韓国の街でコーヒーブランドの看板を数えても意味がない。多すぎるからだ。だが代わりに「そのブランドは実際いくらの会社なのか」で並べてみると、見慣れた景色がまったく違って見える。2025年の決算公告がすべて出揃ったいま、韓国のコーヒーフランチャイズを本社売上基準で6つのティアに分けてみた。
まず結論から
- Sティアはスターバックスだけ。 2025年売上3兆2,380億ウォン — 2位と5倍の差がある。
- 2位はコーヒービーンでもハリスでもなく、メガMGCコーヒー(6,469億ウォン、+30.4%)。2,000ウォンのコーヒーを売るブランドがTWOSOME PLACEを抜いた。
- 店舗数1位と売上1位は別の会社。 店舗はメガ3,325店、スターバックスは2,131店なのに、売上は5倍違う。
- いちばん大きな落とし穴: フランチャイズブランドの本社売上には、加盟店で売れたコーヒー代が入っていない。消費者が実際に払った額は、この表の2〜3倍になる。
ティアを分けた基準は?
本社(運営法人)の2025年年間売上だ。金融監督院の電子公示(DART)に上がった監査報告書と、それを報じた報道を基準にした。ブランドの認知度や店舗数ではなく、そのブランドを動かす会社が1年間でいくら稼いだかだけで並べている。
この表を読む前に必ず知っておきたいこと
韓国のコーヒーブランドには直営とフランチャイズの2種類がある。この違いのせいで、同じ「売上」という言葉がまったく別の意味になる。
- スターバックスは100%直営。 店で売れたコーヒー1杯の値段がそのまま会社の売上になる。
- その他はほとんどフランチャイズ。 本社売上 = 加盟費 + 加盟店に売るコーヒー豆・カップ・シロップなどの物販売上。客が店で払ったコーヒー代はここに入らない。
- だからスターバックスの3兆2,000億ウォンとメガコーヒーの6,469億ウォンをそのまま比べると、格差が誇張される。後でもう一度計算する。
Sティア — 3兆ウォン以上、スターバックスだけの領域
スターバックスコリアは2024年(3兆1,001億ウォン)に続き、2年連続で3兆ウォンを超えた。ところが営業利益はむしろ9%減った。 販売管理費が1兆5,639億ウォンと8.9%増え、売上成長率(4.5%)の2倍の速さでコストが膨らんだためだ。
名前はアメリカのブランドだが、株主構成はほぼ韓国企業だ。2021年にイーマート(現・新世界グループ)が米本社の持ち分17.5%を追加取得して67.5%を保有し、残り32.5%はシンガポール政府投資公社(GIC)が持つ。このとき社名も「スターバックスコーヒーコリア」から「SCKカンパニー」に変わった。
Aティア — 5,000億〜7,000億ウォン、低価格コーヒーが上がってきた席
このティアは、ここ3年の韓国コーヒー市場でいちばん大きく変わった場所だ。
メガMGCコーヒーは2015年に弘大(ホンデ)で1号店を開いた低価格ブランド。2,000ウォンのアメリカーノを売りながら、2025年に売上6,469億ウォン、営業利益1,114億ウォンを稼いだ。営業利益率は17%台で、スターバックス(5%台)の3倍を超える。 運営会社は2025年12月、社名をアンハウスからMGCグローバルに変更した。
TWOSOME PLACEはその正反対の戦略だ。店舗数はメガの半分にも満たないが、ケーキやデザートなど単価の高い商品と広い座席で勝負する。その結果加盟店1店あたりの年間平均売上は5億7,173万ウォンでコーヒー業界1位。持ち分100%は世界的なプライベートエクイティのカーライル・グループが保有する。
📊 同じAティア、正反対の戦略(2025年決算 · 店舗数は2026年4月の公正委発表)
| 項目 | メガMGCコーヒー | TWOSOME PLACE |
|---|---|---|
| 本社売上 | 6,469億ウォン | 5,824億ウォン |
| 営業利益 | 1,114億ウォン | 363億ウォン |
| 加盟店数 | 3,325店 | 1,510店 |
| 1店あたり平均売上 | ランキング圏外 | 5億7,173万ウォン(1位) |
| アメリカーノ価格帯 | 2,000ウォン | 4,500ウォン台 |
| 店舗の性格 | テイクアウト小型 | 滞在型大型 |
Bティア — 2,000億〜3,600億ウォン、いちばん混み合うゾーン
🥈 Bティアのブランド(2025年決算基準)
| ブランド | 運営会社 | 2025年売上 | メモ |
|---|---|---|---|
| ペクタバン | ザ・ボーン・コリア | 3,612億ウォン(グループ全体、-22.2%) | グループ営業損失237億ウォンで赤字転換 |
| コンポーズコーヒー | コンポーズコーヒー | 3,003億ウォン(+236%) | 営業利益399億ウォン、フィリピンのジョリビーが100%保有 |
| イディヤコーヒー | イディヤ | 2,387億ウォン | 営業利益96億ウォン、加盟店2,562店 |
| ポールバセット | エムズシード | 2,060億ウォン(会社全体、+7.5%) | 毎日乳業系列、ポールバセット単体は約1,600億ウォン |
ここでは数字が2つ、説明を要する。
コンポーズコーヒーの売上が1年で3.4倍になった理由は、コーヒーを3.4倍売ったからではない。加盟店に物資を供給する流通構造が変わり、売上として計上される金額が膨らんだ会計上の変化が大きい。実際、営業利益は399億ウォンでむしろ6.9%減り、営業利益率は2024年の48%から2025年は13.3%へ下がった。売上が跳ねたのに利益が減ったら、たいていこういう理由だ。
ペクタバンの3,612億ウォンはペクタバンだけの数字ではない。 運営会社ザ・ボーン・コリアは香港飯店(ホンコンバンジョム)やハンシンポチャなど20余りのブランドを同時に運営し、ブランド別の業績を別途公開していない。2025年のザ・ボーン・コリアは売上が22.2%減り、営業損失237億ウォンで赤字転換したが、このうちペクタバンの分がいくらかは外部からはわからない。
旅行者のための見分け方
- ポールバセットはこのリストで唯一の「乳業系コーヒー」。毎日乳業系列なのでラテ・アイスクリームのラインが強い。店舗数は少ないが、ほとんどが好立地にある。
- イディヤは2001年スタートの中低価格の1世代目。座席がありながら価格は中間帯。路地の奥の小さな店が多く、意外と席が見つけやすい。
- コンポーズ・ペクタバンは座席を期待しないこと。テイクアウト専用に近い。
C・D・Eティア — 名前は知ってるけど、実は大きくないブランドたち
🥉 Cティア以下(2025年決算または最新公告基準)
| ティア | 売上レンジ | ブランド |
|---|---|---|
| C | 1,000億〜2,000億ウォン | コーヒービーン(1,435億ウォン) · ハリス · パスクッチ · ダベンティ |
| D | 400億〜900億ウォン | マンモスコーヒー(849億ウォン) · エンジェリナス · タムアンドタムス · アバウトコーヒー |
| E | 100億〜400億ウォン | セレクトコーヒー · アマスビン · カムソンコーヒー · ヨガープレッソ · カフェベネ · ドロップトップ · カフェママス |
このゾーンにはかつて1位だったブランドが集まっている。
コーヒービーンは2010年代初めまでスターバックス唯一のライバルだった。2025年の売上は1,435億ウォンで、スターバックスの4.4%にあたる。カフェベネは2012年に国内店舗数1位(約900店)でスターバックスを抜いたブランドだが、いまはEティアにいる。エンジェリナスは最大998店まで増えた店舗が3分の1の水準まで減った。
ハリスは2025年、売上が会計上「0ウォン」と計上される異例の年だった。親会社クラウンエフアンドビーを逆合併する過程で生まれた見かけ上の話で、ブランドが消えたわけではない。
Cティアより下はなぜ数字がぼやけるのか?
売上規模の小さい法人は外部監査の義務がないか公告が遅く、報道が引用する数値も基準年がまちまちだ。上のC〜Eティアの配置は、公告が確認できたブランドは実際の金額で、それ以外は業界で通用する売上レンジで置いている。正確な順位というより「だいたいどの階級か」として読んでほしい。
ではスターバックスは本当に5倍大きい会社なのか?
違う。これがこの表でいちばん重要な落とし穴だ。
スターバックスは直営だから、客が払った4,700ウォンはすべて会社の売上だ。一方メガコーヒーはフランチャイズだから、客が払った2,000ウォンは加盟店オーナーの売上で、本社売上には入らない。本社が稼ぐのは、そのコーヒーを作るために店主が買っていったコーヒー豆・カップ・シロップ代だ。
だから2ブランドをきちんと比べるには**全店合計売上(システムワイド売上)**を見る必要があるが、韓国はこの数値をブランド別に公開していない。ただし公正取引委員会が発表する加盟店平均売上から逆算はできる。
🧮 TWOSOME PLACEでやってみる逆算(公正委 2025年フランチャイズ事業現況)
| 計算 | 値 |
|---|---|
| 加盟店数 | 1,510店 |
| 加盟店の年間平均売上 | 5億7,173万ウォン |
| 加盟店総売上の推計 | 約 8,633億ウォン |
| 本社公表売上 | 5,824億ウォン |
TWOSOME PLACEは本社売上が比較的高いほうなのに、消費者が実際に使ったお金は本社売上の1.5倍ある。 メガ・コンポーズのように本社売上に対して加盟店がはるかに多いブランドは、この倍率がさらに大きくなる。つまり店で実際に動いたお金で並べ直せば、格差は5倍ではなく2〜3倍程度まで縮む。
外国人旅行者はどのティアを選べばいい?
価格表だけ見れば4,700ウォンと2,000ウォンの違いだが、実際に買っているのはコーヒーではなく座席と時間だ。
🎯 シーン別おすすめ
| シーン | おすすめティア | 理由 |
|---|---|---|
| 荷物を置いて1時間休む | S・Aティア(スターバックス・TWOSOME) | 座席・トイレ・コンセント・無料Wi-Fiが確実 |
| 移動中にカフェインだけ | A・Bティア低価格(メガ・コンポーズ・ペクタバン) | 2,000ウォン前後、容量が大きくどこにでもある |
| ラテ・デザート中心 | ポールバセット・TWOSOME | 乳製品・デザートラインが強い |
| 静かにノートPC作業 | スターバックス・イディヤ | 席の回転が遅く、気兼ねしにくい |
| ローカル感のあるカフェ | ティア外の個人カフェ | ヨンナム・ソンス・イクソン洞など |
注文のときに知っておくと役立つこと
- 低価格ブランドはほとんどがキオスク注文で、英語モードがある。なければメニューを指さしても大丈夫。
- 韓国ではアイスアメリカーノをアア、ホットをタアと縮めて呼ぶ。冬でもアイスが圧倒的に売れる。
- 低価格ブランドのアイスは容量700ml前後で、スターバックスのトール(355ml)の2倍。価格差より容量差のほうが大きい。
- 店内で飲むなら、使い捨てカップではなくマグカップを頼める。店内での使い捨てカップ使用は原則制限されている。
このランキングはこれからどう変わる?
3つの流れが見える。
1つ目、低価格コーヒーの主役はプライベートエクイティだ。 メガコーヒーもコンポーズコーヒーも、プライベートエクイティや海外資本が支配株主だ(コンポーズはフィリピンのジョリビー系列が100%保有)。投資回収が前提になるため出店そのものが本社の収益源になり、だから店舗数が速く増える。店舗数とオーナーの収益性が別々に動く理由でもある。
2つ目、1世代目が崩れている。 コーヒービーン・ハリス・エンジェリナス・タムアンドタムスはいずれも2010年代初めの全盛期より縮小した。その座を低価格ブランドと個人ロースタリーが分け合った。
3つ目、スターバックスも安泰ではない。 2025年の営業利益は9%減り、営業利益率はパンデミック期(2021年の10%)の半分水準だ。コーヒー価格は上げられず、賃料・人件費は上がる構造にある。
データと出典
- 公正取引委員会「2025年フランチャイズ事業現況」(2026年4月発表) — 加盟店数・加盟店平均売上額
- ザ・ベル「スターバックスコリア、低価格コーヒー攻勢の中でコスト急増」(2026-04-07) — SCKカンパニー2025年業績
- ZDNet Korea「加盟店数1位は『メガコーヒー』…平均売上額1位は『TWOSOME』」(2026-04-12)
- ZDNet Korea「メガコーヒー、コーヒーフランチャイズ店舗数1位…売上トップはどこ?」(2026-04-15)
- ニューススペース「メガコーヒー運営のMGCグローバル、売上6469億ウォン」/「売上3000億ウォンのコンポーズコーヒー、営業利益率48%→13%に急落」/「ハリスコーヒー、2025年売上『0ウォン』の奇現象」
- ソウル新聞・ネイトニュース「ザ・ボーン・コリア、2025年営業損失237億ウォン」(2026-02)
- 金融監督院電子公示システム(DART)各社の2025年監査報告書、サラミン・ナイスビズインフォの企業財務情報
- 韓国農村経済研究院「コーヒー産業の動向と示唆点」(2026) — コーヒー専門店数・従事者
- 基準: 別途表記がなければ2025年会計年度、運営法人の本社売上。ブランド別業績を別途公開しない企業(ザ・ボーン・コリア、エムズシード、ロッテGRSなど)は会社全体または推計値で、本文に表記しています。