まず結論から

  • 1位は日本、しかも圧倒的に。 2025年は946万人。海外へ出た韓国人の3人に1人が日本へ向かった。
  • 2位・3位はベトナム(433万人)と中国(316万人)。 上位3カ国で全体の半分を超える。
  • 遠い国ほど減少した。 アメリカ・タイ・フィリピン・マレーシアは2019年水準を回復できなかった。フライト3時間が事実上の境界線である。
  • そのぶん現地でより多く使う。 1人あたり支出は過去最高の1,104.8ドル。浮いた航空運賃が食費とショッピングへと向かった。

金曜の夕方、仁川(インチョン)空港第1ターミナルの出国ゲートに立つと、この国の旅行習慣が一目でわかる。キャリーケースが小さい。20インチ、機内持ち込みサイズ。会社帰りとおぼしきシャツ姿が混ざり、ゲート前の電光掲示板には福岡・大阪・ダナン・上海が30分間隔で映し出される。そのほとんどが、日曜の夜には同じ場所へ戻ってくる人たちだ。

2025年、1年間で2,955万人の韓国人がこうして旅立った。人口5,100万人だから、算術的に国民1.7人に1回の割合である。過去最高の記録であり、パンデミック以前の2019年よりも2.9%多かった。

これだけの人がどこへ向かったのかを数えてみると、韓国人が旅に何を求めているかがかなり正直に浮かび上がってくる。

2,955万人
2025年 韓国人海外旅行者数(過去最高)
32%
そのうち日本へ向かった割合 — 3人に1人
+69.4%
訪日韓国人、2019年比 増加率
$1,105
1人あたり海外支出額(2019年 $1,019)

韓国人が最も多く訪れる国はどこか?

日本である。しかも2位との差は2倍以上だ。 2025年に日本を訪れた韓国人は945万9,605人。2位のベトナムが433万人、3位の中国が316万人だから、日本一国で2位と3位の合計を上回る。

🇯🇵
日本 946万人
フライト1〜2時間、時差ゼロ、円安。週末1泊2日が成り立つ唯一の海外。2019年比 +69.4%。
🇻🇳
ベトナム 433万人
ダナン・ニャチャン・フーコックのリゾートパッケージ。5時間のフライトで行ける最も安いリゾート。前年比 -5.2%で停滞。
🇨🇳
中国 316万人
ビザ免除施行後、前年比 +63.9%。上海・青島(チンタオ)への週末旅行が急増し、ベトナムを追撃中。
🇺🇸
アメリカ 165万人
4位だが2019年比 -28.3%。留学・親族訪問の需要が支える構造で、純粋な観光の割合はさらに低い。

🌏 2025年 韓国人が多く訪れた海外渡航先 — 韓国観光公社集計(各国観光庁発表の入国統計基準)

順位韓国人訪問者数前年比2019年比
1日本945万9,605人+7.1%+69.4%
2ベトナム約433万1,000人-5.2%+0.9%
3中国315万8,091人+63.9%
4アメリカ164万7,142人小幅減-28.3%
5タイ155万5,227人-17.7%-17.8%
6〜10フィリピン・台湾・香港・シンガポール・インドネシアほぼ減少-10 〜 -32%

いくつか補足が必要だ。中国は自国政府が国籍別の訪問者数を公式発表していないため、韓国法務省が航空機の最初の到着地基準で推計した数字である。6〜10位は各国観光庁の集計時点がまちまちで、資料によって順位が若干異なる。確かなのは方向性だ — 上位3カ国だけが増え、それ以外はおおむね減った。

「出国者」と「訪問者」は違う数字である

2,955万人は韓国を離れた出国者の数であり、946万人は日本が集計した入国者の数である。一度出国して二カ国を巡るケースや、経由のみのケースが混在するため、渡航先ごとの数字をすべて足しても総出国者数とは正確に一致しない。ランキングを見るときは絶対値よりも割合と増減率を見るほうが正確だ。


なぜ日本なのか?

韓国人にとって日本は「海外」というより近くの地方に近い。この表現が誇張でない理由が三つある。

第一に、距離。 ソウルから福岡まで1時間20分である。ソウルから済州島(チェジュド)が1時間5分だから、事実上国内線と同じ時間だ。大阪1時間50分、東京2時間20分。金曜の夜に出発して日曜の夜に戻る旅程が無理なく成立する国は日本だけである。

第二に、時差がない。 韓国と日本は同じ標準時を使っている。時差ボケという概念そのものがないから、月曜の出勤に支障が出ない。短い旅行において、これは思った以上に大きな変数だ。

第三に、為替レート。 ウォンに対する円安が数年続き、日本の物価が相対的に安くなった。ソウルで食べるラーメンより大阪で食べるラーメンのほうが安い時期があったほどだ。

2025年に日本を訪れた外国人の中で最も多い国籍が韓国人だった。中国を抜いて1位である。人口5,100万人の国から946万人が訪れたのだから、計算上韓国人の5人に1人がその年に日本へ行ったことになる。

その結果、旅行そのものの性格が変わった。最近の韓国人の日本旅行は、東京・大阪の観光地巡りより街単位へと降りていく。北海道の旭川、沖縄の宮古島といった小都市の検索量が前年比で数倍に跳ね上がった。スーパーマーケットやコンビニ、地元の食堂を中心に旅程を組む人が増えている。有名なものを見に行くのではなく、誰かの日常をしばし生きてみるほうへ、と言っていい。

ソウルでこの流れを読む方法

ソウル市内に日本式の居酒屋・ラーメン店・アニメグッズショップがとりわけ高密度で軒を連ねている理由がここにある。毎年900万人が行き来する国の趣味嗜好は、結局のところ本国の商業エリアへと還流するのだ。二村洞(イチョンドン)リトル東京のように、まるごと一つの街がそうして形成された場所もある。


中国はいかにして3位まで浮上したか?

2025年に最もドラマチックに動いた国は中国である。前年比63.9%増。 他のどの渡航先もこのスピードを出せなかった。

理由は単純だ。中国が韓国人に対してビザ免除入国を開放した。ビザ申請の手続きと費用が消えると、即座に需要が跳ねた。とくに仁川から1時間半で着く青島、2時間余りの上海が「週末に行ける場所」リストに新たに加わった。

2026年上半期もこの流れは続いた。中国行きが前年同期比で24.2%伸び、いまだ最高の増加率を記録している。一方、同じ期間のベトナムは -3% だった。

📈 2026年上半期(1〜6月)韓国人海外旅行 — 前年同期比

区分2026年上半期前年比
海外旅行者全体1,496万1,910人+2.7%
日本567万5,100人+18.6%
中国+24.2%
ベトナム213万1,486人-3.0%

全体の増加率は2.7%なのに、日本は18.6%、中国は24.2%だ。パイが大きくなっているのではなく、パイの中で渡航先が移動している。


東南アジアとアメリカはなぜ落ち込んだのか?

上位の成長だけを見ると海外旅行が全方位で増えているように思えるが、ランキングの下のほうはまったくの逆だ。2019年と比較すると次のとおりである。

基準線はフライト時間だ。 3時間を超えるとおおむね減り、その内側ならば増えた。航空運賃がパンデミック以前の水準に戻りきっていない状況で、旅行者が真っ先に削った項目が移動距離だった。

タイには別の変数も重なった。2025年夏、カンボジアで韓国人を標的とした拉致・監禁事件が大きく報道され、隣国であるタイまで旅行マインドが冷え込んだ。前年比17.7%減は主要渡航先のなかで最大の落ち込みであり、長く守ってきた順位をアメリカに明け渡した。

一方で、ランキングに新しく登場した国もある。インドネシアはLCCがジャカルタ・バリ・マナド線を増便したことで、前年比14.3%増の49万6,862人を記録し、10位圏に食い込んだ。マレーシアが抜けた席である。結局のところ、路線ができれば人は行き、路線がなければ国はリストから消える。


近くへ行く代わりに、より多く使う

距離を縮めたからといって金を節約したわけではない。むしろ逆だ。

2025年の韓国人の1人あたり海外支出額は1,104.8ドルで、2019年(1,019.0ドル)より増えた。年平均為替レートが1ドル=1,423.3ウォンまで上がったため、ウォン換算の支出は2019年比で30%以上急増した。総支出額は326億5,000万ドル。

支出の内訳をひもとくと、方向性は明らかだ。

70%台
海外旅行中のグルメ活動の割合(2019年 56.5%)
37.1%
ショッピングの割合(2019年 33.6%)
$326.5
2025年 韓国人海外支出総額
まとめるとこういうことだ。航空運賃で浮かせた金を、現地の飲食店や商店で使う。遠くへ行って多くを見る旅行から、近くへ行ってよく食べる旅行へと重心が移った。

これは韓国国内の旅行文化ともぴったり重なる。ソウルの人の週末の計画がたいてい「どこを見ようか」ではなく「何を食べようか」から始まるのと同じ性向だ。国境を越えても習慣は変わらない。


ところで、逆方向はどうなのか?

同じ年、韓国に入った外国人は1,893万人だった。こちらも過去最高の記録で、2019年より8.2%多い。

🔄 2025年、行き交った人々 — 出国した韓国人 vs 入国した外国人

方向人数1人あたり支出
韓国人 出国2,955万人$1,104.8
外国人 入国1,894万人$1,155.8

出ていった人が入ってきた人より1,061万人多い。その差が観光収支107億6,000万ドルの赤字として表れ、3年連続で100億ドルを超えた。

訪韓外国人の国籍構成も興味深い。中国548万人、日本365万人、台湾189万人、アメリカ148万人の順である。韓国人が最も多く訪れる国(日本)の人々が、韓国を二番目に多く訪れている。互いが互いの週末旅行先というわけだ。

この記事を読んでいるあなたがソウルにいるなら

いまソウルですれ違う韓国人のほとんどはあなたの国に行ったことがあるか、もうすぐ行く人だ。日本から来たのなら、相手は昨年大阪にいた確率が5分の1。台湾や香港から来たのなら、ソウルのカフェやコンビニがあなたの街のそれらを参考にした可能性が高い。韓国の旅行嗜好と都市風景は、この往復のなかで絶えず互いを模倣しながら作られている。


韓国人の旅行嗜好、一行で

数字をすべて取り去ったあとに残る絵は、こうだ。

近くへ、頻繁に、短く。ただし食には糸目をつけない。

2週間のヨーロッパ一周より、3泊4日の福岡を三度選ぶ。ランドマークの前で写真を撮るより、地元の人が列をなす食堂を見つけ出すことに時間を使う。お土産物屋より、街のスーパーマーケットで長く過ごす。

そしてその感覚のまま、自分の街を消費する。ソウルで何が流行り、何が廃れるのか、なぜ路地ごとにカフェが生まれては消えるのかを理解するには、この習慣を知ってから見るほうが早い。

データと出典

渡航先別訪問者数は、各国観光庁・観光部が発表した韓国人入国者集計を韓国観光公社が取りまとめた値である。中国は公式の国籍別集計がないため、法務省の航空機最初到着地基準の推計値を用いた。国家別の集計基準・時点が異なるため、合計は総出国者数と一致しない。

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