まず結論から
- 韓国のコンビニには、袋の中にシール・しおり・トレカがランダムで1つ入った「グッズパン」があります。みんなパンよりもそのおまけ目当てで、近所のコンビニをはしごします。
- 始まりは2022年に復刻したポケモンパン。40日あまりで1,000万個、その年の12月には累計1億個が売れました(SPC三立)。
- 2026年秋の主役は、しおり入りのGS25民音社(ミヌムサ)パン(1か月ちょっとで160万個、10月7日に販売終了)と、トレカ入りのCURESCENE(リセンヌ)パンです。
- 旅行者でも参加できます。コンビニのアプリで在庫を見るか、アプリが使えなければホテル近くのコンビニを2〜3軒回るのが早道です。
平日の午後3時、ソウルのとあるGS25。スーツ姿の会社員がパン棚をひと通り眺めて、手ぶらで出ていきます。5分後には大学生が2人やって来て同じ棚を確認し、ひとりがスマホのアプリを更新。「ここにもない」。彼らが探しているのはパンではなく、袋の中に入ったしおり1枚です。
韓国のコンビニでは、こんな光景はまったく珍しくありません。パンを買うと何が入っているかわからないグッズがひとつ出てきて、みんなそれを集めるために何軒もコンビニを回り、アプリで在庫を調べ、フリマアプリでダブりを交換します。この記事では、この「グッズパン」文化がどこから来たのか、2026年秋に何が売れているのか、旅行者が実際にひとつ手に入れるにはどうすればいいのかをまとめます。まずコンビニ各社の違いを知りたい方は、韓国コンビニブランドガイドからどうぞ。
韓国コンビニの「グッズパン」とは?
パン1袋にコレクショングッズがランダムで1つ入ったコンビニパンのことです。何が出るかわからないので、欲しいものを当てるには何個も買うことになり、パンは事実上「くじ代」になります。日本のビックリマンチョコのシールや食玩を思い浮かべると近いのですが、韓国ではこれがコンビニの袋パンという形で定着しました。
おまけの種類によって呼び名があります。
- ティブシール —「はがして貼れるシール」の略。ポケモンパンが生んだ言葉で、今ではパンに入ったシール全般を指します。
- ポカ — フォトカード(トレカ)の略。アイドルグッズ文化から来た言葉で、メンバーの写真が印刷されたカードです。
- しおり — 2026年の民音社パンが持ち込んだ新ジャンル。小説の表紙と名文が印刷された透明しおりです。
グッズパンはどう始まった?ポケモンパンの物語
元祖は1998年のポケモンパンで、2022年の復刻が今のブームをつくりました。 1998年に登場したポケモンパンは、全盛期には月平均500万個売れました。シールだけ取ってパンは食べない、という話は当時の小学生のあいだで伝説のように語られています。
2022年2月、SPC三立が16年ぶりに「帰ってきたポケモンパン」を発売すると、あの頃の小学生が30代の会社員になって戻ってきました。7種類のパンに、159種類のティブシール(第1世代ポケモン151種+人気ポケモンのポーズ8種)がランダムで入っていました。
📈 ポケモンパンの販売記録(SPC三立の発表をもとにした報道)
| 時期 | 記録 |
|---|---|
| 1998年 初登場 | 全盛期は月平均500万個 |
| 2022年2月 復刻 | 1週間で150万個 |
| 復刻から40日あまり | 1,000万個(1日平均約23万個) |
| 2022年12月初め | 累計1億個 |
| 2023年12月 | 累計2億個 |
背景:2022年春の韓国で起きたこと
- 大型スーパーの前に開店前から行列ができるオープンランが生まれ、前の晩からテントを張って待つ人までいました(ソウル新聞)。
- コンビニの希望小売価格は1,500ウォンでしたが、一部の小売店が1,800ウォンに値上げしたり、ほかのお菓子と抱き合わせで売ったりして批判を浴びました(イートゥデイ)。
- SPC三立は生産ラインを24時間動かしても需要に追いつかないとして謝罪文を出しました(ソウル新聞)。シールは慶尚北道・慶山のシールメーカー1社だけが製造していて、1日の生産量にも限界がありました(エコノミスト)。
- SPC三立はその後、3〜6か月ごとにシールのデザインを入れ替えてきたと説明しています(2024年時点)。集める人に何度も買わせる仕組みです。
ポケモンパンが証明したことはシンプルでした。パンがおいしいから並ぶのではなく、おまけが集める価値があるから並ぶ。 それ以来、韓国のコンビニはこの公式をほぼすべての人気IPに当てはめるようになりました。
2026年秋、どんなグッズパンが売れている?
しおり入りのGS25民音社パンと、トレカ入りのCU RESCENEパンが二大巨頭でした。片方は本、片方はアイドル。買った人の層がまったく違ったのが面白いところです。
民音社パン — 本をグッズにしたパン
GS25が出版社の民音社、キャラクターIP「今日のかわいさ(オヌレ・クィヨウム)」と組んで8月21日に発売したパンです。第1弾は『愛について』(モカバン・カスタード味)と『狼のように瑞々しく泣きたかった』(ごま入りもちもちパン・ソルティミルク味)、8月26日の第2弾は『高慢と偏見』(モカバン・ミルククリーム味)と『悪い少年が立っている』(ごま入りもちもちパン・カスタード味)。パンの名前からして本のタイトルです。
袋の中には透明しおり20種のうち1枚。15種は世界文学(『高慢と偏見』『ハムレット』など)、5種は韓国の詩集がモチーフです。
📚 民音社パンの販売推移(GS25の発表をもとにした報道)
| 日付 | 累計販売 | メモ |
|---|---|---|
| 8月27日 | 12万個 | 第1弾2種が発売直後にGS25パン売上1位・2位 |
| 9月2日 | 43万個 | 1日の売上約1億ウォン |
| 9月14日 | 100万個 | 発売から4週間 |
| 9月22日 | 141万個 | GS25パン売上1〜4位を独占、販売率100%を維持 |
| 9月30日 | 160万個 | 平均価格約3,200ウォン換算で小売売上50億ウォン超 |
需要は生産をはるかに上回りました。民音社側によると1日の注文が5万個を超え、工場が通常つくれる量の3〜4倍。店舗によっては1日3個ほどしか入荷しないところもありました。そしてGS25は10月7日の最終発注をもって販売を終えました。 人気が冷める前に限定品の希少性を守る判断と受け止められています。再販売はまだ決まっていません。
このパンが特に面白いのは、買ったのが本好きの20〜30代女性だったことです。9月初め時点で購入者の26%が20代女性、25%が30代女性でした。韓国では、本を読む姿や本の好みをファッションのように見せる流れをテキストヒップ(text+hip)と呼びますが、民音社パンはその流れがコンビニの棚まで降りてきた例といえます。
RESCENEパン — 30代男性が買い占めたアイドルパン
CUはイメージモデルのガールズグループRESCENEと組み、メンバー名を冠したパン5種を出しました。9月17日の「ウォニのとうもろこしクリームパン」を皮切りに、「ジェナのいちごジャムサンド」「メイのシナモンロール」「ミナミのメロンパン」「リブのチョコホットク」が順次登場し、袋ごとにメンバーの透明トレカ27種のうち1枚が入っています。
最初の商品は発売日の供給量約3万個の99%が24時間以内に売れ、4日で10万個、10月1日までに5種合計で約60万個が売れました。同じ期間、CU全体のパン売上は前年より20%増えています。
ほかにも今コンビニで見かけるもの
- セブンイレブン「リーグ・オブ・レジェンド」フォトカード(9月23日限定発売)— パンではありませんが同じ公式。約300種から5枚がランダムに入ったパックで、カードだけで最大4人がゲームを楽しめるように作られています。セブンイレブンは2023年のKリーグを皮切りに、EPL・KBOなどのスポーツカードを累計1,700万パック以上売ってきました。
- GS25×太極堂(テグクタン)(10月13日から)— 1946年創業のソウルの老舗ベーカリー太極堂とのコラボパン3種(バタークリームパン・オランダパン・ミニマンモスパン)。グッズの代わりに「レトロ」を売るタイプです。
- GS25×韓貞仙のチャプサルトック — 聖水で行列ができていたフルーツ餅を冷凍デザートにした商品。おまけはありませんが、同じ「コンビニのオープンラン」を起こしました。詳しくは韓貞仙ガイドで。
なぜ韓国の人はパンよりおまけを買うの?
数千ウォンでできる、いちばん安い「コレクションゲーム」だからです。 業界や報道が挙げる理由をまとめるとこうなります。
- 安い — パン1袋2,000〜3,000ウォン台。フィギュアや公式グッズよりずっと安いので「もう1個」が簡単。CUも手ごろな価格が負担を減らしている点を成功要因に挙げています。
- 何が出るかわからない — ランダムなので、欲しいものが出るまで買ってしまう。ガチャと同じ原理です。
- 好きなものの証が残る — 好きな対象をとことん掘り下げて関連商品を集める消費を、韓国ではディギング消費と呼びます。しおりやトレカはその好みを示す小さな証です。
- 探すこと自体が遊び — 入荷時間に合わせてアプリで在庫を確認し、走っていく「アプリ・オープンラン」が生まれました。民音社パンの発売直後、GS25のアプリ「ウリドンネGS」は8月の新規インストールが39万9,988件と今年の月間最高を記録し、新規ユーザーの65.3%が20〜30代でした。
- 二次市場がくっつく — 出なかったものは買い、ダブったものは売る。業界は、グッズの二次取引が活発なほど人がコンビニに何度も足を運ぶ「ロックイン効果」が生まれると見ています。
フリマ相場はなかなかのものです。民音社パンのしおりはデザインによって5,000〜1万ウォン超、一部の限定しおりは2万〜3万ウォンで取引されたと報じられ、RESCENEパンのレアトレカはパン定価の6〜8倍で取引されました。韓国のフリマアプリの使い方はタングン(当近)中古取引ガイドにまとめています。
旅行者でもグッズパンは買える?
買えます。ただし「探し回る手間」までが体験だと思ってください。 人気のグッズパンは1店舗に1日数個しか入らないことが多く、棚になくても売り切れとは限りません。
🔎 コンビニ別・グッズパンの在庫確認方法(2026年10月時点)
| コンビニ | アプリ | できること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| GS25 | ウリドンネGS | 近くの店舗の商品在庫検索、ピックアップ・配達 | アプリで0個でも店にあることがあるという声 |
| CU | ポケットCU | 店舗在庫の照会、予約販売 | RESCENEパンの予約分は開始直後に完売 |
| セブンイレブン | セブンイレブンアプリ | 限定商品の販売店舗案内 | 限定品は特定店舗だけに出ることも |
実用メモ:グッズパン探しのコツ
- ホテル周辺の2〜3軒を回ってみましょう。 観光地ど真ん中の大型店より、住宅街の小さな店に残っていることが多いという口コミはよく見かけます。
- アプリが使えなければレジで聞きましょう。スマホに商品名を表示して見せながら「이거 있어요?」(イゴ イッソヨ?=これありますか?)で十分。バックヤードから出してくれることもあります。
- 1人あたりの購入個数を制限している店もあります。まず棚の前の案内を見てください。
- 中のおまけはランダムです。特定のメンバーや特定の本が欲しいなら、何個も買うよりフリマアプリで直接買うほうが安く済むこともあります。
- パン自体も普通においしいです。おまけだけ取ってパンを捨てるのはやめましょう。コンビニのパンを誰が作っているかは韓国コンビニフードは誰が作っている?で紹介しています。
今(2026年10月中旬)買えるもの・終わったもの
🗓️ 2026年10月中旬時点の状況
| 商品 | コンビニ | 状況 |
|---|---|---|
| 民音社パン(しおり) | GS25 | 10月7日の最終発注で販売終了、残り在庫のみ |
| RESCENEパン(トレカ) | CU | 9月17日から5種を順次発売、終了日は未発表 |
| リーグ・オブ・レジェンド フォトカード | セブンイレブン | 9月23日に数量限定で発売 |
| 太極堂コラボパン3種 | GS25 | 10月13日から順次発売(おまけなし) |
| 韓貞仙ピスタチオ・チャプサルトック | GS25 | 10月15日から販売(おまけなし) |
グッズパンブームはいつまで続く?
正直に言うと、商品ひとつひとつの寿命は短く、公式そのものは長生きします。 ポケモンパンのあとに出た数多くのキャラクターパンのうち、同じくらい爆発したものはまれで、2024年のドラゴンボールパンはポケモンパンほどの反応は得られなかったと評価されました。民音社パンにいたっては、2か月で自ら販売を終えています。
それでも数字は公式が生きていることを示しています。CUのコラボベーカリー売上の伸び率は2024年43.3%、2025年36.6%、2026年1〜8月30.9%と、CU全体のオリジナルベーカリーの伸び(14.8%)を一貫して上回りました。次のグッズパンが何になるかは誰にもわかりませんが、韓国のどこかのパン棚の前で、また誰かがアプリを更新していることだけはほぼ確実です。韓国のデザート流行がなぜこんなに速く回るのかは韓国デザート流行の年表、いまどきの若者言葉は韓国MZ世代の新語2026でどうぞ。
旅行中にコンビニへ寄ったら、パン棚をちょっとじっくり見てみてください。袋に「랜덤 ○○ 1종」(ランダム○○1種)のような文字があれば、それが今の韓国でいちばん安く参加できる流行です。
データと出典
- 民音社パン:SBS Biz(2026.08.27)、マネートゥデイ(2026.09.07)、アイニュース24(2026.09.26)、ソウル新聞「聖地になったファンのコンビニ」(2026.09.28)、ヘラルド経済(2026.10.01)、GS25の販売終了判断(ニューストクトク)
- RESCENEパン:4日で10万個の報道、京畿日報 購入層分析(2026.10.04)
- ポケモンパン:ファイナンシャルニュース(2022.02.23)、ソウル新聞(2022.04.05)、イートゥデイ(2022.03.24)、エコノミスト(2022.06.30)、ヘラルド経済(2024.04.10)
- GS25×太極堂:マネートゥデイ(2026.10.12)