒歩数分圏内にいくつもあるという意味です。実務的には比較・カウンセリング・価格交渉・外国語対応スタッフが厚いことを示します。

🏙️
狎鴎亭(アックジョン)・新沙(シンサ)〈江南区〉
形成外科密度の核心。狎鴎亭ロデオ〜新沙駅区間には大型形成外科とプレミアム皮膚科が集中。カウンセリング通訳が最も充実しているエリア。
🚇
江南駅(カンナムえき)・駅三(ヨクサム)〈江南・瑞草の境界〉
中小規模の皮膚科がビルごとにフロア単位で入居。レーザー・リフティングなど定番施術の価格競争が最も激しいエリア。
🛍️
明洞(ミョンドン)・乙支路(ウルチロ)〈中区〉
絶対数(20軒)は少ないが、観光動線上にそのまま乗っている。ショッピング・両替・宿泊施設と徒歩圏。外国人対応に特化した医院が多い。
🏢
蚕室(チャムシル)・松坡(ソンパ)〈松坡区〉
皮膚科46軒で江南・瑞草に次ぐ。形成外科は5軒のみ。ロッテワールドタワー周辺に宿をとったなら、わざわざ江南まで行く必要はないレベル。

数字を実際のクリニック選びに活かす方法

  • 選択肢を広げたいなら江南区・瑞草区。同じ施術の3〜4軒比較カウンセリングが半日で可能です。
  • 時間を節約したいなら宿泊先基準で選びましょう。松坡・麻浦・永登浦・江西にも皮膚科が23〜46軒あり、定番施術なら十分です。
  • 手術レベルの形成外科が目的なら選択肢は事実上、江南・瑞草に絞られます(ソウルの89.6%)。この場合はエリア選びではなく、病院そのものを選ぶ問題です。
  • どのエリアでも専門医確認は別途必要。審査評価院の「病院・薬局検索」で病院名を検索し、診療科目別の専門医数を見れば30秒で完了します。

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この一極集中は外国人患者統計とどう重なるか?

ほぼそのまま重なります。 保健福祉部が2026年4月に発表した2025年実績によると、韓国を訪れた外国人患者は201万人で、2009年の集計開始以来初めて200万人を突破しました。

201万人
2025年 外国人患者(2024年は117万人)
62.9%
皮膚科の割合(131.3万人)
87.2%
ソウルが誘致した割合(176万人)
87.7%
医院級 医療機関の利用割合

形成外科は23万3千人(11.2%)で2位、2024年比の増加率は皮膚科86.2%、形成外科64.3%でした。国籍別では日本・中国が60.6%(121万9千人)、台湾9.2%、アメリカ8.6%の順です。

この統計が上のマップと交差するポイントは医院級87.7% という数字です。外国人患者10人のうち9人が大学病院ではなく街の医院級を利用しています。そして、その医院級が最も厚く積み重なっている場所こそ、江南区・瑞草区です。旅行者が感じる「江南って病院多すぎない?」という感想は錯覚ではなく、統計そのままなのです。


出典 / Sources

  • 健康保険審査評価院 保健医療ビッグデータ開放システム、地域別 医院 標榜科目別 機関数 — 2026年第2四半期および2018年第4四半期照会(療養機関現況申告基準)
  • 行政安全部、住民登録人口および世帯現況 — 2026年6月基準 ソウル市 自治区別人口
  • 保健福祉部、2025年 外国人患者誘致現況(2026年4月24日発表)
  • 人口10万人あたり密度は上記2資料をもとにSeoulWindowが直接算出した数値です。

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