まず結論から

  • 韓国で2025年の1年間に廃業した事業者は約97万6,000件。飲食業の廃業率は15.14%で、全体平均(8.64%)の2倍近い。
  • ソウルのカフェの3年生存率は60% —— 飲食業5大業種のなかで最下位だ。廃業リスクは開業24ヶ月目にピークを迎える。
  • 旅行者にとっての実質的な結論:店の年齢こそが安全指標だ。オープンしたての新店カフェは1年後83%、20年続く老舗は94%残っている。

韓国旅行の準備をしていると、誰もが一度は経験する。ブログで見つけた素敵なカフェを保存しておいて、数ヶ月後に地図を頼りに行ってみたらシャッターが下りていた——。あるいは今回の旅で本当に気に入った食堂を「次も来よう」と心に留めておいたのに、次の旅では同じ場所に別の看板がかかっている。

これは運が悪かったわけではない。確率として予測できることだ。そしてその確率は、思っているよりずっと高い。

この記事は、国税庁・中小ベンチャー企業部・行政安全部の公開統計と学術研究を集め、旅行者が実際に使えるかたちに再計算したものだ。


韓国では1年に飲食店・カフェがどれだけ消えるのか

2025年、わずか1年の間に全国で約97万6,000件の事業者が店をたたんだ。 前年(100万8,000件)より3万2,000件減ったとはいえ、いまだ100万件に迫る数字だ。全体の廃業率は8.64%で、前年より0.40ポイント下がった。

問題は、飲食業が平均よりはるかに厳しいことだ。

15.14%
2025年 飲食業の廃業率(全体平均 8.64%)
107,000軒超
2024年1年間に閉店した飲食店 —— 過去最多
60%
ソウル カフェの3年累積生存率 —— 飲食5大業種で最低
24ヶ月
カフェの廃業リスクが最も高まる時期

2024年は韓国外食産業史の節目だった。16年ぶりに、閉店した飲食店が新規開店した店を上回ったのだ。 廃業が開業より5,374軒多く、こうした純減少は2008年以来はじめてのことだった。一般飲食店の廃業率は10.4%で2005年以降の最高値、ソウルはこれを上回る13%だった。

カフェも同じ時期に潮目が変わった。コーヒー飲料店の事業者数は2025年第1四半期に9万5,337件となり、1年前より743件減少。2018年に統計の集計を始めて以来、はじめてカフェの数が減ったのである。コロナ禍でも増え続けていた業種だった。

この反転がいかに急激かは、それまでの軌跡を見ればわかる。コーヒー専門店は2018年の4万5,203件から2024年には9万6,080件へと、6年で2倍以上に増えた。 その膨張が2025年にはじめて止まったのだ。同じ四半期に韓国料理店は484件、中華料理店は286件減り、ホフ(ビアパブ)は1年で1,802件が姿を消して2万2,493件へと急減した。

なぜこうなったのか: 中小ベンチャー企業部の集計によると、2025年の廃業理由の第1位は事業不振で全体の50.4%、小商工人の6大業種では55.7%にまで上がる。廃業を経験した小商工人1,500人への実態調査でも、70.9%が「収益性悪化・売上不振」を理由に挙げ、その原因として「内需不振による顧客減少」を挙げた回答が62.5%だった。廃業を決意した時点の平均負債額は約853万円だった。

今回行ったあのカフェ、次に行ったときも残っているか

ここからが旅行者にとって本当に必要な部分だ。「韓国全体で何軒が潰れるか」という数字はニュースの種にすぎず、自分のウィッシュリストに入っているあの店の運命を教えてはくれない。

そこで私たちは、公開された生存率データを条件付き生存確率に再計算した。問いのかたちをこう変えたのである。

「いま営業中で、開業してN年経った店が、これからMヶ月後も開いている確率は?」

基準となるデータは、嘉泉大学校チェ・インス教授チームが行政安全部の地方行政認可データからソウル市カフェの認可記録3万9,898件(2010年1月〜2025年11月)のうち2万8,590店舗を抽出して分析した研究だ。この研究は、ソウル飲食業5大業種の3年累積生存率廃業リスクが開業24ヶ月目にピークを迎えるという二つの事実を提供している。この二つのアンカーに対数ロジスティック生存曲線をあてはめ、以下の表を作成した(計算方法は記事の後半ですべて公開)。

カフェ —— いま営業中の店が今後も残っている確率

☕ ソウルのカフェ基準。横軸は「いまからどれだけ後に再訪するか」

開業年数3ヶ月後6ヶ月後1年後2年後3年後
6ヶ月(オープン直後)96%92%84%70%58%
1年96%91%83%69%58%
3年96%91%84%71%61%
5年96%93%86%75%66%
10年97%95%90%82%75%
20年(老舗)98%97%94%89%84%

韓国料理店 —— 同じ計算

🍚 ソウルの韓国料理店基準。カフェよりも全体的に安全だ

開業年数3ヶ月後6ヶ月後1年後2年後3年後
1年97%94%88%78%69%
3年97%94%88%79%71%
5年97%95%90%81%73%
10年98%96%92%85%79%
20年(老舗)99%97%95%91%86%

この表で読むべきことはただ一つ。横に見れば時間とともに急激に下がり、縦に見れば古い店ほど安全だ。

1年後にまた行くつもりなら、20年続く老舗は94%の確率でその場所にある。けれどSNSで話題になったばかりの開業1年の新店カフェは83%。6軒に1軒は消えている計算だ。

ブログで見たカフェ情報、何年前まで信じられる?

これが旅行者が最もよく直面する実戦的な場面だ。検索で見つけた「ソウル カフェ おすすめ」記事には、たいてい書かれた当時にちょうど話題になっていた新店が入っている。その記事が何年前のものかによって、いま残っている確率はこう変わる。

📅 記事の執筆時点で開業1年だった店基準 —— いまも営業中である確率

記事が書かれた時期カフェ韓国料理店
6ヶ月前91%94%
1年前83%88%
2年前69%78%
3年前58%69%
5年前42%55%

2年が分かれ目だ。 2年前のカフェ紹介記事に載っていた店は、3軒に1軒がすでにない。5年前の記事なら半分以上が消えていると考えたほうがいい。

旅行ブログやYouTube動画に日付がなかなか表示されない理由もここにある。古いコンテンツほど再生回数は積み上がっているが、情報の正確さは反比例で落ちていく。

実践ルール

  • 記事・動画の日付が1年以内なら概ね信じてよい(85〜90%)
  • 1〜2年なら地図で営業状況だけ再確認
  • 2年以上ならそのリストは参考程度に。代替候補を一緒に用意する
  • 日付がまったく表示されていない記事は古い可能性が高い

なぜカフェがいちばん早く消えるのか

ソウル飲食業5大業種の3年累積生存率を並べてみると、カフェの立ち位置がはっきりする。

📊 ソウル飲食業 3年累積生存率(嘉泉大学校研究、2010〜2025 認可データ基準)

業種3年生存率100軒中消える数
韓国料理70%30軒
洋食68%32軒
ホフ・チキン65%35軒
粉食(軽食)63%37軒
コーヒーショップ(カフェ)60%40軒

理由は構造的なものだ。カフェは参入障壁が低く開業しやすいぶん、競争も最も激しい。 特別な調理技術や資格がなくても始められるという長所が、そのまま過剰供給につながる。

そして研究は、旅行者にとって有益な二つ目の事実を教えてくれる。廃業リスクは立地よりもブランド規模に大きく左右される。

同じ商圏のなかでもブランドタイプによる生存率の差は最大33ポイントだった。一方、同じブランドがどの商圏にあるかによる差は約5ポイントにとどまった。大手・低価格フランチャイズが最も長く生き残り、個人経営の小規模カフェが最も短かった。

旅行者の立場で裏返して読むとこうなる。私たちが旅先でわざわざ探して回る感性たっぷりの個人カフェこそが、統計的には最も危うい側だ。反対に、どこにでもあって素通りしがちな低価格フランチャイズは、次に行ってもほぼ確実にそこにある。

廃業リスクが開業24ヶ月目に最高点を迎えるのも同じ文脈だ。通常2年単位の賃貸借契約が初めて満了する時期、初期資本が尽きる時期、そしてオープン当初の話題性が切れる時期が重なる。研究チームが18ヶ月を早期警告の基準として提案した理由だ。


では、どんな店が長く続くのか —— 訪問前に読む5つのサイン

統計を個別の店に当てはめるときに使えるサインだ。

長く続く店のサイン

  • 営業年数が5年以上 —— 最も強力な単一指標。24ヶ月のヤマをすでに越えた証拠
  • 看板・インテリアが流行から少し外れている —— トレンドに全振りしたコンセプトほど、トレンドとともに消える
  • メニューが狭く明確である —— ひとつのものを長く出し続ける店が生き残る
  • 平日の昼にも客がいる —— 週末・SNS集客だけで回っている店はブームが終われば一緒に終わる
  • 最近のレビューがコンスタントにある —— レビューが特定の時期に集中していて、最近が空っぽなら危険信号

逆に要注意のサインはこうだ。開業1〜2年目、強い流行コンセプト(特定のキャラクター・色・小物に依存)、賃料高騰エリア、そしてInstagramの最終投稿が数ヶ月前のもの。

最後の項目はとくに実用的だ。韓国のカフェや飲食店の大半はInstagramを運営しており、閉店直前には地図情報よりもInstagramの更新が先に止まる。


行く前に3分で確認する方法

訪問前のチェック手順

  • ① ネイバー(Naver)地図で検索 —— 韓国で最も正確な営業情報ソース。Googleマップより更新が早い。店名がまったく出てこなければ閉店の可能性が高い
  • ② 最新レビューの日付を確認 —— 最も新しいレビューが3ヶ月以上前なら疑う。1年以上前ならほぼ確実に閉まっている
  • ③ Instagramの最終投稿 —— 2ヶ月以上止まっていれば要注意
  • ④ 臨時休業・定休日を確認 —— 韓国の飲食店は月曜定休が多く、夏休みシーズン(7月末〜8月初め)や旧正月・秋夕(チュソク)の連休に数日間休む。閉店ではなく休業の可能性もある
  • ⑤ 代替候補を1軒保存 —— 同じエリアで徒歩5分以内の店を。これが実際いちばん効く

ネイバー地図に反映されていない閉店もある。地図情報は経営者や利用者の報告で更新されるため、ひっそりと店をたたんだ小規模店は数ヶ月そのまま残っていることもある。レビューの日付が地図の表示より正直な指標である理由だ。


この確率はどう計算したのか(計算方法を公開)

計算方法と限界

モデル: 対数ロジスティック生存関数 S(t) = 1 / (1 + (t/α)^β)。危険率が一度上がってから下がる形状で、「開業24ヶ月でリスクがピーク」という観測と整合する。

アンカー2点: ① 3年累積生存率(カフェ60%、韓国料理70% —— 嘉泉大学校研究) ② 危険率ピーク = 開業24ヶ月(同研究)。この2点からα・βを逆算した。カフェ α=4.02・β=1.38、韓国料理 α=5.89・β=1.26。

表中の数字: 条件付き生存確率 S(年齢+期間) / S(年齢)。「すでにN年生き延びた店がMヶ月さらに生き延びる確率」である。

モデルが示唆する中央値寿命: カフェ 4.0年、韓国料理店 5.9年。業界でよく引用される「カフェの平均営業期間 約3年」より長く出ているが、後者はすでに閉店した店だけを数えた値であるため短く出るのが当然だ。

正直な限界: このモデルが示唆する年間廃業率はカフェ約11.1%だ。国税庁基準の2025年飲食業廃業率15.14%より低い。二つの統計は集計単位が異なるためだ —— 国税庁は事業者登録単位(譲渡・名義変更・超短期廃業を含む)、このモデルの基盤である認可データは店舗単位である。統計庁の企業生滅行政統計で見ると、宿泊・飲食店業の5年生存率は20.5%まで下がる。つまり、上の表の確率は楽観的な側に近いと見るのが安全だ。

適用範囲: ソウルのデータに基づくため、地方都市にはそのまま適用しにくい。個別の店の実際の運命はこの確率と無関係でありうる —— 確率は多数の店をまとめて見たときだけ意味を持つ。


結論 —— 旅行計画にこれをどう活かすか

数字をすべて取り去って残る実用的な結論は、次の3行だ。

  1. どうしても行きたい一軒があるなら、古い店を選べ。 営業年数10年以上なら、次の旅でも90%以上の確率でその場所にある。
  2. 新店カフェは今回の旅で行け。 「次に来たら行こう」は、統計的に6回に1回は守れない約束になる。
  3. ウィッシュリストには必ず代替候補を一緒に保存しろ。 とくに2年以上前のおすすめ記事から拾ってきた店ならなおさらだ。

韓国の外食市場が目まぐるしく変わることは、悪い知らせばかりではない。消えるのと同じ数だけ新しく生まれ、だから数年ぶりに来たソウルはいつも初めて見る顔をしている。ただ、その変化のなかで本当に守りたい一軒があるなら、次ではなく、今回行くのが正しい。

データと出典

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