まず結論から

  • 韓国のSNSはカカオトークから数えねばならない —— 月間利用者数4,770万人。人口の90%を超える。
  • 純粋SNSの1位はインスタグラム(2,808万人)。2位がBAND(1,559万人)という国は、世界で韓国だけだ。
  • Facebookは事実上終わった。747万人でBANDの半分。代わりにThreads・Pinterestが20%台で成長している。
  • 世代差が時間に表れる —— Z世代は1日55分、ベビーブーム世代は22分。

地下鉄2号線、夕方7時。座っている8人のうち7人がスマホを手にしている。そのうち5人の画面では、縦型の短い動画が次々とスクロールされている。残りの2人は、黄色い吹き出しが行き交う画面を見つめている。

この光景は印象ではなく、統計に近い。韓国は人口に対するSNSアカウント数が95%を超える、地球上で最も密に繋がった国のひとつだ。ところが、「韓国人はどんなSNSを使っているのか」と尋ねると、答えは単純ではない。調査機関ごとに順位が異なり、10歳の年齢差で使うアプリが分かれるからだ。

95.4%
人口比SNSアカウント数(2025年10月、Kepios推計)
4,770
カカオトーク月平均利用者数(2026年1〜4月)
4.25
1人あたり同時に使うSNSの数
82.5%
ショート動画を毎日見るネットユーザー比率(2026 NPR)

なぜ韓国のSNSランキングはカカオトークから始まるのか?

カカオトークを抜きに韓国のソーシャルメディアを語るのは不可能だからだ。 海外基準で見ればカカオトークはメッセンジャーであって、SNSではない。しかし韓国でカカオトークは、プロフィール写真とステータスメッセージで近況を知らせ、オープンチャットで知らない人と趣味を共有し、ギフト機能で誕生日を祝う空間だ。機能だけを見れば、すでにソーシャルネットワークそのものである。

数字がその地位を物語る。2026年1〜4月の月平均利用者数は4,770万人。韓国の人口が約5,100万人だから、新生児と超高齢者を除けば事実上全員だ。別の調査ではカカオトーク利用率は98.9%と出ている。

📱 韓国人が最も使うSNSアプリ —— 2026年1〜4月 月平均利用者数、Wiseapp·Retail推計

順位アプリ月平均利用者数特性
1カカオトーク4,770万人メッセンジャー兼国民的プラットフォーム
2インスタグラム2,808万人写真・リール、20〜30代中心
3BAND1,559万人集まり・サークル、40代以上
4TikTok943万人ショート動画、10代に強い
5ネイバーカフェ904万人関心事コミュニティ
6X(旧Twitter)795万人ファンダム・トレンド
7Pinterest772万人画像スクラップ
8Facebook747万人残存ユーザー層
9Threads729万人テキストベースの新興勢力
10Discord680万人ゲーム・コミュニティ

この表で外国人が最も驚くのは第3位だ。BANDはネイバーが作った非公開型グループアプリで、学校の同窓会・登山サークル・マンション自治会・教会の集まりがここに集まっている。Facebookグループが担っていた役割を、韓国ではBANDが丸ごと持っていった。その結果、FacebookはBANDの半分にも満たない第8位に転落した。

韓国でFacebookが死んだ理由

一つの事件ではなく、三つの要因が重なった。2010年代後半に20代がインスタグラムへ大挙して移動し、中高年層のコミュニティ機能はBANDが吸収、ニュースやトレンドの消費はネイバーとカカオのポータルがすでに掌握していた。Facebookの入り込む余地が残っていなかったのだ。

調査機関ごとに順位が異なる理由は?

同じ質問を三つの方式で尋ねているからだ。 この違いを知らないと、記事ごとに異なる数字に混乱してしまう。

📊 3つの測定方式と結果の違い

方式代表調査測定対象Instagramの結果
アプリパネル実測Wiseapp·Retail実際にアプリを開いた人数2,808万人
広告リーチ推計Kepios / DataReportal広告を配信できるアカウント数2,560万人(49.5%)
アンケート回答韓国言論振興財団「使っている」と答えた割合38.6%

三つの数字はすべて正しい。アプリをインストールしているだけでROM専の人はパネル調査では捕捉されるが、「私はインスタグラムをやっている」とは答えない。逆にアカウントを2つ持っている人は、広告リーチ推計では2人と数えられる。

韓国言論振興財団 2024 SNS利用者調査: 韓国人は平均 4.25個のSNSを同時に使っている。一つを選んで使うのではなく、用途別にアプリを使い分ける構造だ。

10歳の年齢差で使うアプリが分かれる

全年代で1・2位は揺るがない。カカオトークとYouTubeだ。面白いのは第3位からである。

👥 年齢層別 第3位プラットフォーム —— 韓国言論振興財団 2024 SNS利用者調査

年齢層第3位プラットフォーム利用率
19〜29歳インスタグラム80.9%
30代インスタグラム70.7%
40代インスタグラム・BAND混在
50代BAND40.6%
60代BAND31.1%

同じ国の中で、20代の80.9%が使うアプリを60代はほぼ使わず、60代の3分の1が毎日開くアプリを20代は名前だけ知っている。情報通信政策研究院(KISDI)の分析も同じ方向を指している。Z世代とミレニアル世代はインスタグラムへの偏りが半数を超えて集中している一方、X世代とベビーブーム世代は複数のプラットフォームに分散している。

時間で見ると格差はさらに鮮明だ。Z世代の1日平均SNS利用時間は55分、ベビーブーム世代は22分。2.5倍の差がある。

この違いが現実に見える瞬間

  • カフェで料理写真を撮る人は大抵30代以下だ。インスタグラムに投稿するだろう。
  • 登山道の頂上で集合写真を撮る中年グループはBANDにアップする。外部からは見られない。
  • 韓国人の友人に連絡先を尋ねると、十中八九カカオトークのIDを教えてくれる。メールアドレスや電話番号ではない。

韓国人はSNSを1日にどれくらい見ているのか?

プラットフォームではなく、ショート動画というフォーマットが時間を奪っていった。

Nasmediaが2026年2月にネットユーザー2,000人を調査した結果、82.5%がショート動画を毎日見ると答えた。そのうち60.5%は1日に3回以上アプリを開く。一度見始めると平均21分が過ぎるという調査もある。短い動画1本が15秒なら、一度座っただけで80本近くをスクロールしている計算だ。

🎬 ショート動画プラットフォーム別利用率 —— YouTubeショートの独走

プラットフォーム利用率特徴
YouTubeショート75%全年代で均等
Instagramリール43%10〜30代で53〜71%
TikTok20%10代中心
ネイバークリップ17%国内スポット・グルメ情報に強い

オープンサーベイの調査ではYouTubeの1日平均利用時間は61分と出た。インスタグラムはリールの比重が大きくなり、「軽くて短いコンテンツ」へと消費スタイルそのものが移行しつつある。

数字の読み方

1日60分は、1ヶ月で30時間、1年で15日になる。韓国人の平均はYouTubeだけに毎年半月を費やしている計算だ。ここにインスタグラム・カカオトーク・TikTokが別に加わる。


2026年に実際に伸びているアプリは別にある

利用者数ランキングはなかなか変わらない。成長率を見ると、別の絵が見えてくる。

📈 2026年 成長率上位SNSアプリ —— Wiseapp·Retail

アプリ成長率概要
Zeta48.1%AIキャラクターと会話する国産アプリ
TikTok Lite46.8%データ・容量を抑えた軽量版
TikTok25.9%本体も同時に成長
Pinterest23.4%インテリア・ファッションの参考需要
Threads21.0%テキストベース、25〜44歳で上昇

1位がZetaという点が2026年の特徴だ。人間ではなくAIキャラクターと会話するアプリがソーシャルアプリの成長率1位になったのは、数年前なら想像しがたい結果だった。

Threadsの台頭も目を引く。オープンサーベイの調査によると、25〜44歳で利用上昇率が際立っていたが、肝心の利用者たちがThreadsに対して抱くイメージは「意識高い系で、やたらと口出ししてくる人」だった。使いながら嫌っている——韓国SNS特有の愛憎がここにも見える。

SNSが検索を代替している

韓国の検索市場は依然としてネイバーが約62%で1位だ。しかし若い層の情報探索はすでに検索窓の外で起きている。

62.6%
ショート動画を見た後に商品情報を検索する
24.7%
ショート動画視聴者の4人に1人はその場で購入
87.4%
生成AIを使ったことのあるネットユーザー比率
88%
AI生成コンテンツの見分けが難しいと答えた比率

生成AIを使ったことがある人のうち64.1%が情報検索目的で使うと答えた。キーワードを入力していた習慣が、文章を投げかける習慣に移りつつある。同時に、回答者の88%はAIが作ったコンテンツを見分けるのが難しいとし、AIで生成したレビューはブランド信頼を損ねるという結果も出た。

だからいま、韓国の情報フローはこう整理できる。発見はショート動画で、確認はネイバーで、予約はカカオトークで起きる。三つの段階がそれぞれ別のアプリに分かれており、その間を1日に何十回も行き来している。

韓国を旅行中なら知っておきたいこと

  • Googleマップに出てこない店が多い。同じ店名をネイバーマップに韓国語で入れればほとんど出てくる。
  • Instagramで位置タグ検索すれば、その店のここ1ヶ月の雰囲気が写真で見られる。ブログレビューより速い。
  • 韓国人が勧める飲食店は大抵ネイバークリップかInstagramリールで見たところだ。聞けばリンクを送ってくれる。
  • 連絡先交換はカカオトークのQRコードが一番早い。アプリは英語に対応している。

整理すると、韓国のソーシャルメディア地形は一つの巨大な広場ではない。カカオトークという公共インフラの上に、世代別に分かれた部屋が乗っている構造に近い。20代の部屋はインスタグラム、60代の部屋はBAND、その二つの部屋を繋ぐ廊下がカカオトークとYouTubeだ。

そしてその廊下を、いまショート動画が流れている。地下鉄で見た5つの縦画面は、統計上もっとも正確な韓国の肖像だったというわけだ。

データと出典

  • Wiseapp·Retail —— 2026年1〜4月 SNSアプリ月平均利用者数・成長率(Android+iOSパネル推計)
  • DataReportal · Kepios, Digital 2026: South Korea —— SNSアカウント数、プラットフォーム別広告リーチ、インターネット普及率(2025年10月基準)
  • 韓国言論振興財団 —— 2024 SNS利用者調査(プラットフォーム別利用率、年齢層別第3位、平均利用数)
  • 情報通信政策研究院(KISDI) —— 韓国メディアパネル調査ベース 世代別SNS利用状況(利用率推移、世代別利用時間)
  • kt Nasmedia 2026 NPR —— ネットユーザー2,000人調査(ショート動画視聴頻度、購買転換、生成AI利用)
  • オープンサーベイ SNSトレンドレポート 2025 —— 15〜59歳 3,000人(プラットフォーム別利用時間、Threads認識、AIコンテンツ信頼度)
  • 反論報道ドットコム —— ショート動画プラットフォーム別利用率・連続視聴時間
  • TBWA Korea —— 国内検索エンジンシェア
  • 数値基準時点:2026年8月。調査機関・測定方式(アプリパネル・広告リーチ・アンケート)により、同じプラットフォームでも数値が大きく異なる。

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