まず結論から
- ブルーエレファントは2019年にネット眼鏡店として始まり、2025年に売上507億ウォン(前年比+69%)を記録した韓国アイウェアブランド。価格はほとんどが5万ウォン前後。
- 2026年2月、創業者で当時の代表がジェントルモンスターの製品形状を模倣した疑いで逮捕された。未登録デザインの模倣で逮捕された国内初のケース。7月に保釈され、公判は進行中——有罪はまだ確定していない。
- それでも事業は拡大した。代表辞任→専門経営人体制への移行→8月にグローバルPEのアファーマ・キャピタルから1000億ウォンを調達(企業価値は約4000億ウォン)。店舗は韓国・日本・米国を合わせて30店舗ほど。
明洞や弘大を歩けば、青いゾウのロゴを掲げた店を最低1軒は通り過ぎるはずだ。中はたいてい外国人観光客でいっぱいで、レジの前には行列ができている。サングラスが1本5万ウォン前後。インスタに載せる写真では、30万ウォンのものと見分けがつきにくい。
その「見分けがつきにくい」という点が、このブランドを法廷へ連れていった。
6年で何が起きたのか?
ブルーエレファントは2019年1月、ネット専業のメガネブランドとしてスタートした。初期は眼鏡店を通さず自社チャネルだけで売り、2023〜2024年から聖水ソウルの森を皮切りに、漢南・延南・弘大・北村・島山公園・明洞へと店を広げていった。
成長のエンジンは明快だった。価格×空間×観光客。普通の眼鏡店よりずっと洒落た内装の店、財布に優しい価格、そしてYouTubeやTikTokで広まった「韓国で買うべきもの」リスト。外国人観光客の間ではお土産に近い存在になった。
では、なぜ代表が逮捕されたのか?
結論から言うと、競合ジェントルモンスターの製品形状をそのまま真似て作り販売した疑い(不正競争防止法違反)で、2026年2月に裁判所が逮捕状を発付した。
始まりは2024年12月。ジェントルモンスターを運営するIICOMBINED(アイアイコンバインド)が、自社製品のデザインと店舗空間のコンセプトを盗用されたとして刑事告訴した。その後、特許庁の技術デザイン特別司法警察と大田地検特許犯罪捜査部が捜査に入った。
捜査で明らかになった最も印象的な点は、デザイン担当者がいなかったことだ。検察の調べによれば、ブルーエレファントには独自のデザイン開発組織がなく、ジェントルモンスターの製品写真に自社ロゴを合成し、色と数量だけを記した生産指示書を海外メーカーに送っていたとされる。設計図面も、レンダリングも、詳細な寸法もなかった。他人の製品写真が事実上の設計書だったわけだ。
容疑の範囲は製品にとどまらなかった。メガネケースのデザイン、そして2024年にオープンした明洞フラッグシップの空間コンセプトにまで及んだ。ジェントルモンスターが2021年に発表したケースのデザインを、ブルーエレファント側が後になって特許庁に自社名義で登録した形跡も明らかになり、アイアイコンバインドが無効審判を請求した。
なぜこの事件が特異なのか
ジェントルモンスターは問題となった製品のデザイン権を登録していなかった。そのため本件はデザイン権侵害ではなく、不正競争防止法第2条——「他人が作った商品の形態を3年以内に模倣して使う行為」——として扱われた。この条文は古くからあるが、刑事罰、しかも逮捕にまで至った例はほとんどなかった。ファッション・アイウェア業界がこの裁判を注視する理由だ。
ブルーエレファントは何と言っている?
会社側の立場は一貫して「模倣は認めない」。要点は3つだ。
- **構造上の類似は不可避。**メガネは人間工学的な構造上、形が似てしまうもので、捜査でこの特性が十分に反映されていないという主張。
- **リファレンスは業界の慣行。**新代表は「ジェントルモンスターを参考にしたのは事実だが、法違反とは別問題」という趣旨で線を引いた。
- **同種商品のありふれた形態は保護対象外。**不正競争防止法自体がそう定めているという法理上の争い。
元代表は2026年4月の公判で公訴事実を否認し、7月28日に保釈が認められて釈放された。裁判は現在進行中で、有罪・無罪はまだ確定していない。
事件後、会社はどうなった?
ここからが本当のどんでん返しだ。普通、こういう事件が起きればブランドは崩れる。ブルーエレファントは逆を行った。
📌 2024年12月以降のタイムライン
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024.12 | アイアイコンバインド(ジェントルモンスター)が刑事告訴 |
| 2026.02 | 裁判所、創業者兼代表の逮捕状を発付 |
| 2026.02末 | 代表辞任、CFO・CRO共同代表の専門経営人体制へ移行 |
| 2026.03 | 起訴(不正競争防止法違反)。未登録デザイン模倣では初の刑事逮捕例 |
| 2026.04 | 初公判、公訴事実を否認。2025年売上507億ウォンを公表(営業利益は前年比大幅減) |
| 2026.06 | 米国進出——ビバリーヒルズにフラッグシップ |
| 2026.07 | 元代表が保釈釈放、裁判は続く |
| 2026.08 | アファーマ・キャピタルから1000億ウォン調達、企業価値は約4000億ウォン |
会社は「体質改善」を前面に打ち出した。製品・空間・コンテンツのデザイン人材を19人まで増やし、R&D予算を2025年売上の2%から2026年は3%へ引き上げると発表した。PEが賭けた相手も結局は「成長」ではなく「システム」だったというのが業界の見方だ。
一方で、2025年の売上は69%伸びたのに営業利益はむしろ大きく減った。店舗拡大のコストと法的対応のコストが同時にのしかかった結果だ。騒動は売上をへこませはしなかったが、ただでもなかった。
結局、買っていいものなのか?
これは各自の判断に委ねるべき問題なので、正解は示さない。ただ事実関係はこうだ。
- 偽物ではない。他人のブランドを付けて売る偽造品とは法的にまったく別の話。ブルーエレファントは自社ブランドを掲げる正規登録ブランドで、販売そのものは合法だ。
- 争点は「形態の模倣」。他人のデザインを真似たのか、そしてそのデザインが法的に保護され得るのか。裁判所が判断している。
- 現在売られている製品が全部問題というわけではない。ジェントルモンスターが指摘したのは80点余りのうち33点だ。
- オリジナルが欲しければジェントルモンスターへ。6倍高いが、それが本物だ。
買うならどこへ行くべきか?
結論:在庫と品揃えなら明洞フラッグシップが圧倒的。空間を見たいなら聖水か漢南。
🕶️ ジェントルモンスター vs ブルーエレファント——実際に何が違うか
| 項目 | ジェントルモンスター | ブルーエレファント |
|---|---|---|
| 価格帯 | 30万ウォン前後 | 5万ウォン前後 |
| 始まり | 2011年 | 2019年(オンライン) |
| 店舗の性格 | 大型アートインスタレーション | 洒落た小〜中規模リテール |
| 主な顧客 | 国内外のファッション消費者、セレブ | 訪韓観光客の割合が高い |
| 素材・仕上げ | 自社開発素材、仕上げの密度が高い | 価格の割に良好、オリジナルとの差はあり |
| 現在の立場 | 原告(アイアイコンバインド) | 被告、公判中 |
ショッピングのコツ
- タックスリファンド: 1回の購入が3万ウォン以上なら即時還付対象になることが多い。会計前にパスポートを出しておくとスムーズ。
- 度付きレンズ: 韓国は視力検査・度数調整にメガネ店の免許が必要で、店舗ごとに可否が異なる。短期旅行者はサングラス・デコフレームが現実的。
- フィッティング: 鼻パッドがアジアンフィット基準のモデルが多い。鼻筋が高めなら、店頭で必ず試着してから買うのがよい。
- 時間帯: 明洞店は平日午前が最も空いている。週末の午後はレジの列が長い。
この事件が残すもの
この裁判の結果は、サングラス1ブランドの運命より大きなものを決める。ファッション業界は長らく「参考」と「盗用」の間のグレーゾーンで動いてきた。商品サイクルが短く、すべてのデザインを登録するのは現実的に不可能で、だから大半の争いは民事で終わってきた。
韓国の裁判所が、登録されていないデザインの大規模な模倣を刑事犯罪として扱い始めたなら、その基準線は韓国を越えた参考事例になり得る。逆に「メガネは元々似ている」という抗弁が認められれば、未登録デザインの保護範囲は再び狭まる。
その答えが出るまで、青いゾウの店の前の行列はおそらく続いていく。
データと出典
- News1「『デッドコピー』初の逮捕…ブルーエレファント・ジェントルモンスター紛争、ファッション業界を揺るがす」(2026.03.17)
- The Fashion Law「When Copying Crosses the Line: Korea's Crackdown on Dupes」(2026.04.20)
- ソウル経済「『99%一致率』… ジェントルモンスターのデザイン模倣容疑でブルーエレファント代表を起訴」
- ソウル経済「『外資系PEFがベット』ブルーエレファント、盗作論争の中4000億ウォンの評価額を認められる」(2026.08)
- イコノミスト「ブルーエレファント、1000億ウォン調達…『成長』ではなく『システム』にベット」(2026.08.07)
- 韓国免税ニュース「ブルーエレファント、代表辞任・R&D拡大…『模倣論争後の体質改善』」
- ZDNet Korea「ブルーエレファント、盗作疑惑CEO起訴に…『メガネは元々構造上類似』」(2026.03.17)
- Korea JoongAng Daily、The Korea Herald の英語報道
※ 本記事に記載の容疑は2026年8月28日時点で公判中の事案であり、有罪・無罪は確定していない。