まず結論から

  • 1カ所だけ行くなら 高速ターミナル ゴーツーモール。店舗数620店でソウル地下商店街の圧倒的ナンバーワン。3・7・9号線の乗換通路がそのまま商店街です。
  • 雨の日・真夏・真冬には 市庁駅 → 乙支路入口 → 東大門歴史文化公園 の軸。地上に一度も出ずに約2.8kmを歩けます。
  • モノより時間を買いに行くなら 会賢地下商店街。中古LPや古銭・切手を扱う店が、1977年からずっと同じ場所にあります。

ソウルで夏の午後2時に外を歩くのは、はっきり言って罰ゲームです。アスファルトから立ちのぼる熱気がふくらはぎをじりじりと焼き、10分も歩けばシャツが背中に張りつく。ところがソウルの人たちは、そんなとき妙なくらい平然としています。地下に降りればいいだけだからです。

ソウルの都心地下には、店がずらりと並ぶ歩行者通路がクモの巣のように張り巡らされています。地下鉄の改札の外側——つまり切符を買わなくても入れるフロアに、何百もの店がへばりつき、そのあいだを人びとがごく当たり前に歩いている。ショッピングモールと呼ぶには生活感がありすぎるし、ただの通路と呼ぶには騒がしすぎる。ソウルでしか出会えない、独特の空間です。

なぜソウルの地下にはこんなに商店街が多いのか

これらの空間は、もともとショッピングのために造られたわけではありません。1960〜80年代、ソウル市は都心のあちこちに有事の避難用の地下空間を掘り、平時には歩行者通路として使いながら、両側の壁に店舗を貼りつけて賃貸料を得ようとしました。防空壕であり、歩道橋の代替であり、商店街でもあったわけです。ソウル初の地下商店街は1967年12月、市庁前に誕生した「セソウル(新ソウル)地下商店街」。その後1970年代だけで20カ所以上が造られました。いま私たちが歩く乙支路・永登浦・会賢の地下は、そのとき掘られた穴です。

25カ所
ソウル施設公団が管理する地下道商店街の数
2,788
そのなかに入っている店舗の総数
620
ゴーツーモール1カ所の店舗数(全体の22%)
2.8km
乙支路入口駅〜東大門歴史文化公園駅の地下歩行距離

ここでひとつ整理しておくとわかりやすいでしょう。ソウルの地下商店街は管理主体がふたつに分かれます。市民の通行用に掘られた地下道商店街はソウル施設公団が、地下鉄駅の構内に付随する店舗街はソウル交通公社が管轄しています。以下に挙げる7カ所はすべて前者——つまり改札の外から、切符なしでふらりと入っていける空間です。

🏬 地下鉄駅と直結するソウルの地下商店街 7選(2026年8月現在)

#商店街接続駅店舗数強みの品目営業時間定休日
1高速ターミナル(ゴーツーモール)3・7・9号線 高速ターミナル620レディース衣料、生活雑貨、花10:00〜22:00年中無休(旧正月・秋夕の一部休み)
2会賢4号線 会賢・明洞225中古LP、切手・古銭09:00〜22:00第1・第3日曜日
3乙支路2号線 乙支路入口〜東大門歴史文化公園216雑貨、衣料、スポーツウェア09:00〜22:00日曜日・祝日(一部営業)
4カンナム駅2号線 カンナム212ヤングカジュアル、化粧品10:00〜22:00年中無休(旧正月・秋夕の一部休み)
5蚕室駅2・8号線 蚕室139低価格衣料、携帯電話10:00〜22:00第1・第3月曜日
6永登浦ロータリー1号線 永登浦133衣料、雑貨10:00〜22:00年中無休
7永登浦駅1号線 永登浦80携帯電話・通信、衣料10:00〜22:00年中無休

都心を貫く軸 — 市庁広場・乙支路

本当に外に出ずに都心を横断できるんですか?

できます。2号線の乙支路入口駅を出発し、乙支路3街駅、乙支路4街駅を通って東大門歴史文化公園駅まで、2.8kmが途切れることのない地下歩行者通路です。西側の市庁駅方面までつなげれば、ソウル市庁前から東大門デザインプラザの足元まで、地上の信号に一度も出会いません。ソウルの人たちはこの区間を「ソウルアレッキル(ソウル下道)」と呼んだりします。

歩いてみると、区間ごとに表情が変わります。市庁駅と乙支路入口駅のあいだには、踏むたびに音が鳴るピアノ階段やトリックアートのフォトゾーンがあって、観光客の比率が高め。乙支路入口駅を過ぎると、とたんに生活感が濃くなります。登山ウェアやスポーツウェア、財布にベルト、名もなき雑貨が延々と続き、店主たちは客よりラジオに夢中。乙支路3街駅の区間には「ウルチロサイ」という名前のデザインプロジェクトスペースが入っていて、また空気が変わります。

地上の乙支路が印刷通りや照明・タイル商店街で有名なのに対し、地下は服と雑貨が主役。住所は同じでも、売っているものがまったく違うのです。

📍 Naverマップで開く

市庁広場の地下商店街は何が違うんですか?

規模は小ぶりです。店舗数53店、面積4,871㎡と、乙支路の4分の1ほど。そのかわり立地がいい。1号線と2号線の市庁駅のあいだ、ソウル広場の真下にあるので、市庁と徳寿宮(トクスグン)、ソウル図書館を往来する導線上にぽっかり浮かんでいます。業種は事務機器と衣料雑貨、飲食が混在していて、この組み合わせがこの商店街の正体を物語っています。観光客より、近所で働く人たちを相手にしてきた場所なのです。

ひとつ注意を。乙支路と市庁広場は日曜日と祝日が休みです。シャッターが下りた日曜午後の乙支路地下道はなかなか異様な風景ですが、通路自体は開いているので歩くぶんには問題ありません。ただ、ショッピング目的なら日曜日は避けてください。

📍 Naverマップで開く

雨の日の都心半日コース

  • 市庁駅で下車 → 市庁広場地下商店街 → 乙支路入口 → 乙支路3街(ウルチロサイ) → 東大門歴史文化公園駅。ぶらぶら歩いて90分。
  • 途中で地上に出たくなったら、乙支路3街駅の出口から上がればすぐ老舗食堂の路地です。
  • 通路は平日午前5時から翌日午前1時まで通れます。店の営業時間よりずっと長い。

カンナム駅 — いちばん混む地下、いちばん若い品揃え

カンナム駅の地下商店街ってどんなところですか?

面積12,315㎡、店舗数212店。カンナム大路の地下を南北に長く走る構造です。2号線カンナム駅と直結し、通路をたどれば新論峴(シンノニョン)方面までかなりの区間がつながっています。

売っているものは、ずばりヤングカジュアルです。20代が週末に着ていく服、そして化粧品。地上のカンナム大路に並ぶ大型ブランド店と同じものを安く売っているのではなく、そもそも別のものを売っています。ブランドのついていない服、シーズンごとに入れ替わる在庫、今週流行っているシルエット。だからここで正規品のブランド物や長く着るコートを探すと失敗します。逆に、ソウルにいる3日間だけ着るTシャツ1枚や、スーツケースに放り込むアクセサリーなら、ここが正解です。

ひとつ実用的な利点があります。通路は24時間通れて年中無休です。カンナム駅一帯は夜が長く、深夜0時を回ってもこの地下を通って移動する人がたくさんいます。店は10時に閉まりますが、道は閉まりません。

📍 Naverマップで開く


ゴーツーモール — ソウル地下商店街の最終形態

どうしてみんな高速ターミナルを最初に挙げるんですか?

数字がすべてを語っています。面積31,566㎡、店舗数620店。面積で第2位の乙支路地下商店街(20,334㎡)より1.5倍広く、店舗数ではソウル施設公団が管理する25の地下道商店街全体の5分の1以上が、ここ1カ所に詰まっています。

構造はシンプルです。通路が2本、11の字にまっすぐ伸びていて、その両側に店がびっしり。問題はその11の字があまりに長いこと。片方の端から反対側の端まで行くだけでもかなりの時間がかかり、途中で方向感覚を失いがちです。レディース衣料から始まってアクセサリー、インテリア雑貨、台所用品を通り過ぎ、最後に花が出てきます。この順番さえ覚えておけば、いま自分がどこにいるのかだいたいわかります。

3・7・9号線の乗換駅なので、アクセスが異常なほど便利です。全国へ向かう高速バスターミナルと新世界百貨店カンナム店、そしてソウル有数の花の卸売市場が、すべてこの地下でつながっています。

📍 Naverマップで開く

ゴーツーモールの花市場、いつ行くべき?

  • 新しい花が入荷する日は 月・水・金。この日の午前中がいちばん状態がいい。
  • 卸売の特性上、早朝が勝負です。午後遅くに行くと残りもののなかから選ぶことになります。
  • 日曜日は花の卸売り側がおおむね休み。地下商店街の本館は開いていても、花は買えないことがあります。
  • 1束ではなく1単位(단)で売る店が多いです。少量なら事前に確認したほうが無難です。

永登浦 — 携帯電話と服が同じフロアに

永登浦の地下商店街はどうして3つに分かれているんですか?

永登浦は地下商店街がひとつの塊になっていません。永登浦駅地下商店街(店舗数80店)、永登浦ロータリー地下商店街(133店)、永登浦市場地下商店街(78店)が、それぞれ異なる事業者のもとで運営されています。3つを合わせると291店舗でカンナム駅より多くなりますが、歩いて一気に回れる構造ではありません。

性格がもっともはっきりしているのが永登浦駅地下商店街です。1号線永登浦駅と鉄道駅の連絡通路に直結していて、携帯電話販売店が密集しています。ソウルで通信機器を安く買いたい人たちが昔から通ってきた場所のひとつです。ただし、料金プランや契約の仕組みが複雑で、韓国の通信事情に詳しくない旅行者がその場で契約する場所ではありません。SIMカードやアクセサリー、中古端末あたりが現実的なラインでしょう。

永登浦ロータリー側は、もう少しふつうの衣料・雑貨の商店街です。新世界百貨店とロッテ百貨店のあいだに挟まっていて、百貨店で値段を確認してから地下に降りて買う——そんな動線が自然にできあがります。この街で半世紀近く繰り返されてきたショッピングの流儀です。

📍 Naverマップで開く


会賢 — モノより時間を売る地下

ここでしか買えないものってありますか?

あります。会賢地下商店街は、ソウルでいちばん多くの中古LPに出会える場所です。

1977年に会賢地下道が開通して商店街ができ、中古レコード店が1軒入るとオーディオ店があとを追って入ってきました。近くに韓国銀行とソウル中央郵便局があることから、古銭や切手を扱う店までくっついてきた。そうして半世紀が経ちました。倉庫に30万枚をストックし、店内に5万枚を並べている店が、いまも営業を続けています。

店舗数225店、面積9,031㎡と、規模そのものも決して小さくないのですが、体感はもっと狭い。通路の幅が狭く、どの店も商品が通路側にあふれ出しているからです。明洞駅5番出口からエスカレーターで直結し、反対側は新世界百貨店本店と南大門市場へとつながります。明洞から南大門へ抜けるとき、地上を歩くかわりにここを通れば格段に涼しい。

会賢で知っておくとよいこと

古い硬貨や紙幣は売るだけでなく、買取もしているのです。コレクターなら、とくに買うものがなくてもひと回り歩くだけで楽しめます。ただ、定休日が毎月第1・第3日曜日なので、日程を組むときに確認が必要。LPは盤の状態グレードによって同じアルバムでも価格が数倍変わります。慌てて決めずに、2〜3軒を比べてから買うのが賢いやり方です。

📍 Naverマップで開く

蚕室駅 — ロッテワールドに行くついでに通る場所

わざわざ行く価値はありますか?

わざわざ、というほどではありません。でも蚕室に行く用事があるなら、まず避けて通れません。

面積8,446㎡、店舗数139店。2号線と8号線の蚕室駅改札の外から、ロッテ百貨店、ロッテワールド、ロッテワールドタワー方面へと広がります。売っているのは低価格の衣料がほとんどで、携帯電話店がちらほら。すぐ上の階に超高級ブランドがずらりと並ぶロッテワールドモールがあることを思えば、この落差が妙に楽しい。実際、このフロアには学生や家族連れの姿が多く見られます。

定休日がちょっと変わっています。ほかの商店街が日曜休みなのに対し、毎月第1・第3月曜日が休業日。週末の通行量を逃さないための選択です。

📍 Naverマップで開く


実戦編 — 何を、いくらで

価格帯はどのくらいですか?

地下商店街の存在理由は、ひとえに価格です。同じものが地上より安いのではなく、地上ではそもそも売っていない価格帯のものが、ここにはある。

💰 地下商店街の品目別・体感価格帯(2026年夏現在、値引き前の提示価格)

品目おおまかな価格よく見つかる場所メモ
ベーシックTシャツ8,000〜15,000ウォンカンナム駅、ゴーツーモール、蚕室駅2〜3枚買うと1枚あたりさらに値引き
レディースワンピース20,000〜50,000ウォンゴーツーモール同じデザインが複数の店にある
靴下1,000〜3,000ウォン/足乙支路、永登浦5足セットが基本単位
バッグ・バックパック15,000〜40,000ウォンカンナム駅、永登浦ロータリーブランドロゴなしの無地が無難
キッチン・生活雑貨3,000〜20,000ウォンゴーツーモールまずスーツケースの重さを考えること
中古LP10,000ウォン〜数十万ウォン会賢盤の状態グレードで価格差が大きい
花(1単位)5,000〜20,000ウォンゴーツーモール花市場卸売のため単位売りが基本

地下商店街で初めて買い物する人のための5カ条

  • 値引き交渉はできるけど、強気は禁物。複数買うときに「2つ買ったらいくらになりますか?」がいちばん効く。1点だけ値切ろうとしてもたいてい無理です。
  • 現金があると有利。カードはほぼ使えるけれど、現金価格を別に提示する店がまだ残っています。
  • 交換・返品の条件を先に聞く。商店街の店舗は百貨店基準に従っていません。セール品は交換不可の場合が多いです。
  • 試着室がない店が多い。体に当ててサイズを見極めるのが基本。サイズ表記がフリーサイズのみというケースもよくあります。
  • 地図アプリより出口番号を信じる。地下ではGPSがうまく拾えません。目的の店よりも、最寄りの出口番号を基準に動くほうが断然早い。
まとめると: 地下商店街はソウルショッピングの目的地ではなく、通路です。そもそも通路として造られ、いまも通路として使われている。だからここでまる一日つぶすのはおすすめしません。 そのかわり、移動の途中で、雨の日に、暑いときに、次の約束まで40分余ったときに降りればいい。ソウルの人たちが実際にこの空間を使っているやり方が、まさにそれです。

出典

いまソウルで人気の体験

Klook.com

アフィリエイトリンクを含みます(お支払い金額は変わりません)。 詳細 →