韓国には、食堂なのに肉を売らない焼肉店があります。客が隣の精肉店で肉を自分で選んで買い、食堂には席料と炭代だけを払って焼いて食べる——という仕組みです。これを精肉食堂(チョンユクシクタン)と呼びます。計算書が2枚に分かれるこの方式は、初めて見ると面食らいますが、仕組みを知ってしまえば、ソウルで牛肉を最もリーズナブルに食べる方法のひとつです。このスタイルが最も密集しているのが、城東区馬場洞(マジャンドン)と衿川区禿山洞(トクサンドン)——どちらもかつてソウルの屠畜場があった場所です。

まず結論から

  • 精肉食堂 = 精肉代(精肉店) + 席料(食堂)。席料は通常 1人4,000〜8,000ウォン
  • 馬場洞・禿山洞に集中している理由はシンプルです——かつて屠畜場があった町で、肉の流通網が丸ごと残ったから。
  • 馬場洞は規模と部位の選択肢、禿山洞は価格と地元の雰囲気。精肉店の閉店(午後5〜7時)までに到着してください。

精肉食堂とは、正確にはどんな仕組みですか?

水産市場の刺身食堂を思い浮かべると理解が早いでしょう。鷺梁津(ノリャンジン)で刺身を買って刺身食堂に席料を払うように、精肉食堂も肉は精肉店で買い、食堂は焼く環境だけを販売します。2つの店がまったく別の事業者である場合もあれば、同じ建物で1階が精肉店・2階が食堂として同じ店主が運営している場合もあります。

🧾 計算書が2枚に分かれる理由

項目誰に払うか含まれるものおおよその金額
精肉代精肉店部位・等級・重量(100g単位の時価)その日の時価により変動
席料食堂炭火・焼き網・包み野菜・おかず・タレ・食器・席代1人4,000〜8,000ウォン
(任意)個室利用料食堂個室の使用1人2,000ウォン前後が追加
(任意)食事メニュー食堂テンジャンチゲ・冷麺・ライスなどメニュー表の価格

この仕組みの核心は透明性です。一般の焼肉店では「ロース1人前200gで5万ウォン」というように、肉とサービスがひとまとめで提供されます。精肉食堂では、ショーケースに貼られた100gあたりの時価を見て、部位と量を自分で決めるため、自分が何にいくら使っているかがそのまま見えるのです。スーパーや一般精肉店では取り扱わない生レバー・センマイ・脊髄・ハラミの端(ヤンギッモリ)といった特殊部位をその場で買えるのも、この町ならではのことです。

ただ、誤解もあります。精肉食堂が常に安いとは限りません。席料を人数分加えると、2〜3人で少しずつ食べる場合は一般の焼肉店と総額が大差なくなります。大人数で集まってたっぷり食べるとき、そして等級の良い部位を選ぶときに、その差が開く仕組みです。

注文のコツ

  • 精肉店で「何人で食べるんですけど」と言えば、適正な重量を提案してくれます。大人1人あたり200〜250gが目安。
  • ロース・ヒレ(チェクッ)などの基本部位に、サルチサル(肩バラ)・アンチャンサル(ハラミ)を少し混ぜればまず失敗しません。
  • 肉を買う前にどの食堂に行くかを先に決めてください。精肉店から食堂を紹介してもらえる場合が多いです。
  • カード決済が可能か確認。卸売の性格が強い店舗では現金・口座振込を好むこともあります。

なぜ馬場洞と禿山洞に集中しているのか?

答えはひとつです。どちらの町もソウルの屠畜場があった場所だからです。

ソウルの屠畜場が残した地図

日本統治時代、京城の肉消費が増えるにつれ、都心各所の小規模屠畜場を一箇所に集める必要が生じ、1922年に崇仁洞(スンインドン)に家畜市場が設けられました。これが1958年、清渓川沿いの馬場洞家畜市場へ、1961年には第1市立屠畜場へとつながります。禿山洞には1974年、屠畜場を中心に牛市場が形成されました。屠畜場は住宅地の拡大に伴い嫌悪施設として追いやられ、馬場洞は1998年、禿山洞は2002年に閉鎖されましたが、その周囲に根付いた脱骨・整形の技術者や流通業者、冷蔵倉庫、得意先のネットワークはそのまま残ったのです。

屠畜場が去っても市場が生き残った理由は、屠畜と精肉がそもそも別の仕事だからです。屠畜は地方の大型屠畜場で行われ、馬場洞・禿山洞が担うのは、運ばれてきた枝肉を部位ごとに切り分けて整え、販売する脱骨・整形と流通です。この技術と取引ネットワークは、場所を移すのがはるかに難しい。だから屠畜場が消えて20年以上経った今も、馬場洞はソウル肉類流通の60%以上をいまだに担っています。

1,500余店舗
馬場畜産物市場の店舗数——国内最大の畜産物専門市場
60% +
ソウル市の肉類流通における馬場洞のシェア
200万人
馬場畜産物市場の年間利用者数
1958 → 1998
馬場洞家畜市場の開設から屠畜場閉鎖までの40年

精肉食堂という業態そのものは、意外と最近になって定着しました。もともとこの町の食堂は、早朝から働く市場の商人たちの飯屋でした。屠畜場が地方に移り、競り・輸送のタイムテーブルが変わったことで商人たちの退勤時間が早まり、その空いた時間に肉の焼ける町と呼ばれる夜の客向け精肉食堂ができ始めたのです。現在、馬場洞北門側のグルメ通り(モクチャゴルモク)だけでも20軒ほどが集まっています。

🐂 馬場洞 vs 禿山洞、何が違うのか

馬場畜産物市場(城東区)禿山洞牛市場(衿川区)
始まり1958年 家畜市場 / 1961年 市立屠畜場1974年 屠畜場を中心に形成
屠畜場閉鎖1998年2002年
規模1,500余店舗、国内最大小規模な路地商圏、ソウル第2の牛市場
性格卸・小売兼業、全国配送・飲食店向け納品地元小売中心、近隣住民が常連
価格帯部位・等級の選択肢が広く、ばらつき大全体的に低価格
交通5号線 馬場駅 / 2号線支線 龍頭駅1号線 禿山駅 徒歩圏
こんな人に特殊部位・1++等級を選びたい人観光地感のないローカルな雰囲気を求める人

ソウルっ子が実際に通う精肉食堂 9軒

以下のリストはカナダラ(가나다)順であり、ランキングではありません。ミシュランガイドに掲載された馬場洞のBon et Bread(本&ブレッド)のように、国内外のグルメに広く知られた店はあえて外しました。ここに載せたのは、市場の商人、近隣の会社員、週末に車で訪れる家族連れで賑わう店ばかりです。

馬場洞——規模と選択肢

🔪
テグジプ(대구집)
グルメ通り奥。席料のない牛肉専門店で、ユッケ(生肉)で名高い店。
🔥
馬場洞ハヌチョン(마장동한우촌)
北門側、214席の大型店舗。江原道の白炭を直送。席料1人4,000ウォン。
📞
インセンハヌ(인생한우)
馬場洞郵便局横のブロック。1++等級のみ取扱、電話予約制。隣に公共駐車場。
🏠
ハヌゴヒャン(한우고향)
1978年からこの地を守る老舗。1++等級販売 + 館内炭火食堂。
🥩
ハヌマウル(한우마을)
市場内2階の精肉食堂。価格に対して等級が良く、常連率の高い店。

テグジプ(대구집)

馬場洞グルメ通りの奥にある、正確に言えば精肉食堂ではなく牛肉専門食堂です。そのため席料はかかりません。ユッケで定評のある店で、夜になるとユッケと生肉を頼んで焼酎を飲む商人の客で賑わいます。ロース・ヒレ・ハラミ・チェクッ(ヒレ端)・サルチサル(肩バラ)などの基本部位はもちろん、コッサル(花バラ)・ナギョプサル(落葉バラ)・ヤンギッモリ(ハラミ端)・脊髄といった特殊部位まで揃っており、選ぶのが難しければ盛り合わせが無難です。 城東区 馬場洞 グルメ通り · 2号線 龍頭駅が最寄りです

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馬場洞ハヌチョン(마장동한우촌)

畜産物市場の北門側にある214席規模の大型店舗です。団体の宴会や家族の集まりでよく使われる理由がここにあります。1+・1++等級の韓牛を取り扱い、店で使う炭は江原道の白炭を直接仕入れています。席料は1人4,000ウォンと、この地域では低めの設定で、肉以外にも韓牛カルビタン・ウゴジクッパ・チャドルテンジャンチゲなどの食事メニューがあり、お酒を飲まない連れがいても安心です。 城東区 馬場洞(市場北門方面) · 5号線 馬場駅

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インセンハヌ(인생한우)

馬場洞郵便局の隣ブロックにあり、すぐ横が公共駐車場なので車で来るのに便利です。1++等級だけにこだわる店で、ネイバー評価が安定して高い店ですが、変わっているのは電話予約のみで席を受け付けている点です。ホールの席料は1人4,000ウォン、個室を使うと1人6,000ウォンです。予約なしで行って引き返す人が時々いるので、出発前に必ず電話してください。 城東区 馬場洞(馬場洞郵便局近隣) · おおよそ11:00〜21:50 · 電話予約必須

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ハヌゴヒャン(한우고향)

1978年から馬場洞の牛市場を見守り続けてきた老舗です。全国から集めた1++等級のみを販売する精肉店で、奥に炭火食堂を併設しています。オンラインの宅配注文にも対応しているため、ソウルの人々の中には旧正月・秋夕(チュソク)の贈答用にここを使う家庭も少なくありません。精肉店の陳列と手入れを目の前で見て選べる点で、精肉食堂の原型に最も近い形態です。 城東区 馬場洞 畜産物市場内 · 5号線 馬場駅

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ハヌマウル(한우마을)

畜産物市場の中にある2階建ての精肉食堂です。1階で肉を選び、2階で焼くという典型的な構造で、等級に対して価格が良く、リピーターが多い店です。市場の奥にあるため初めてだと入口を探すのに少し苦労しますが、そのぶん観光客より常連が多いのが特徴です。 城東区 馬場洞 畜産物市場内 · 5号線 馬場駅

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禿山洞——価格と地元の雰囲気

禿山洞は馬場洞よりずっと小規模です。始興大路から凡安路方面へと続く路地に精肉店と食堂が混在し、客のほとんどが衿川区・光明市の住民です。観光案内板も、英語メニューもほとんどありません。それこそが、この町の性格です。

🐄
アムソハンマリ 禿山本店(암소한마리 독산본점)
30年近い牛市場の焼肉店。建物内に無料駐車場があり、家族連れが多い。
🍶
ウシジャン3ホジプ(우시장3호집)
牛市場の路地で生まれ育った地元の店。センマイ・生肉など生ものメニューが強み。
🥢
ヒョプチン食堂(협진식당)
生レバー・センマイ・脊髄・脾臓・ユッケが一度に並ぶ内臓盛り合わせで有名な生肉専門店。
🔥
テウマ本店(태우마 본점)
日本式の七輪で焼くスタイル。ホタテ・エリンギを添える牛肉三合がシグネチャー。

アムソハンマリ 禿山本店(암소한마리 독산본점)

禿山洞の牛市場路地で30年近く営業を続けてきた焼肉店です。この地域では珍しく建物内に無料駐車場があるため、週末になると車で来た家族連れで埋まります。チャドルバギ(霜降りバラ)をはじめとする基本部位が中心なので、特殊部位に慣れていない連れと行くのにも無難です。週末の夜は待ち時間が長くなりがちです。 衿川区 禿山洞 牛市場一帯 · 1号線 禿山駅 徒歩圏 · 建物内無料駐車

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ウシジャン3ホジプ(우시장3호집)

屋号の通り、牛市場の路地で生まれ育った店です。牛肉の品質に対して価格が安いという評判が定着しており、センマイ・生肉といった生ものメニューをきちんと出す数少ない店として数えられています。内装を期待するような店ではありませんが、禿山洞牛市場の本来の雰囲気をもっともよく伝えてくれます。 衿川区 禿山洞 牛市場路地 · 1号線 禿山駅 徒歩圏

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ヒョプチン食堂(협진식당)

牛市場の立地をそのまま活かし、毎日新鮮な国産の生肉を出す店です。看板に号数がついており、現在営業中なのは5号店です。この店の象徴は600gほどの皿に生レバー・センマイ・脊髄・脾臓・ユッケを一度に盛りつける内臓盛り合わせ——ソウルのどこでも見られる構成ではありません。内臓が初めてなら、ユッケから始めることをおすすめします。 衿川区 禿山洞 牛市場 · おおよそ10:00〜22:00 · 年中無休

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テウマ本店(태우마 본점)

禿山洞の牛市場商圏で少し異なる色合いを持つ店です。炭ではなく日本式の七輪で焼き、ホタテとエリンギを一緒にのせる牛肉三合がシグネチャー。牛市場特有の無骨さよりも、整った雰囲気を求める時の選択肢になります。 衿川区 禿山洞 · 1号線 禿山駅 徒歩圏

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初めての人がよく失敗するポイント

行く前に確認すること

  • 時間 — 市場の店舗は早朝4時に開き、午後5〜7時に閉まります。肉を直接選ぶなら、その前に到着する必要があります。食堂だけの利用なら夜10〜11時まで可能です。
  • 定休日 — 市場全体は年中無休に近いですが、店舗ごとに休みの日が異なります。特定の店を狙うなら電話が確実です。
  • 人数 — 席料が人数分かかるため、2人より4人以上のときにお得感が大きくなります。
  • 駐車 — 馬場洞は公共駐車場が複数ありますが、禿山洞は専用駐車場が限られています。地下鉄が便利です。
  • 写真 — 精肉作業エリアでは、まず業者に一声かけてください。この町は職業に対する偏見から、長いあいだカメラを向けられることを避けてきた歴史があります。
一行まとめ: 精肉食堂は「安い店」ではなく「自分が選んだ肉をそのまま焼く店」です。スーパーにはない部位を、ショーケースの時価を見て、好みの重さだけ。その代わりに席料という名の場所代を払います。

データと出典

価格・営業時間は掲載時点の公開情報に基づいており、変動する可能性があります。現地確認後に checked 日付を記入する予定です。

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