九里(クリ)はソウルの東の端に接するこぢんまりした町で、大半はマンション群です。ところがここには、朝鮮王朝を開いた人物の墓があります。太祖・李成桂は1408年にこの地に葬られ、その墳墓はいまも整った芝ではなく、背の高いススキに覆われています。故郷・咸興(ハムン、現在の北朝鮮)から運んだススキだと伝えられています。その後8つの王陵が加わり、「東の九つの陵」、東九陵(トングルン)になりました。
さらに千年ほどさかのぼると、ここは別の国境地帯でもありました。ソウルと九里にまたがる峨嵯山(アチャサン)の尾根には、約1,500年前、高句麗の兵士が小さな石の砦を連ねて守っていました。2024年8月に8号線が九里まで延びたので、どちらも蚕室から近く、1990年代末から地元の胃袋を満たしてきたコプチャン横丁と合わせて、気軽な半日旅になります。
まず結論から
- 場所:ソウルの東隣。蚕室から8号線で九里駅まで7駅、東九陵駅まで8駅、乗り換えなし。
- 向いている旅:朝鮮王室の歴史、王陵の森の散策、漢江沿いの春の菜の花と秋のコスモス、安くておいしいコプチャンの夕食。
- 必見:朝鮮王陵最大の陵墓群・東九陵(ユネスコ世界遺産、月曜休み)。
- 必食:トルダリ横丁の甘辛コプチャン炒めと、東九陵駅前オランチュの古漬けキムチとサバの煮込み。
ソウルから九里への行き方は?
**蚕室から8号線一本、乗り換えなしで行けます。**8号線の別内(ピョルレ)延伸区間は2024年8月10日に開業し、岩寺史跡公園、チャンジャ湖水公園、九里、東九陵、茶山(タサン)、別内の6駅が加わりました。九里駅は京義・中央線にも接続していて、清凉里やソウル北部からはこちらが便利です。
🚇 九里へのアクセス(8号線・京義中央線の路線図による駅数)
| 出発 | 路線 | 下車駅 | 駅数 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 蚕室 | 8号線 | チャンジャ湖水公園 | 6 | 九里西側の湖の公園 |
| 蚕室 | 8号線 | 九里 | 7 | トルダリ・コプチャン横丁、九里伝統市場 |
| 蚕室 | 8号線 | 東九陵 | 8 | 東九陵、オランチュ |
| 清凉里 | 京義・中央線 | 九里 | 6 | ここで8号線に乗り換え可能 |
国土交通部は開業時、別内〜蚕室の全区間を約27分としており、報道では九里〜蚕室はおよそ20分とされています。ソウルの乗り放題交通パス「気候同行カード」も延伸区間で使えます。
九里は何で知られている?
**王陵、高句麗の最前線、そして川辺の花畑です。**ソウル市民にとって九里といえば、まず子どもが遠足で朝鮮の王を学ぶ東九陵、そして春は菜の花、秋はコスモスの大きな花畑が広がる漢江沿いの公園。地元の人なら市場横のコプチャン横丁を付け加えるはずです。
5つの年で知る九里
- 約1,500年前 — 高句麗軍が峨嵯山の尾根に小さな砦(보루 ボル)を連ねて駐屯。
- 1408年 — 朝鮮の始祖・太祖が東九陵最初の陵、健元陵(コノルルン)に葬られる。
- 1998年 — 九里伝統市場の隣にトルダリ・コプチャン横丁ができる。
- 2001年 — 九里漢江市民公園で最初の菜の花祭り。以来毎年5月に開催。
- 2024年 — 8号線が九里まで開通(8月10日)。
韓国の人が覚えているのは東九陵の「草の墳墓」です。太祖が故郷の草の下に眠りたいと望んだため、健元陵は芝ではなく억새 オクセ、つまりススキに覆われています。刈り取りは年に一度、4月初めの寒食(ハンシク)の日の儀式だけで、2026年は4月6日に行われました。
九里の見どころは?
東九陵(トングルン) — 朝鮮王陵の中で最大の陵墓群で、ユネスコ世界遺産「朝鮮王陵」の一部です。9つの陵に7人の王と10人の王妃が眠り、太祖の健元陵から、英祖の元陵(ウォルルン)まで並びます。陵と陵の間は広い森の小道でつながり、入口近くの小さな東九陵歴史文化館で全体像がつかめます(入場券に含まれます)。今秋は普段閉じている2つの森の散策路(徽陵〜元陵区間、景陵〜苗圃区間)が2026年11月29日まで開放され、11月は9:00〜16:30です。入口は東九陵駅から東九陵路を少し歩いた先。国家遺産庁は2027年1月から宮殿・王陵の入場料を改定すると発表しているので、下の料金は変わる可能性があります。
九里漢江市民公園 — 漢江沿いに細長く延びる公園で、市が約12万㎡の花畑をつくります。菜の花祭りは2001年から毎年5月(2026年は5月8〜10日)、コスモス祭りは10月(2026年は10月9〜11日、8号線の各駅から臨時のマウルバスも運行)。それ以外の季節は6.53kmの遊歩道でサイクリングや散歩を楽しむ場所で、日中無料のピクニック・キャンプエリアもあります。市の中心部から南に離れているので、祭り以外の日は九里駅からタクシーで。
高句麗鍛冶屋村と峨嵯山 — 峨嵯山のふもとにある市営施設で、尾根で見つかった高句麗の砦と、約1,500年前にそこで暮らした兵士の生活を展示しています。ここから砦跡のある尾根へ歩いて上れます。2026年には市が峨嵯山第4堡塁を訪ねるガイド付きの家族向けプログラムも行いました。最新の開館時間は確認できなかったので、訪問前に市のサイトでチェックしてください。
九里伝統市場とトルダリ横丁 — 九里駅から数分の、地元の人が日常的に使う市場です。そのはずれに1998年に始まったトルダリ・コプチャン横丁があります。VisitKoreaの案内によると、かつては約50軒、今は10軒ほど。市場の公営駐車場にトイレがあります。
🎫 観覧の基本情報(国家遺産庁・VisitKorea、九里市)
| 場所 | 料金 | 時間 | 休み |
|---|---|---|---|
| 東九陵 | 1,000ウォン(外国人19〜64歳)、500ウォン(7〜18歳)、7歳未満と65歳以上は無料 | 11〜1月 6:30〜17:30・2〜5月と9〜10月 6:00〜18:00・6〜8月 6:00〜18:30(入場は閉門1時間前まで) | 月曜 |
| 九里漢江市民公園 | 無料(駐車場は1日最大10,000ウォン) | 出入り自由 | — |
| トルダリ・コプチャン横丁 | 各店で注文 | 店ごとに異なる | 店ごとに異なる |
東九陵は毎月最終水曜日は全員無料。月曜が祝日の場合はその日に開き、翌平日が休みになります。
九里の地元の人はどこで食べる?
**市場の横丁でコプチャン、王陵の近くで韓定食。**以下の料金と営業時間は2025〜2026年のNaverブログと食記事によるものです。出かける前に確認してください。
ユ博士コプチャン(安谷路103番キル56) — 看板には「Since 1989」。2026年のブログによれば、エゴマ油とニンニク丸ごとのアルコプチャン、豚コプチャン鍋で、九里市の2026年料理コンテストの最優秀賞を受けました。定番は야채곱창 ヤチェコプチャン。豚のホルモンをキャベツ、春雨、唐辛子味噌と鉄板で炒め、最後は鉄板でポックンパプ(炒めご飯)に。2026年10月のブログでは13,000ウォン、毎日10:00〜翌1:00です。
宝貝コプチャン(ポベ・コプチャン、安谷路103番キル42) — 常連は横丁の「主」と呼び、壁にはテレビ出演の写真やサインがぎっしり。同じスタイルの辛いコプチャン炒めに、口を冷やすシャリシャリのトンチミ(大根の水キムチ)、ふわふわの蒸し卵を添えて。2026年10月のブログではヤチェコプチャン12,000ウォン、毎日10:00〜23:00。九里駅3番出口から徒歩約7分です。
オランチュ(東九陵路145) — 東九陵駅3番出口から1分。王陵のあとのランチにちょうどいい場所です。名物は熱い石鍋で古漬けキムチと煮込んだサバで、エゴマ油で焼いた豆腐を添えて。ご飯は別注文です。2026年のブログでは平日でも食事時は行列。2025年のDaumの食記事では9:00〜21:00、月曜定休(王陵と同じ休み)です。
トゥメゴル(東九陵路335) — 東九陵路を茶山方面へ進んだところにある韓定食店で、九里市の노포식당 ノポ食堂(老舗食堂)に指定され、「良心価格店」でもあります。一人前を頼むとプルコギ、ヤンニョムケジャン、大根の葉の味噌煮、テンジャンチゲなど十数品がテーブルに並びます。2026年のブログでは基本の韓定食14,000ウォン、手作りトッカルビ付きの特定食19,000ウォン、毎日11:00〜21:00。専用駐車場と庭があります。
矗石楼(チョクソンヌ、検杯路84番キル14) — SBS『生活の達人』で紹介された昔ながらの中華料理店。名物は간짜장 カンチャジャンで、注文ごとに炒めた黒味噌ソースを細く柔らかい麺にかけて食べます。昔風の酢豚も一緒に。2026年のブログでも待ちは当たり前とのこと。2025年のDaumの記事では11:00〜20:00、15:00〜17:00は休憩、火曜定休です。
🍽️ 九里の地元グルメ一覧(Naverブログ・Daum、2026年10月閲覧)
| 店 | エリア | 注文 | 地元で通われる理由 | 地図 |
|---|---|---|---|---|
| ユ博士コプチャン | トルダリ横丁 | ヤチェコプチャン、エゴマ油ニンニクのアルコプチャン | 1989年創業、2026年市コンテスト最優秀賞 | 📍 Naverマップで開く |
| 宝貝コプチャン | トルダリ横丁 | ヤチェコプチャン、蒸し卵 | 横丁の古株 | 📍 Naverマップで開く |
| オランチュ | 東九陵駅 | 古漬けキムチとサバの煮込み | 王陵見学後のランチ | 📍 Naverマップで開く |
| トゥメゴル | 東九陵路 | 韓定食 | 市指定の老舗食堂、良心価格店 | 📍 Naverマップで開く |
| 矗石楼 | 九里中心部 | カンチャジャン、酢豚 | テレビで紹介された麺の達人 | 📍 Naverマップで開く |
九里で過ごす一日のモデルコースは?
- 9:30 — 東九陵駅。王陵まで歩き、健元陵、元陵、森の散策路に2時間ほど。
- 12:00 — 駅前でランチ。オランチュでサバのキムチ煮込み、またはトゥメゴルで韓定食。
- 14:00 — 高句麗鍛冶屋村。タクシーで移動して砦の出土品を見たら、峨嵯山の尾根を少し歩く。
- 17:00 — 九里漢江市民公園。5月か10月なら夕暮れの花畑、ほかの月は川辺の散歩。
- 19:00 — トルダリ横丁。コプチャンと炒めご飯で締め、8号線で蚕室へ戻る。
時期と準備のコツ
九里が向いている人:朝鮮王陵めぐりをしている歴史好き、蚕室周辺に泊まっていて半日だけ出かけたい人、5月の菜の花や10月のコスモスの時期にソウルにいる人。月曜は避けましょう。東九陵もオランチュも休みです。毎月最終水曜日は王陵が無料。コプチャン横丁は週末の夜に混むので、早めに行くか平日がおすすめです。
あわせて読みたい
31市郡の全体像:京畿道 市・郡別ガイド。お隣の町:南楊州、河南、議政府。8号線の途中で:千戸・岩寺。ソウル市内の王陵:石串洞と懿陵。コプチャンをもっと:ソウルのコプチャンTOP10。ソウルに接する12都市:ソウルの隣町ガイド。
データと出典
- VisitKorea(K-TRIP TIPSミラー)、東九陵:陵墓、時間、料金、休み(2026-05-22更新) — https://www.ktriptips.com/kor/tourspot/125545
- VisitKorea(K-TRIP TIPSミラー)、トルダリ・コプチャン横丁(2026-03-19更新) — https://www.ktriptips.com/kor/tourspot/612862
- 国土交通部、8号線別内延伸の開業(2024年8月) — https://kbthink.com/main/real-estate/government-policy/molit-press/2024/molit-press-2408081.html
- ソウル市メディアハブ、別内線と気候同行カード — https://mediahub.seoul.go.kr/archives/2011979
- 九里市、九里漢江市民公園 — https://www.guri.go.kr/environment/contents.do?key=1393
- 九里市、高句麗鍛冶屋村の展示館 — https://www.guri.go.kr/gbv/contents.do?key=1607
- 京畿日報(2026-05-08)、菜の花祭り — https://www.kyeonggi.com/article/20260508580372
- メトロソウル(2026-10-03)、コスモス祭りと臨時バス — https://www.metroseoul.co.kr/article/20261003500017
- ファイナンシャルニュース(2026-10-01)、東九陵の秋の森散策路 — https://www.fnnews.com/news/202610010821585311
- Twig24(2026-04-07)、健元陵のススキ刈り儀式 — https://www.twig24.com/news/local_gg/2026/04/07/20260407019006
- Eyesmag(2026-08-05)、2027年からの宮殿・王陵入場料改定 — https://www.eyesmag.com/posts/165016/palace-tomb-admission-fee-hike
- Daumの食記事(2025-08-06)、オランチュと矗石楼 — https://v.daum.net/v/5KPfu3wM5l
- 飲食店の営業時間・価格・指定情報:Naverブログ、2026年10月閲覧